「地獄から解放されても生き地獄」雪道 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
地獄から解放されても生き地獄
元々テレビドラマとして作られたのだから、チョンブンとヨンエの兄ヨンジュの恋愛部分が少なく感情移入しにくい前半。むしろ、裕福な家に育ったヨンエとチョンブンの対比が見事に描かれていた。勤労挺身隊に選ばれたヨンエと、拉致されたチョンブン。同じ列車の中に入れられて立場も同じになりながら、やがてチョンブンは素直さゆえに生き抜く術を身につけていた。中盤以降、慰安所に連れてこられた2人が親友として目覚めるところがいい。
物語は現代(2015年当時)のチョンブンと、1944年の状況が交互に描かれ、現代パートに登場する不良娘ウンスに対するチョンブンの優しさが際立っていく。70年間ずっと1人で暮らしてきた彼女にとって、未来輝くウンスをどうしても更生させようと世話をやくのだ。体を売っちゃダメだ!
慰安所の描写は極端ではあるものの、ある程度の真実が見えてくる。堕胎薬によって苦しむヨンエの描写や、性病にかかった少女を銃殺したり、移動だと騙され虐殺されるおぞましさ。狂気しか生まない戦争悪が表現されていた。
慰安婦問題で解決困難なのは、痛ましい過去を隠さねば生きていけない事実があるから。紡織工場で働いていたことにして隠し通すこと。白い綿に包まれる生活と白い雪道の対比。逆境にもめげずお姫様でいる「小公女」の対比が興味深いところ。ヨンエとチョンブンの性格を考えてみると、、セーラは2人を足したような存在だったのかもしれません。
生きるためにカン・ヨンエの名前を借りたチョンブン。ラストにはヨンジュからの手紙がチョンブンのもとに届くのですが、爺ちゃんばあちゃんになった2人の再会も見たかった。
尚、キム・セロンは2025年2月に24歳の若さで亡くなった。その事実のほうでも泣いてしまう・・・