「大船に乗れなかったクルーズ」クレイジークルーズ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
大船に乗れなかったクルーズ
豪華客船で殺人事件…!?
訳ありの船員、訳ありの乗客。
ミステリーとコメディとロマンスを乗せて。
脚本は坂元裕二。『花束みたいな恋をした』を大ヒットに導き、『怪物』でカンヌ国際映画祭脚本賞。今乗りに乗ってる脚本家によるNetflix製作のオリジナル新作。
豪華クルーズ船“ベリッシマ号”は42日間のエーゲ海ツアー中。
大病院経営一家、映画プロデューサー、チャラいカップル…。
バトラーの冲方は様々な客の対応に追われていた。
一人の客がギリギリ乗船。その客・千弦は、自分の彼氏と冲方の彼女が浮気してると言う。
モヤモヤ気分のまま船は出航。
そんな中で殺人事件。一緒に目撃した乗客もいるが、突然何も見てないと言い出す。それぞれに事情ありで…。
冲方と千弦は事件の真相を追う…。
期待するは『THE有頂天ホテル』や『マスカレード・ホテル』の豪華客船版。
現在屈指の脚本家による名推理劇。
巧みなストーリーテリング、洒落たセンス、何もかも極上のエンターテイメント…とはならなかったかな。
ミステリーもコメディもロマンスも中途半端。面白さもクレイジーさも今一つ弾けず、タイトル倒れ…?
設定や雰囲気から期待していただけに、これが坂元脚本…?
以下、思った事を。
ミステリー。
殺されたのは病院理事長。遺言で財産を家政婦に譲ると知り、息子夫婦が共謀。嫁がプールに突き落とした筈が、別の映像では感電死…?
犯人は息子夫婦と思いきや、真犯人は別に。
意外性を狙うが、真犯人や動機が唐突の印象。
ミステリーの醍醐味は今一つ。
コメディ及びキャラ描写。
吉沢亮は顔はイケメンでもコメディもなかなかイケる。
映画で主演格の宮﨑あおいを久々に見た。こちらもコミカル&キュートに。
父親をまだ生きてるよう見せかけたり、自己チュー&傲慢を見せつける安田顕&高岡早紀。
同じくらい高飛車な菊地凛子。
船長の仕事より密着取材が大事な吉田羊。
チャラカップルは実はヤクザの娘と組員。
キャストは豪華で一癖二癖、コミカルや嫌みを見せるが、残念ながら巧みに交錯するアンサンブルには至っていない。
唯一印象残したのは、病院息子夫婦の娘のお世話係の少年。まだ子供ながら悲哀滲ませ、お嬢様を想う一途さ。
ロマンス。
共に恋人がいながらもW浮気され、フラれた同士の冲方と千弦。
ひょんな事から協力して事件の真相を追い、当て付けにロマンスを匂わせる写メを撮る内に…。
美男美女で画にはなるが、ロマンス・ムードも今一つ盛り上がらない。
少年の一途な想いの方がずっと純愛。
ただ、“恋をしかけた”は“恋をした”の台詞は良かった。他にも時々冴えた台詞が。
かなり辛口やボロクソレビュー多いが、つまらなくはなかったが、期待し過ぎたかな…?
向き不向きあるかもしれないが、もし坂元裕二がまた同ジャンルを手掛けるとしたら、極上のおもてなしに期待したい。