劇場公開日 2022年11月18日

「湿地帯に暮らし、自らも湿地帯の生態系に身を委ねた"湿地の女"の物語... 魔女裁判の如き法廷で少女が愛と死と憎悪の渦巻く半生を訴える青春映画!!」ザリガニの鳴くところ O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0湿地帯に暮らし、自らも湿地帯の生態系に身を委ねた"湿地の女"の物語... 魔女裁判の如き法廷で少女が愛と死と憎悪の渦巻く半生を訴える青春映画!!

2022年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 1950年代のノースカロライナ州の閉鎖的な海辺の田舎街、隣接する湿地帯で街の人気者の青年が遺体で発見され、その湿地帯にただ一人で暮らす年若い変わり者の女性が容疑者として逮捕され、偏見だらけの住民で構成された陪審員たちを向こうに、現役を退いた老弁護士と無罪を訴えて孤軍奮闘する法廷ミステリー。
 しかしその一方で、ヒッピーの如き奔放な両親の家庭で育った主人子の少女が周囲からの侮蔑に見舞われながらも学を身に着け、限られた人間関係の中で二人の青年と恋に落ちそして…という青春映画としての側面も色濃いです。
 そして何より、そこからのハートフルなエンディングに差し掛かったところでの冷や水を浴びせかけられるようなどんでん返し・・・"自然と生きるには何よりも生物として強かでなくてはならないのか"と嘆息するような余韻も有ります。
 ミステリー映画はスッキリ胸が晴れる結末か、それともやがて来る暗雲を予期させる鬱な幕切れのどちらかに振り切った作品が最近とみに多いように感じますが、本作のそのグラデーションぶりはなんとも言えない味わいでした。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)