劇場公開日 2022年11月18日

「事件の真相がどうでもよくなるくらい濃厚なドラマが圧巻ですが、原作を読んでいる人は観てもしょうがないかも」ザリガニの鳴くところ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0事件の真相がどうでもよくなるくらい濃厚なドラマが圧巻ですが、原作を読んでいる人は観てもしょうがないかも

2022年12月10日
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鑑賞方法:映画館

ノースカロライナ州の湿地帯で地元の有力者の息子チェイスの遺体が発見される。見張り台から落下したと推定され自殺とも他殺ともつかない状況だったが彼が身につけていたペンダントが失われていることから殺人事件と断定、程なく湿地帯の奥にある一軒家にたった一人で暮らすカイアが容疑者として逮捕される。幼い頃に兄弟にも家族にも見捨てられて以来湿地帯で獲ったムール貝を売ってギリギリの生活を送っている孤独な彼女を幼い時から知っていた老弁護士トムは引退を返上して弁護を買って出る。激しく警戒するカイアだったが、粘り強く説得を重ねるトムに重い口を開いて誰も知らなかった彼女の半生を語り始める。

先日観た『ファイブ・デビルズ』にも漲っていたド田舎の閉塞感が本作にもぎっしり詰まっていてうんざりさせられました。美しく雄大な自然が家族にも捨てられたカイアを支えるが偏狭な人々は彼女をただ蔑み遠ざけるだけ。彼女は自分だけの世界に閉じこもるがそこに迷い込んできた青年テイトとチェイスが持ち込んだ安らぎとそれと相反するカオスがカイアの運命を激しく揺さぶる。果たしてチェイスは殺されたのか、そしてカイアは無実なのかは最後の最後まで明かされませんが、そこに至るいくつものドラマを見つめていると結末はどうでもよくなっていきます。

テイラー・スウィフトが書き下ろしたという主題歌はカイアの心情に寄り添うもので、穏やかな終幕に見事にマッチしていました。

よね