「大人程震え上がるディストピア社会の中で自分らしくあること」映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア) かずくんさんの映画レビュー(感想・評価)
大人程震え上がるディストピア社会の中で自分らしくあること
久しぶりに子供向けの映画をガッツリ見たが、ドラえもんながらに訴えかける内容がかなり攻めてた。
小学生から見る「理想郷」とは、親に怒られず友達とも楽しく、テストも満点で完璧たること…。
大人になってわかるが、目の前のことが解決すればいいのではなく、常に何手先も見通さなければならない。
ドラえもんの映画はそういったことを改めて学ばせながら、日常を日常らしく過ごす大切さを教えてくれる。
さて今回の映画だが、伏線回収がお得意の脚本家さんのストーリー。
そこまで酷く過去に影響するほどでも無かったが、普通に展開はドラえもんらしくてよかった。
のび太くんはダメダメではあるものの、それは勉強面であり、誰よりも友達想いの少年であることは間違いない。
パラダピアは平和ではなく「洗脳された世界」。
誰もが幸せに暮らせる世界の違和感を、のび太くんだからこそ気付けるようにした展開は良かった。
そりゃ当然計画の要になれるわけよ。
子供のうちから褒められることで、「その先、もっと先」と興味が湧いて楽しさが生まれてくる。
こういう楽しさが洗脳を早めていくと考えれば、この島に来ても上手く行かないのび太くんはある意味で幸せなのかもしれないな、と。
序盤はパラダピアを見つけるまでの展開な為、バトルも無いし大きな見所があるわけでもない。
大人目線からすると、そこまでワクワクする演出ではないから退屈ではあった。
中盤からの展開はトントン進んでいくが、寧ろ子供たちはつまらなく感じるかもしれない。ディストピアの恐怖や計画の一端は大人の方が期待値が高まるのではないだろうか(実際僕がそうだったので)。
終盤は絆・友達という点がゴリ押しで、ホントはソーニャとの思い出シーンがあればよかったかなーと。
そうすれば終盤の読める別れの展開もより泣けたと思う。
「(完璧な)学園生活を送る小学生」という、比較的各週やってるような内容だったので描かれていないのかもしれないが、欲を言えば段々と洗脳されていく三人視点も欲しかったなー。
そうすればのび太くんが訴えかけるシーンにより深みが出たと思う。
まぁ子供向けで1時間40分もやれば子供は退屈してくるだろうから、案外このくらいでも良かったのかもしれない…。
んー、如何なんだろうなぁ…。
只安定の「ドラえもんらしさ」というのは感じることができたので良かった