カムイのうたのレビュー・感想・評価
全7件を表示
金田一京助氏の姿勢は素晴らしいけれども、過激?
少し前に『大地よ』を観たせいか、冒頭の雄大な雪山の遠景から、ドキュメンタリーかと錯覚したが、物語が始まると、主人公が和人とともに通う学校のなかで受けた差別やいじめから、自分の育ってきた民族性に肩身の狭い思いを感じることになる。ムックリは、私が20代の頃、北海道に初めて旅行に行ったときにその響きに感動して土産に買い求めて全く弾くことができないでいた思い入れのある楽器だが、本作中では無残に壊されてしまっていた。『ゴールデンカムイ』が描いていない関係性がよく理解できる展開である。当事者俳優をできるだけ起用してほしかった。
対照的に、アイヌ文化の素晴らしさを説く大学教授が「兼田」を名乗って出てくる。学校の国語の教科書の解説で、金田一京助氏の名と、サハリンまで渡ってユーカラの調査を行ったことは知っていたけれども、その聴き取りの様子や、アイヌの人々との関係性はわかっていなかった。映画に描かれていたような解剖学の教授のように、研究のために対象者の民族性や人権の尊厳を顧みなかったという姿勢は、近年まで世界中に存続していたので、当時の金田一氏がそのような研究姿勢に抗議していたとしたら、驚くべきことである。その一方で、朝ドラ『らんまん』に描かれるような明治期の帝国大学の教授陣の態度や、現在でさえ、大学教員のプライドの高さを考えると、実力行使をした兼田には、法律上の刑罰や損害賠償、学内における懲戒処分が向けられるものではないかと心配し、少し過激な描写だと感じた。
「アイヌ神謡集」を残し19才で夭折したアイヌの少女。その人生の軌跡が生き生きと、また力強さをもって伝わってくる作品です。アイヌを理解する上で是非一度ご鑑賞を。
「アイヌ神謡集」をこの世に残した知里幸恵。
その人生を描いたとのことで、注目してた作品です。最初
ドキュメンタリー作品かと思ったのですが、登場する人物
が実名ではないので、違っていたようです ・_・;
知里幸恵の人生を描いた本は何冊か読んでいるのですが
この作品の大筋はその人生をなぞったもので、話の展開も
概ね予想していた通りのものでした。 …なので
「和人からアイヌに対する差別・搾取・迫害の歴史」に
触れない訳は無いよなぁ と、覚悟しての鑑賞です。-_--;
鑑賞開始。 ああああ…
映像からの情報の量は、文章から得られる情報より膨大です。
なので、序盤のアイヌが虐げられている映像は辛かった…。*_*;
◆アイヌに対する差別用語・表現が作品中で使用されている
ことに驚きましたが、良く考えればこの作品の性格上必要
な事です。すぐに納得しました。
鑑賞終了 …ふぅ
さて、作品の内容に関して
主な登場人物(基本的にはモデルあり)
・北里テル(吉田美月喜) モデル:知里幸恵(アイヌ神謡集著者)
・兼田教授(加藤雅也) モデル:金田一京助(言語学者)
・イヌイェマツ(島田歌穂)モデル:金成マツ(知里幸恵の叔母)
・一三四(望月歩) モデル:不明(架空の人物か?)
北里テルと兼田教授を演じた役者さんの人選。
これが素晴らしかったと思います。登場した瞬間から、
” 知里幸恵 ” と ” 金田一博士 ” でした。
特に金田一博士の兼田教授を演じた加藤雅也(…ややこしい)が
私の頭にある金田一博士のイメージそのままに演じてくれたこと
がとても嬉しい。
アイヌの文化に敬意を持って接する姿には胸が熱くなります。
頭蓋骨を取り戻そうと奮戦する姿には力が入りました。
眼の前に博士がいたら、握手を求めるところです。(迷惑?)
