「私達が娘を救ったのだ。」呪詛 はくさい(さぽしゃ)さんの映画レビュー(感想・評価)
私達が娘を救ったのだ。
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『見方を変えるということ』
シングルマザーである主人公は、視聴者である私達を巻き込んで娘を救おうとした「嫌な感じがする」ラストに思えるかも知れない。
けれど見方を変えれば私達が娘を救ったことにならないか?
「祈りが多ければ呪いが緩和される」
この祈りと呪いとは何なんだろうか。
呪いが「緩和される」とはどういう意味だろうか。
精神科医が母親にいう「呪いは貴女の心の中にある恐怖。見方を変えれば……」と。
母親の心にある呪いとは「思いもよらず妊娠し一人で育てなけらばならない困難な生活と、他人から母親失格の烙印を押され(行政に)娘を取り上げられる恐怖」じゃないだろうか。母親は自問自答する。娘を世話してるのは「呪い」への恐怖からか、それとも娘を愛しているからかと。
では祈りとは。
冒頭「私達が娘を救った」と書いた。
私達の多くは、普段からこんな境遇の親子を間接的に救っている。
それはこの親子をリアルな社会に落とし込んで考えると分かると思う。
シングルマザーの困難な生活が少しでも楽になるように、社会保障制度というものがある。これは税金が原資となっており、皆で助け支え合う相互扶助の精神で成り立っている制度だ。つまりより多くの人が祈ればというのは、この社会保障制度の更なる充実を願うというメタファーだと思う。
本作は誰にも頼れないシングルマザーの困難な現状を、
メタホラー的に描いた良作だと思う。
このラストで嫌な気分になってはいけないのだ。
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