「今の時代に花開いたミステリー」ザリガニの鳴くところ shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
今の時代に花開いたミステリー
時代設定は60年代末が核心部となって、薄幸の少女から見事幸福を掴んだ一人の女性の生涯を描きつつも、殺人事件の真相を絡めた新しい筋立てのミステリーとなっている。幼少期の家族崩壊から始まって、ネグレクト、DV、地域の差別、貧困、孤独と不幸がこれでもかというくらいに少女に降りかかる。それでも、主人公の少女はタフにサヴァイバルをこなし、一人の女性へと成長し、恋をする。この恋にまつわる話がとても良い。男に振られ、男に騙され、大人になり幸せを掴むという、ありふれた話の中にトラウマを振り払うがごとく殺人事件が滑り込む。中々、興味深いストーリー展開である。次は原作を読んでみようと思う。映像はとても美しいだけにそれを補う活字による情報がもう少し欲しい気にさせる作品でもある。ネタバレになるので明確な内容は避けるが、エンディングは少し無理を感じただけに「まぁ、こんなものか」と思った。あくまでも私が感じただけのことである。個人的には野鳥が好きなので、サギ類等の沼沢地にいる野鳥や主人公が集める羽根が出て来たのは嬉しかった。
追記;
原作を読んだ。やはり更なる人物描写の映像化されなかった情報が多く、内容に深みと厚みが出て来た。映像は限られた時間枠に収めるためにスマートな取捨選択が必要な面、内容がかなりスケールダウンしてしまうのは否めない。原作の方が面白いのは断言出来るが、映像もなかなかこの監督は上手く処理しており、原作の面白さを作品として成立させている。力量のある監督だと理解出来たのは原作を読んだお陰でもある。
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