実在の金田一博士は、アイヌ語研究の第一人者です。・_・ハイ
特に「口承文学」ユーカラの保存に力を注がれました。
金成マツの家を訪れた際に、知里幸恵と出会うのですが
・” ユーカラはアイヌの誇る文化です ” と熱く語る話
・知里幸恵が日本語もアイヌ語も話せると知り、ユーカラを貴方
の言葉で書き留めるよう薦める話
・そのためのノートを東京から送る話
・翻訳する上で、もっときめ細かな会話が必要となると、幸恵を
東京に呼び寄せる話
などなど。
これまで色々な本等を読んで、自分の頭に思い描いていた通りの
知里幸恵の人生がスクリーン上で描かれました。
19才の若さで心臓の病で亡くなることも、亡くなる前日にようやく
アイヌ神謡集の原稿が上がったことも、その通り描かれました。
まさに、知里幸恵の人生を描ききった作品かと思います。
見応え有りました。
覚悟を決めて観た作品でしたが、辛さだけが残る作品には
なっていなくて、良かった。
見逃さなくて良かった。
満足です。というよりは、やはり
” 観て良かった ” です。 ・_・ハイ
◇あれこれ
■「謡い」のリズム
ユーカラというのは「謡(うたい)」です。
言葉が音程とリズムを伴ってうたわれるもの。(のハズ)
ユーカラは文字になったことで、読むことができるように
なったのですが(これだけでも大変なことなのですが)、
音程やリズムがどんな感じなのかは今一つ不明瞭だったのですが
この作品で、音とリズムを伴った演奏がを聞くことが出来ました。
# 人びとが囲炉裏を囲むように座り、木の棒で炉端をたたいて
# リズムを刻む中、歌い手がリズムに乗ってユーカラを謡う
こんな感じだったのだ と分かり、個人的にはとても満足です。
■一三四青年
一つ疑問なのが、一三四の存在。
これまで読んだ本の中には、彼に相当する人物が出てきた記憶が無く、
実在の人物がモデルにいるのかどうか、分かりかねています。
もしかしたらこの作品オリジナルの登場人物なのでしょうか? はて?
ただ、この作品において一三四青年の役割は重要・必要なもので、
この作品のストーリー上欠かせない人物だったと思っています。
※と書いておきながら色々と調べていたら
どうもモデルになった青年がいるような感じが…・_・; キャー
■知里幸恵の叔母
知里幸恵が亡くなった後、彼女の遺志を継ぐように上京し
金田一博士の研究に協力、ユーカラの保存に尽力します。
金成マツが金田一博士のためにユーカラを書き残した、いわゆる
「金成マツノート」というものがあり、2006年までは翻訳作業が
続いていたのだそうです。
翻訳事業に予算がつかなくなり、活動が中断(中止では無いと
思いたい)したそうです。全82話のうち33話翻訳完了とか。
うーん。まだ半分も翻訳完了していない…。
◇最後に
心臓の病気で亡くなった知里幸恵。
心臓弁膜症(と言っていた気が)という病気は当時治療法が無く
安静にして生活するくらいしかなかった …ということ
なのでしょうね…。 しくしく。
現代医療なら手術すれば助かる病気かと思います。
そう考えると、なんか悔しい。
考えても仕方のない話とは分かってますが…。
それにしても
心臓に病気があると「結婚不可」と医者が判断する …って
そんな時代だったのか と驚きました。
作中、兼田先生が怒っていた場面が強く記憶に残ってます。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
【今作は和人達からの差別、偏見の中、屈せずにアイヌの尊厳を持ちアイヌ民族の歴史を口頭伝承で伝えて来たユーカㇻをローマ字に変換し、そして美しき日本語に訳した若きアイヌ人女性の半生を描いた作品である。】
■学業優秀なテル(吉田美月喜)は、女学校への進学を希望するが、アイヌ人と言う理由で不合格となる。
