「代償」警官の血 U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
代償
面白かった。
原作未読故、コレがどういう脚色であったのかは分からないのだけれど、終盤近くまで白黒の天秤が揺れ動く。
結局の所、どちらも嘘や刷り込みをしてるわけでもなく、客観的な事実を述べていた。
だからこそ、主人公の揺れに真実味があった。
「孤狼の血」と比較するレビューもチラホラあるが、なるほどと頷けるような内容ではある。
ただ、孤狼の方を昭和の幻想とするなら、こちらはガッツリ令和の刑事に見える。
バディの関係性は同じであるけれど、物語の背景が若干変わっていて、スポンサーがいる。
型破りな捜査をする為の膨大な予算を出資してくれる機関があるのだ。なのだけど…そこもやはり人の業からは逃れられず、組織の関係者が捕まりそうになると、権力を使って庇い、刑事を陥れる。
だが、そういった経緯もこの刑事には予測の範疇で、今のシステムが狂っていて破綻する未来も織り込み済みなようであった。
この刑事の造詣が興味深く…別に捨身で正義を執行してる感はない。むしろ、巨悪を摘発する事のみに人生を費やしているかのようだ。刑事という職務に殉じるというか…彼がそれをするにあたり背負っている代償は大きい。おそらく結婚とかもしてないし、自分の評価とかいつ崩されてもおかしくないと思っていて、あらゆる事に執着がないようにみえる。
酒をあんな風に呑むのも、好きだからではないはずだ。いつも冷静沈着で堂々としている内面は、どれほどの焦燥が渦巻いていたのだろうかと思えてしまう。
その型破りな上司に影響されていく主人公。
見た目に反して度胸も腕っぷしも強い。ホントに少ない描写なのだけど、きっちり印象づけるあたり、役者も演出もさすがと唸る。
ラストはタイトル通りな結末で小気味がよい。
ちょっとこう明るいエンディングであったので、若干の違和感は残る。
してやったりはいいのだが、彼らを取り巻く環境は変わっておらず、どちからというと茨の道の同伴者だ。
だからこそ、軽口を叩き合う前に、沈黙のやり取りがあっても良かったんじゃないかと思える。
韓国映画にしては、題材の割にはライトな仕上がりに思う。