「ドラマシリーズファンなら★2.5、初見なら★4」Dr.コトー診療所 おすしさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマシリーズファンなら★2.5、初見なら★4
どうしてタケヒロの成績が下がってしまったのか、休学中に誰にも相談できなかったのか、あれだけ島民から愛されている描写はあるのに、タケヒロの現在を気に留める者が28歳になるまで何故誰一人としていなかったのか、はたまたラストは結局、再入学できたのか…? そのへんをもっと丁寧に描いてほしかった。ファンが観たかったのはそっちのほうじゃないのかな。
そもそも、役者さんには申し訳ないが、判斗がいらなかった。その役をタケヒロがやればよかったのだ。都会の現実主義な医療現場で尖ってしまったタケヒロが、病気のコトーの代理として島に戻って来るがコトーと衝突し、クライマックスで考えを改める。ナミともなんかイイ感じ! という形のほうが、お決まりと言われようがシリーズファンとしては「気持ちよかった」し、東京の刑事どうこうで余計な尺も使わずエピソードを丁寧に描けたし、おさまりも良かっただろう。
シリーズファンのほとんどは、またあの温かい島の雰囲気に触れたかっただけ。16年前に感動をくれた皆に、また会いたかっただけ。
監督もそれをわかっているから、可能な限りのオリジナルキャストをそろえて挑んだのだと思う。
だからこそ、みんなが大好きだった島民の変わらないところ、変わったところにフューチャーし、もっと丁寧に描いてほしかった。
台風の夜に運び込まれた人々。いつ誰に治療されたのか、朝にはすっかり元気だった、あの賑やかしの人達。
先生が床に倒れ、アヤカが苦しんでいるのに、誰1人駆け寄ることなく茫然と演説を聞いているすがたにはがっかりしたし、シリーズファンとしては、そんな冷たい島の人達を見たくなかった。
コトー先生に救われたみんなで、今度はコトー先生を助ける。そういう描写が欲しかったのだ。診療所に詰めかける人々は怪我人ではなく、病気のコトー先生を心配する人達。そんな中だから先生は命を削ってでも重体患者の手術を行える。コトー先生がふらついたら、タケヒロがすかさず助ける。ありきたりだが、ファンがこの映画に求めていたのはそういう「テンプレ展開」だ。
なのにタケヒロは4年で培った医療知識を一切見せず、島民は自分のことばかりで先生に冷たく、コトー先生は「全員助けます」と言いつつエゴを通して1人の手術にかかりきりで他は全く治療してない。
観客はあのクライマックスシーンの何に感動していいのか、判斗は先生の何を敬服し島に残ったのかわからず、この映画で何を見せたかったのかあやふやにしてしまったと思う。
タケヒロまわりは「現実はそんなにうまくいかないよ…」というリアルを描いているように見えて、クライマックスでは現実ではありえない奇跡が起こって全員助かる。うーん、なんだかねぇ。