女子職業学校に入学するも、他の和人の女生徒たちから差別、嫌がらせを受ける。
そんな時、東京帝国大学からアイヌ語研究者の第一人者兼田教授(加藤雅也)がテルの叔母のイヌイェマツ(島田歌穂)の家にやって来て、叔母が謡うように語るユーカㇻを必死に書き留める姿を見て、テルはアイヌ民族の誇りある文化のユーカㇻを後世に残す事を決心する。
◆感想
・テルが、アイヌの楽器ムックリを同級生達に壊されたり、”臭い”と言われたり、序盤は観ていてキツイ。
■テルの叔母のイヌイェマツを演じた島田歌穂がユーカㇻを囲炉裏の前で兼田教授に請われて謳うシーンは、流石の声量もあり、圧巻のシーンである。
文字を持たないアイヌ民族が、叙事詩として民族の歴史を歌い継いできた事が良く分かるシーンでもある。
・彼女が東京の兼田教授の家に行く際に、幼馴染のヒサシ(望月歩)から”戻ってきたら結婚してくれ。”と告白されるシーン。
ー このシーンが、最後半に哀しく効いてくるのである。又、兼田教授を演じる加藤雅也の演技がこの作品のレベルを上げている。
同じ東京帝国大学の愚かしき教授が、和人に金を払って土葬が文化のアイヌ人の墓を彫らせて、骸骨を集めている姿との対比。-
・テルは、日夜ユーカㇻを後世に残すために、ローマ字に変換し日本語にして行くシーン。
ー 墨で流暢に書かれて行く文字の美しさ。-
■だが、テルは志半ばで心臓の病で倒れる。兼田の妻(清水美沙)等の懸命の看病もむなしく僅か19歳で世を去る。そこに駆け付けたヒサシが”二人にして下さい。”と言い、亡骸を抱きかかえるシーンは、沁みてしまった・・。
<今作は、和人達からの、謂れなき差別、偏見の中、屈せずにアイヌの尊厳を持ちアイヌ民族の歴史を口頭伝承で伝えて来たユーカㇻをローマ字に変換し、そして美しき日本語に訳した若きアイヌ人女性の半生を描いた作品である。>
<2024年3月2日 刈谷日劇にて鑑賞>
惜しい!
東川町を推しているので鑑賞した。館内は満席という人気ぶり。
アイヌに対する偏見差別の展開は予想通りであったが、対照的に映し出される旭岳や冬の北海道の自然を爽やかに描写しているので感情移入がなかなかできない。旭岳があまりにも美し過ぎるのだ!
この映画のテーマで敢えて言うなら吹雪のシーンをもっと入れるとか、晴れよりも曇り空を多めにするなどの陰鬱さが欲しい。また、あれだけ周りから汚いと罵られた割には常に綺麗な服を着ている主人公には多少の疑問も沸いた、せっかく良い演技をしているのに残念。
私が思うに島田歌穂の存在感が大きく、おいしいところをごっそり持っていったという点で助演女優賞もんだと思う。
東川町のPRであれば写真甲子園 0.5秒の夏の方が佳作、今作は惜しい出来栄えだった。
天命が言葉を紡ぎ、後世の基礎教養は、蓋された教育をこじ開けて生まれていく
2024.1.29 京都シネマ
2024年の日本映画(135分、G)
アイヌの伝統ユーカラを翻訳した知里幸恵をモデルに、その半生を描いた伝記映画
監督&脚本は菅原浩志
物語の舞台は大正6年の北海道
和人の職業学校に進学したアイヌ民族の北里テル(吉田美月喜、幼少期:茅本梨々華)は、アイヌというだけであらぬいじめを受けていた
彼女は叔母のイヌイェマツ(島田歌穂)のもとで暮らしていて、叔母は村の人気者だった
イヌイェマツはアイヌが代々口承してきたユーカラの伝統者で、テルも彼女の歌を聴いて育ってきた
村には、幼馴染の一三四(望月歩、幼少期:石谷彪真)がいて、彼は先祖の墓を荒らす不届きものを捕まえようと躍起になっていた
だが、その被害を町の駐在・矢野(清水伸)に訴えても、遺族が被害届を出さないとダメだと追い返されていた
ある日、東京からアイヌ研究者の兼田教授(加藤雅也)がイヌイェマツのユーカラを聴くためにやってきた
彼は熱心にユーカラを書き留め、列車の時間を忘れて没頭していた
