劇場公開日 2022年9月23日

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「流れぬ水は腐るのか」渇きと偽り カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0流れぬ水は腐るのか

2022年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

原作未読だが、オーストラリアでベストセラーになった小説の映画化という情報のみで鑑賞。

オーストラリア映画と言うと昔はマッドマックスやクロコダイルダンディー、近年ではソウやベイブ、ピアノレッスン、ライオンなど面白い映画がたくさんあるが、個人的にはコカコーラキッドが一番好き。(ただ当時グレタ・スカッキのファンだったというだけw)

一面砂漠のような干ばつに苦むオーストラリアの田舎町で起こった一家惨殺事件を、青年時代に恋人の死に関係し、街から追われた過去をもつ連邦捜査官が帰省し解決に挑むといったお話。

物語は過去と現在の2つの事件の関係性と犯人捜しを中心に進んで行くが、登場人物それぞれのバックボーンを短いながらもしっかりとバランス良く見せるので焦点を絞らせず、核心に辿り着けるのはラストから数分前という上手な構成。

主演のエリック・バナはずっと心に傷を負い、嫌がらせを受けながらも誠実に注意深く捜査を進めて行く有能な捜査官を感情的にならず終始抑えめに嫌味なく演じておりグイグイと引き込まれていく。
(アップで見るとビル・マーレイに見え、引きで見るとO脚なのも可愛い)

人の出入りが少ない田舎は良くも悪くも浄化が鈍く、誰もが昔のことを昨日の事のように覚えており、それ故に恨みや怒りの感情もずっと風化せず持ち続けるというある意味不健全な環境下にあり、所々に映し出される空撮された乾燥しきった小麦畑の映像がそれぞれの心の荒み具合を象徴しているようで悲しさや愚かさにドライブをかけ切なくなって来る。

それにしても白人の女子高生って破壊力すごい。

カツベン二郎