「【”医は仁術なり。”自分の身体状態を差し置いて、台風災害に遭った島民への的確なトリアージを指示、実行するDr.コトーの尊崇な姿が印象的な作品。崇高な絵画のような、ラストシーンも佳き作品である。】」Dr.コトー診療所 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”医は仁術なり。”自分の身体状態を差し置いて、台風災害に遭った島民への的確なトリアージを指示、実行するDr.コトーの尊崇な姿が印象的な作品。崇高な絵画のような、ラストシーンも佳き作品である。】
ー TVドラマは見ていないのだが、(元々、TVドラマは見ない。)今作品はドラマ未聴者に優しい作りである。登場人物は多数だが、序盤を見るだけで、大体のDr.コトーの周囲の人間関係が分かるからである。
物語の構成もシンプルで(褒めてます。)、物語にすんなりと入って行ける。-
◆感想
・Dr.コトーが、島民の誰からも慕われる医者である事は、直ぐに分かる。故に、彼の診療所を継ぐと島民から期待されていたタケヒロが、挫折し隠れるように島に戻って来た姿には”大学を中退する前に仕送りを頼めなかったのか。”と一瞬思ったが、漁師の父のシンプルな生き方を見て、納得する。
ー が、タケヒロのような若者はコロナ禍以降、多いと聞く。金銭的理由で、進学できないとは、何とも切ない。島の人達の過剰な期待も、プレッシャーだったんだろうな・・。-
・都会の大病院の跡取り息子ハントが、研修医として派遣されるも、村の人達はDr.コトーに頼る。だが、ハントは心折れる事無く、与えられた仕事をコツコツこなす。そして、Dr.コトーが急性白血病で倒れた際にも”島民は、先生に頼り過ぎて来た!”と島民の前で言う気骨がある。
ー 今作は、ハントの成長物語でもある、と私は思ったよ。-
・台風が島を襲う中、土砂崩れにより、担ぎ込まれる島民たち。老人の呼吸が止まるも、人工蘇生を止めず”全員、助ける”と言う、病を抱えた、Dr.コトー。そして、倒れた彼に代わり人工蘇生をするタケヒロの姿。
ー 他の方々のレビューを読むと、このシーンへの違和感を唱える方が多いが、私は”Dr.コトーの島民への強い想いにより、再び立ち上がったのだ”と解釈したので違和感はなかった。
(”悲しい程、能天気”なんです・・。)-
■東京の大病院へ自身の細胞を送っていたDr.コトー。彼に、急性白血病だと伝える医者(堺雅人)は冷たく”東京に来れば、直ぐに入院させる”と告げる。
だが、Dr.コトーは島に居続ける。島民を守るために。
<ラストシーンは、少しドキドキしながら観た。
Dr.コトーの妻が産んだ幼子が、ハイハイからヨチヨチ歩きを始め、島の皆が笑顔でそれを見る中、幼子は藁の草履を履いた人に太陽が差し込む中、捧げるように宙に持ち上げられる。
Dr.コトーは、東京の医者も言っていたように、島に留まり自身の力で、急性白血病と戦っているのだろうと、私は解釈した。
(白血病は、今や不治の病ではない。池江璃花子選手は、一年以上掛けて、この難病を克服している。凄いとしか言いようがないが、このシーンで頭を過ったのは、池江選手の復活した際の、笑顔である。)
そして、皆の笑顔の中には、研修期限はとっくに過ぎている筈の、大病院の跡取り息子ハントもいる。
行政の後継者プランを、Dr.コトーは”自ら島を離れる事無く、実践したのだ、”と私は思った。
今作は、無医村だった島を時間を掛けて救って来た男を描いた、佳き作品であると私は思います。>
共感ありがとうございます。
台風下の診療所での負傷者治療シーン、同感です。
本作の重要シーンだと思います。
決して能天気な考え方ではないです。
ハントの主張は正論ですが、正論を叫んでも何も変わりません。
ハントもタケヒロも、色々言い訳は言ってますが、医師として命と真摯に向き合う覚悟ができていなかったと感じました。
一方で、コト―先生が、全員を救うと言ったのは理想論であり根拠はありませんが、絶対に諦めないという覚悟の言葉でした。彼は、その言葉通り病を押して患者と、命と、向き合っていきます。その姿を見て、ハントとタケヒロは覚醒したと感じました。ラストシーンのハントとタケヒロの表情を見れば一目瞭然です。
確かに、ご都合主義的な展開があったことは否定しませんが、演出の許容範囲内だったと思いました。それよりも、作り手がこのシーンで我々観客に何を伝えたいのかを考える方が大切だと思います。
では、また共感作で。
-以上-