「孤独も痛みもまるごとつつみこむ。」マルセル 靴をはいた小さな貝 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
孤独も痛みもまるごとつつみこむ。
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なんだこの心地いい世界観は。物語の中心にあるのは、マルセルともうひとりの主人公である映画作家の孤独だし、SNS時代の弊害みたいなものもちゃんと入れ込んでいる。それでもなお、この映画で描かれる心の交歓は、なんともやさしくて、そのやさしさがそのまま映像に溢れかえっている。あとマルセル役のジェニー・スレイトの声にも。しかしこの手作り感あふれるストップモーションと実写の融合は、さぞや手間暇がかかったろう。実際、もとになった短編を作ったときには監督(作品中でも監督役を演じている)とジェニー・スレイトは実生活でもパートナーで、ふたりの共同作業として始まったプロジェクト。それが、ふたりが別れてもなお作業を続け、それがどんなものだったのか外野にはなんとも判断できないが、胸の奥のチクリとした痛みもまた、ちゃんと作品に反映されている。とてもいいものを見させていただきましたと、座布団に座り直してお礼を言いたくなるような映画でした。
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