「コトー先生、お疲れ様でした👏」Dr.コトー診療所 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
コトー先生、お疲れ様でした👏
コトー先生のモデル瀬戸上医師が勇退されたニュースが先ごろあったように記憶しているのだが、ちょっと調べてみると、数年前に下甑(シモコシキ)島の手打診療所所長を引退されていたようだ。
原作漫画、テレビドラマ、本作の舞台の志木那島よりも実際の下甑島は大きいようで、島内に3つの診療所があるらしい。瀬戸上医師に師事する後継者でなんとか離島医療は維持できている様子だが、全国に点在する離島・無医村の問題は永遠の課題なのだろうと想像する。
テレビの「Dr.コトー診療所」シリーズは、熱心に見ていたわけではないが、見れば大抵面白く、長く視聴者の支持を得ている理由は解る。
初の(そして最後の)映画化である本作は、テレビシリーズや原作を知らなくても充分楽しめるものになっている。短期研修の若い医師を登場させることで、説明部分に無理がない。
ほぼテレビ版のオールキャストなので、テレビシリーズのファンを喜ばせることも抜かりない。
ただ、なぜ今ごろ映画化なのか?
という疑問は最初からあった。
映画を観て感じたのは、この脚本はテレビスペシャルの前後編を想定して書かれたのではないか…ということだ。
前半は若者の挫折が、後半はコトー先生の命がけの離島医療が描かれている。
そして、そのどちらも核心は曖昧なままだ。
東京に夢や希望を抱えてやって来た多くの若者が、夢破れて挫折する。
彼らの多くは現実と向き合ってその後の人生を送るのだが、新たな夢に向かう者や、もう一度チャレンジする者もいる。
本作で挫折した若者は、何によって立直り、何を目標に歩み始めたのだろうか。
トリアージを行わず全員助けると言うコトー先生。そんなコトー先生に頼りきった島民に向けて、若い医師が「無理だ」「これが現実だ」と訴えるのは正しい。
この問題提起に、コトー先生も周囲の人々も回答は持ち合わせていないはずで、コトー先生の信念のようなものにつき従うしかないのかもしれない。
若い医師はそのコトーイズムに導かれたのか、短期の研修期間を越えて島の診療所に残ったと思われる。
島と海の美しい風景を空撮でみせるパノラマ、会話のシーンでもカメラを移動させるなど、映画的な画作りの工夫がされている。
が、悲しいかな、今はテレビのバラエティー番組でもドローンによる風景の空撮は目にするので、然程インパクトはない。
映画的には、前半ならサスペンスが、後半ならスペクタクルが描けなかったか…物足りなさを感じた。
また、コトー先生が身を削って二人の患者を救うと、他に患者はいなかったかのように皆で喜ぶ大団円が感動に水を差す。
そんな残念なところはあるものの、主演の吉岡秀隆と柴咲コウをはじめ、それぞれの役にハマりきったレギュラー陣が充分に楽しませてくれる。
原作よりもシゲさんらしいと言われた泉谷しげる、時任三郎の寡黙な漁師も良い。
が、本作のゲスト髙橋海人が最も光っていた。
斜に構えた、病院の御曹司のステレオタイプかと思いきや、医療に真摯に向き合った青年医師を甘いマスクと甘い声音で熱く演じていた。
コトー先生の背中に髙橋が最敬礼する場面が、本作の最高の場面だったと思う。
二代目Dr.コトーは髙橋海人で決まりだ❗
テレビ局が映画に出資するのは歓迎だし、テレビ業界から優れた才能が映画界に刺激を与えてくれればありがたいと思う。
だが、本作もまた、テレビと映画の棲み分けという課題を残した。
終わってみれば、中島みゆきの熱唱が一番迫力があった気がする…😁
TVerで過去作をイッキ見して正解でした!
とにかく気になるヤシガニラーメン。テレビ局制作の上にラーメンの会社からも出資か?!と思ったくらい。
こんな先生に診てもらいたいです・・・