「冒頭の島の雰囲気だけが魅力」Dr.コトー診療所 びよんどさんの映画レビュー(感想・評価)
冒頭の島の雰囲気だけが魅力
特にシリーズのファンだった、という訳ではないですがそれでも冒頭の胸がすくような青い空をバックにコトー先生が自転車を漕いで診療所に向かうまでのシーンはとても良いものに感じました。
しかし、褒められる部分はそれだけです。
離島での個人を滅して奉公する事でしか実現できない医療体制、島を出て医学生として勉強していた筈が唐突に帰郷した剛洋、コトー先生が白血病と判明したり、島に台風が直撃したりと、とにかく作中で問題ばかり起きますがそれらの問題が分かりやすく解決されることはありません。
いや、解決が難しい問題が多いのは分かりますがほぼ全ての要素が投げっぱなしと言っても良いくらいに作中でまともに解決に向かおうという流れすらありません。
特に台風が直撃〜手術からのシーンは酷く、コトー先生は意地になりトリアージを受け入れようとせず、島民はコトー先生ならどうにかしてくれるの一点張り。研修医のハント先生は孤立してしまいます。
そして無理が祟ってコトー先生や綾佳さんは倒れてしまうのですが、ここからが酷い。
島民たちの声援を受けて無理矢理身を起こしたコトー先生は発作や体調を気にせず震える手で手術を再開、手術を終わらせて気絶した後…なんかいい感じに全部解決したかのようなエピローグを流して終わり。医療とは何だったのか。
それだって診療所の存続はどうなったのか、とか何であれだけ島にいる事に反対していたハント先生がまだいるのか、とか気になることは無数に出てきます。
総じて問題提起やトラブル、ハプニングだけがやたら多い割に落とし所が全く見えてこず、この映画で何をやりたかったのか、わざわざ10年以上前のドラマを掘り起こしてどうしたかったのか、殆ど誰も幸せになっていない結末でどうやって感慨を得たらいいのか、モヤモヤした気持ちだけ押し付けられる本当に酷い映画でした。
同感。確かに、台風が頻繁に訪れる孤島では、怪我人が出ないように、住民全体が前もって避難、など最善を尽くしているはず。
52歳で急性骨髄性白血病になったのなら、一刻も早く、血液内科で治療を受け、完全寛解を得て医療に復帰することを目指すのが、医師の姿。ハントが述べていたが、医療スタッフが疲弊してしまう映画のような状況では、結局コトー医師チームは破綻して、かえって住民を助けられなくなる。そうならないようにして住民を救う道を医師も医師以外も構築するはず。
現代に実在する孤島の住民や医師全般にとって、失礼な脚本であった。