劇場公開日 2022年9月23日

「良し悪し激しくもらしさ貫く井樫彩監督、そのセンスを追いたくなる」あの娘は知らない たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5良し悪し激しくもらしさ貫く井樫彩監督、そのセンスを追いたくなる

2022年10月17日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

褒めているのか否かという言葉で始めるが、井樫彩監督の分かりそうで分からないこの雰囲気が堪らない…。愛は人に触れないと分からず、居なくなってからではないと寂しさに気づけない。

井樫彩監督の作品、『NO CALL NO LIFE』が凄い雰囲気も含め好きだったので、今作も鑑賞。脚本に関してはまだまだ足りない部分もあるとは思う。だが、魅せたいものと引き出したいもの、それをカメラの輝きで引き立たせるセンスに感服した。表現の奥行き、表情の向こう側、そんなことを感じさせる。今作にもそれは溢れていて、単なる光や水、反射だけではない輝きが全編に溢れている。

喪失した2人は再び愛に触れて歩き出す。出会いや立ち上がりは言葉少なだったり突飛であったりするのだが、2人のみで作られる世界の一片を優しく見守る。街の美しさの中に浮かぶそれぞれの空虚を察しつつ、そこから生まれる反応を感じていく。そこに対してのアプローチがやや弱いとは思ってしまう。初島のロケーションを始め、もう少し優しい解説があればいいのに…、とは思う。だが、引き込まれるのも事実。

主演は福地桃子さんと岡山天音さん。福地桃子さんと言えば、「女子高生のむだ使い」にて厨二病のヤマイがハマり役だったことが記憶に新しい。しかし、本作では清楚の中に喪失を抱いた女性としての柔らかさを持っている。それがまた「引き出された魅力」として放たれている。また、掴めないような姿を演じれば右に出る者はいない岡山天音さんも、作品の核を作っている。寧ろ、彼でなくてはダメなのだ。

人との関係を断っても希薄な感情になりがちな今だからこそ。これはテーマを知った上で観たかったと思った。しかりながら、やはり監督の作風は好きなので次回作も楽しみにしている。

たいよーさん。