やむなく一泊することになったが、テルがイヌイェマツのユーカラを受け継ぎつつあることを知った兼田は、ユーカラの日本語訳をしないかと持ちかける
そこでテルはローマ字を学び、ユーカラを書き留めて、それを日本語に直す作業を始めた
当初は直訳していたが、次第に「日本語の音感と言葉の意味」に注意を向けるようになり、やがては作業場を東京に移すことになった
テルが東京に来てまもなく、蓄積した疲労が病魔を顕在化させてしまう
ある雨の日に倒れたことを境にテルの体調は悪化を辿り、心臓病の診断が下って、結婚不可と言われてしまう
その知らせを受けた一三四は悲しみに暮れ、テルはこれが天命とばかりに、ユーカラの日本語訳に没頭していくのである
映画は、ユーカラの再現と、テルが書き記した書籍の序文が引用され、その短すぎる人生を克明に描き出していく
アイヌの事情にさほど詳しくなくても分かる内容になっていて、細かな再現度とクオリティが高い作品になっていた
感動的な演出がほとんどないのに自然と頬を伝う涙は、心の底に響く何かがあるからだと思う
アイヌの言語を残そうとする兼田とは対称的に、墓を荒らして装飾品を手に入れる帝国大学の小嶋教授(天宮良)のように誇張されたキャラクターもあるが、実際にはもっと過酷なものがあったように思える
学校教育でほとんど避けられてる歴史ではあるものの、このような作品を通じて訴求する意味はある
『ゴールデンカムイ』のようなエンタメ作品を入り口として、音楽的素養を伝える本作のような作品が増えていくことで、先人が蓋をしがちな不都合な歴史というものは基礎教養になっていくのかもしれません
いずれにせよ、本来は別の日に鑑賞する予定が前倒しになったり、映画館に着いた時には入荷待ちだったパンフレットが鑑賞後には店頭に並んでいたりと、不思議な縁がある作品だった
作品自体のクオリティも高く、ナレーションの引用などで情景を描写していくのも良く、フクロウがインパクトになっていたと思う
ユーカラは叙事詩として、アイヌの歴史、世界観、風習を示すものだが、翻訳化させていても、歴史を重ねていくうちに進化していくものだと思う
作品に対する熱意と敬意を感じる作品なので、鑑賞機会があるならば足を運んでも良いのではないだろうか
カムイのうたを観た感想
カムイのうたを観て、私が特に印象に残っているのは、鎌田先生がアイヌ民族は文字や記録を使わずに、ユーカラを通して大事なことを受け継いでいると、講義をしているシーンとテルの母が校長先生とお話しをするシーンで、校長先生が言った「無知が生む偏見」という言葉です。アイヌ民族が差別を受けている理由について、あまり考えたことがありませんでした。倭人達は、生活様式や言葉、身体のつくりが自分達と違うというだけで、訳もなく差別をしてきたのだと思います。なので特に差別に意味や理由はないのではないかと考えました。劇中、倭人もアイヌも同じ血が流れている人間だとあったように、違いはあれどみんな同じ人間で優劣をつけられるものではないので、鎌田先生のように自分と違う人達を知ることが大切だと感じました。
ユーカラとバイオリンなどの楽器の音が融合しているシーンがあって鳥肌がたちました。
カネトの音楽劇でも出てきた「銀の滴降る降るまわりに 金の滴降る降るまわりに」が劇中に出てきて、知っているフレーズがあって嬉しくなりました。
映画を観てアイヌについて、もっといろんなことを知りたいと思いました。
少女の生き様
アイヌ民謡集を命の限り書き綴り民族の誇りを後世に伝えた知里幸恵さんの物語
差別されながらもこんなに聡明で必死に生きた女性がいたとは驚き
映画は自然豊かに壮大に描かれています。
低予算なのに一年あまりで作り上げたことにこれまた驚
号泣とまではいかないがホロリとする場面あり
島田歌穂さん当然といってはなんだけど、演技上手だったなあ
加藤雅也さん、吉田美月喜さんも
全7件を表示