「口の中をさっぱりしたくて」あの娘は知らない 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
口の中をさっぱりしたくて
両親を亡くし、海辺の小さな旅館・中島荘を切り盛りする奈々。
旅館の休業中に藤井俊太郎という男が突然「どうしても泊めてほしい」と尋ねてきた。
彼は、亡くなった恋人がここに泊まっていたらしく何でもいいから恋人について教えてほしいと言う。
恋人の足跡を辿りながら町案内をする中で、2人は時間を共に過ごすようになる。
ゴミ袋の中に倒れ込むシーンを切り取ったフライヤーが魅力的すぎて観に行くのを決めた本作。
予告でも感じていたが、映像が本当に美しい。
どこか寂しげで透き通るように純粋な、まるで奈々そのもののような優しい色調の画面が目に優しい。
そして、映像はもちろんのこと構図も綺麗。
坂、海、花、火、煙。
町と自然の美しさが物語と融合して、なんとも言えない良い雰囲気を醸し出している。
特に奈々が天井の電気のスイッチの飾りを眺め、それが暗い部屋の中でキラキラと輝く、あのシーンが好き。
画は綺麗なんだ、画は。
映像表現としては今年ベストに入れたいほど。
ただ、ストーリーが正直イマイチだった。
孤独を抱えた2人が互いを埋め合うように過ごしたひと夏の逃避行。
かなり惹かれるあらすじだが、何か違和感を感じるところが多かった印象。
特に、岡山天音演じた俊太郎のキャラがあんまり好きになれない。
もちろん岡山天音は大好きな俳優だけど…
自分勝手なキャラクターに感じてしまった。
奈々も奈々で、食事中に仏壇にお供物するシーンがあったけどあくまでも接客中だし、俊太郎も食事のタイミングでお線香あげても良いですかはないだろ。
これって私の常識が欠けてるだけ?
意味深なタイトル、そして、2人の大切な人の最期は不明瞭なままで終わる。
寝不足で途中少しウトウトしてしまったのもあって、ストーリーの全貌やメッセージ性に関しては正直よく分からなかった。
ただ、映像や音楽が作り出す夢の中のような心地良さが感じ取れるだけでも観る価値は十分にある。
第一、福地桃子さん自身が美しく、町の自然に溶け込んでいて素晴らしかった。
煙草の煙が海風にのって漂ってきそう。
恋とも友情とも違う唯一無二な2人の関係性はとても良かった。
〈追記〉
諏訪太郎さんのウインクが最高に可愛い。