消えない虹のレビュー・感想・評価
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重しテーマ
非常にテーマが重い作品
スナックのホステスが言った「泣いた後に出る虹」という言葉は、どんなに辛いことがあっても、その先にはきっと希望がある そんな意味に感じられた。
この物語は、特定の実際の事件を描いたものではないかもしれないが、現実に起こりうる社会問題をリアルに描いたフィクションである。
観る者に「許しとは何か」「人は本当に再生できるのか」といった深い問いを投げかけてくる。
物語には、過去の事件と現在の事件という二つの軸がある。
それらは非常に似ているようでいて、まったく異なる側面も持ち合わせており、その解釈は非常に難解だ。
背景には「少年犯罪」「加害者と被害者の再会」「贖罪と再生」といった、現実社会でも繰り返し議論されてきたテーマがある。
もし実際にこのような事件が起きたとすれば、私たちは多角的な視点から深く考えざるを得ない。
だからこそ、映画という手段で視点を絞り込み、ひとつの角度から問題を見つめ直すことができるのだ。
しかし、
この作品はむしろ多角的すぎて焦点が定まらない印象を受けた。
特に気になったのは、岡田とカオルの関係性だ。
彼らの「家族のような関係」は、少年犯罪の更生における「擬似家族」を想起させる。
つまり、少年の犯罪と家族との関係性が「前提」とされているように見える。
だが、二人の関係は非常にミステリアスに描かれており、観客に明確な説明がなされない。
あえて隠すような演出には、やや疑問が残った。
また、日本社会における殺人者への排斥感情は非常に強い。
工場長が、交番に預けられた従業員「香川晃(本名:薮田晃)」の過去を調べ、「家族であっても薮田は許せない」と語る場面は、その象徴だ。
薮田の苦しみ、自殺した両親が残した「あなたは幸せになってね」という手紙。
その意味が理解できないまま、彼は涙を流す。
定食屋で他人の無責任な噂話に怒りを覚えるが、その怒りの矛先が正しいのかどうか、観ていて疑問が残った。
「何も知らない他人の言葉」は確かに無力だが、薮田の怒りの描写には違和感があった。
そして、彼の過去
小学4年生の女児・ミチルを殺害した事件。
親友の妹であるミチルが、スカートの中を見られたと勘違いして「痴漢」と叫んだことがきっかけだったという説明は、あまりに短絡的で、説得力に欠ける。
カオル自身も「信じられない」と言っていたが、観客としても同じ思いを抱いてしまう。
あの日、二人の間に何があったのか?
当時の警察が焦点を当てたはずのこの部分が、物語では十分に掘り下げられていない。
現在の事件
工場長の娘・ミナミが屋上から突き落とされ、命を落とす。
加害者は親友だったアカネ。岡田の娘であり、カオルが長年見守ってきた少女だ。
いじめグループの証言によって真実が明らかになるが、その背景の複雑さと、13歳という年齢の思考に絶句する。
真実を語る決意をしたサキ。
だが、なぜ彼女の両親は新聞記者に話そうとしたのか?
本来、真実は岡田や工場長夫妻に直接伝えるべきではなかったか。
この点にも疑問が残る。
アカネの話とサキの話が整合し、3年間の精神分析を経て、新しい団地へと移る。
この「新しい団地」は、時代の移り変わりや人の変化を象徴しているようにも見える。
ミナミがアカネにしていたいじめ。
それを「許してほしい」と願った結果が、あの悲劇だった。
さて、
「この虹は、消えない。誰かの涙の先に確かに希望があることを、私たちは信じてみたい」
作品を見てこう思えただろうか?
また、「赦しとは何か。再生とは何か。問い続けることこそが、この作品が私たちに託した“虹”なのかもしれない」
こんな風に感じることができただろうか?
それとも、「人は過去を背負いながら、それでも前に進もうとする。『消えない虹』は、その歩みの尊さを静かに描いていた」
と少しでも感じただろうか?
