「全てに於いて、【中途半端】」クレイジークルーズ 芥さんの映画レビュー(感想・評価)
全てに於いて、【中途半端】
自分は坂元裕二さんのファンであり、彼の作品は多く見ている方ですが、彼の作品で初めてこんな駄作に出会いました。
人物設定も描写も関係性もミステリー性もコメディ性も、「あと一歩…」では無く、「一歩も出ていない」と言った方が正しいでしょうか。
『クレイジークルーズ』という題名と登場人物の容貌の奇抜さから、古沢良太さんの『エイプリルフールズ』のような一癖も二癖もあるドタバタコメディを期待していましたが、結果としてはコメディにもミステリーにもロマンスにも行き届かない、三流以下の映画で少々失落です。
まず、坂元裕二さんの作品に於いて、最も特徴的と言えるのは【偏屈な語り合い】だと私は思っていまして、今作ではバトラーと乗客がプールで遊泳した際にその片鱗が伺えましたが、余りにも投げやりな【偏屈な語り合い】に感じました。
内容が薄い理論武装は、まるで中高生向けの恋愛小説を読んでいるかのような気分でした。
コメディの点におきましても、登場人物達が初めから仕組まれていたような、主人公にとって御誂え向きな薄っぺらいキャラクター像でしかなく、主要人物の想いが錯綜する事もなく、淡々と物語を進めていく駒でしかない。
ただし、その駒も結局は何だかんだ理由を付けて適当に捨てられる駒でしかないように感じました。
映画不倫カップル、ヤクザ駆け落ちカップル、お嬢様召使いカップル、バトラー乗客カップル。
今作はラブロマンスに重点を置かれているようでしたが、最終的には「何だかんだ結ばれたよね✌️」と適当に回収。
本筋にしているラブロマンスすらも台無しにする駄作だと思います。
坂元裕二さんの他作品が良作なばっかりに、今作には期待し過ぎてしまいました。
全てに於いて中途半端。役者の無駄遣い。予算の無駄遣い。投げやりにするのではなく、もっとキャラクターの造詣が深ければ映画は面白くなると思います。
そこら辺の劇場で1時間程度で良いような内容でしょう。