「【今作は和人達からの差別、偏見の中、屈せずにアイヌの尊厳を持ちアイヌ民族の歴史を口頭伝承で伝えて来たユーカㇻをローマ字に変換し、そして美しき日本語に訳した若きアイヌ人女性の半生を描いた作品である。】」カムイのうた NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は和人達からの差別、偏見の中、屈せずにアイヌの尊厳を持ちアイヌ民族の歴史を口頭伝承で伝えて来たユーカㇻをローマ字に変換し、そして美しき日本語に訳した若きアイヌ人女性の半生を描いた作品である。】
■学業優秀なテル(吉田美月喜)は、女学校への進学を希望するが、アイヌ人と言う理由で不合格となる。
女子職業学校に入学するも、他の和人の女生徒たちから差別、嫌がらせを受ける。
そんな時、東京帝国大学からアイヌ語研究者の第一人者兼田教授(加藤雅也)がテルの叔母のイヌイェマツ(島田歌穂)の家にやって来て、叔母が謡うように語るユーカㇻを必死に書き留める姿を見て、テルはアイヌ民族の誇りある文化のユーカㇻを後世に残す事を決心する。
◆感想
・テルが、アイヌの楽器ムックリを同級生達に壊されたり、”臭い”と言われたり、序盤は観ていてキツイ。
■テルの叔母のイヌイェマツを演じた島田歌穂がユーカㇻを囲炉裏の前で兼田教授に請われて謳うシーンは、流石の声量もあり、圧巻のシーンである。
文字を持たないアイヌ民族が、叙事詩として民族の歴史を歌い継いできた事が良く分かるシーンでもある。
・彼女が東京の兼田教授の家に行く際に、幼馴染のヒサシ(望月歩)から”戻ってきたら結婚してくれ。”と告白されるシーン。
ー このシーンが、最後半に哀しく効いてくるのである。又、兼田教授を演じる加藤雅也の演技がこの作品のレベルを上げている。
同じ東京帝国大学の愚かしき教授が、和人に金を払って土葬が文化のアイヌ人の墓を彫らせて、骸骨を集めている姿との対比。-
・テルは、日夜ユーカㇻを後世に残すために、ローマ字に変換し日本語にして行くシーン。
ー 墨で流暢に書かれて行く文字の美しさ。-
■だが、テルは志半ばで心臓の病で倒れる。兼田の妻(清水美沙)等の懸命の看病もむなしく僅か19歳で世を去る。そこに駆け付けたヒサシが”二人にして下さい。”と言い、亡骸を抱きかかえるシーンは、沁みてしまった・・。
<今作は、和人達からの、謂れなき差別、偏見の中、屈せずにアイヌの尊厳を持ちアイヌ民族の歴史を口頭伝承で伝えて来たユーカㇻをローマ字に変換し、そして美しき日本語に訳した若きアイヌ人女性の半生を描いた作品である。>
<2024年3月2日 刈谷日劇にて鑑賞>