この作品が描いたのは、加害者でも被害者でもない、「人間」そのものだったのは間違いないだろう。
誰かの痛みを知ることからしか、赦しも再生も始まらない。
『消えない虹』は、その原点を私たちに問いかけていると思われるが、あまりに多角的で、視点が散漫になってしまった印象も否めない。
それでも、観る者の心に何かを残す作品だったことは間違いないだろう。
罪を犯した人は希望を持ってはいけないのか
新聞記者の月野木薫は13歳の時に友人に妹を殺されてしまった。今は結婚式を間近に控え幸せな日々に期待を抱いているが、そんなある日、中学校の屋上から女子生徒が転落死する事件が発生した。女子生徒を転落させた加害者の少女は、月野木が日頃から面倒を見ている友人・岡田の娘だった。そして、被害者の少女の両親の会社で働き、家族同様の付き合いをしてた香川晃は、別の名前があり、月野木の妹を殺した元加害少年だった。この事件をきっかけに、月野木と香川は26年ぶりに再会することになり・・・という2つの事件が絡み合った話。
もちろん、被害を受けた方は加害者を一生許さないだろうし、いくら謝罪されても、死んだ子は生き返らない。それはわかった上で、加害者は将来への希望を持ってはいけないのか、という点がポイントなんだろうと思う。
本当に被害者を憎んで殺してしまったのか、どうもそうじゃなさそうな突発的な殺人?っぽいところがポイントなんだとも思う。
なかなか考えさせられた作品だった。
茜役の矢崎希菜は可愛くて聡明な感じの女優だった。20歳くらいで13歳のの中学生役が出来るのも凄かった。今後に期待したい。
いまはなんとなく生きてるだけでいいと思えた映画
わたしが本作を観ようと思ったキッカケは2020年からいままでにない絶望感を感じていた時(いまは時間が少しずつ解決してくれているみたいです。)。
タイトルとポスターの女の子のなんとも言えない表情に惹かれました。
本作は幸せになってもいいのか?がテーマみたいな映画だとわたしは受け取ったのですが、、
2年前のわたしはそれ以前のこの地球に存在していいのか?くらいのヤバかった時でした。
仕事を休職して、自宅ではずっと布団の中で天井ばかり見てた。
少しずつ日常を取り戻し、仕事も復帰して、、
目標も見失って、最低限のことをこなし、映画を映画館で観ても以前より感動できなくなってた時期もありました。
本作ははっきり言って重たいテーマの映画です。
けれど、わたしはまだまだもっと自分のための解決策が欲しくて観ました。
わたしなりの本作の感想は、、、、、
いま幸せを求めなくてもいいんじゃないか。
取り敢えずいまを生きていこう!
がんばれない時は無理しない。
最低限のことができていればいいんじゃないかな。
ってことでした。
ラストシーンが良かったです🌈
いまが辛くてどうしようもない方、なんのために生きなきゃいけないのか?
という方には本当に観ていただきたいです!
勿論、いまとっても幸せな方も、、
明日がいつもと同じなわけではないからです。
島田監督のニコニコしたお顔と握手していただいた時のホッカホカの手の温かさで少しホッとしました😊
ありがとうございました!
奇遇がすぎる
2022年劇場鑑賞237本目。
なかなか衝撃的なポスターで目をひきますが、この娘は主役ではありません。
観ているとこのポスターに書かれている娘の起こした事件はあくまでストーリー上きっかけに過ぎず、その奥にもう一つの物語があることがわかります。
しかし、絶対ないとは言い切れませんがこんな偶然あるかなぁと思ってしまいました。
事件が起きているので出てくる人全員暗いのは仕方ないかなと思いますがちょっと辛かったですね。もう起きてしまった取り返しのつかないことに苦しむ人々の物語でした。タイトルの虹は希望の象徴なのですが、果たして希望を見いだせる流れだったかどうか・・・。
同じ石川県の監督作ということで関係者の方(監督じゃないですよね?)がチラシ配っていて、終わった後劇場前でお礼の挨拶してくれたので☆少ないの申し訳ないんですが(笑)
なんだか、惜しい!
どうしたんですか待ち
同級生を屋上から落として死なせてしまった13歳の少女を面倒みていた新聞記事の話。
母親を亡くし父子家庭となった近所の姉弟の面倒をみる様になった新聞記者を軸に、面倒をみられていた少女が起こしてしまった事件と、被害者の親の経営する工場で働く寡黙な男の過去をみせていくストーリー。
騒ぎ立てるマスゴミをみせつつなかなか示されない事件のあらまし、と悲しみと共に感じる胸クソ悪さや苛立ち。
そして時折みえるもう一つの話への布石。
婚約者に嘘をつく必要性も心境も全然解らないし、邦画お得意の過剰演出やオーバーリアクションとか、語らず聞かず勝手に話しをすすめたりとか、人物の名前の示し方とかand more…上手くないなと感じる部分は多々あったけれど、とても重くやり切れず、それでいて最後は少しだけそれが軽くなる物語だった。
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