「命を巡る、最大の試練」Dr.コトー診療所 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
命を巡る、最大の試練
通常スクリーンで鑑賞(レイトショー)。
原作マンガは未読、テレビシリーズは視聴済みです。
過疎高齢化や僻地医療の抱える限界など、命を巡る様々な問題が容赦無く壮絶に突きつけられ、コトー先生史上最もハードな展開に心も涙腺もめちゃくちゃ刺激されました。
自身にも試練が降り掛かっている極限状態でも目の前の命と向き合い、「必ず助けますからね」と優しい言葉を掛け、諦めなかったコトー先生の姿に涙が止まらなかったです。
ですが、正直描き切れていない部分もあったのでは?
希望溢れるラストシーンにおけるコトー先生の生死についてはどちらともとれそうなので、全てを語らず、見た者に解釈を委ねる非常に映画的な描写になっていたのは良かったですが、離島医療の統廃合の件は結局どうなったのか分からぬまま。
判斗先生が残っており、診療所もいつも通り稼働していることを考えると、今回の台風の一件をきっかけに「各島に診療所は必要ではないか?」と計画が見直されたのかも。それだけははっきり分かるようにして欲しかったと思いました。
とは言え、「人を助け、人に助けられ、そしてこれからも生きていく」と云うテーマは、コロナ禍の今だからこそ余計に、とてつもない実感を持って胸に迫って来ました。
16年ぶりの続編にして完結編に、当時のキャストが殆ど欠けることなく再び集結したこと自体、とても感動的でした。
久々の新作を、作品世界に没頭出来る映画と云う媒体で製作した意義も感じることが出来、16年掛けて紡がれた物語の終着としてこれ以上のものは無いなと思いました。
長い月日の間に変わったものもありましたが、そこに暮らす人々の温かさは少しも変わっておらず、それだけで涙が。
登場人物たちの人生を体現した素晴らしい演技に心からの賛辞を送りたいと思います。ブラボー、そしてありがとう!
[余談1]
冒頭、青い海を俯瞰し、その中心を通っていくフェリーを映したカット、とてもスクリーン映えする素敵なシーンだなと思いました。「今から始まるコトー先生はドラマではなく映画です」と高らかに宣言する印象的なシーンだな、と…
ドラマを観ていた時から、志木那島の風景はスクリーンに映えるだろうなと感じていたので、本作で切り取られていた雄大な景色の数々に感動を覚えずにはいられませんでした。
[余談2]
映画館の音響で聴く「銀の龍の背に乗って」は格別の味わいと迫力と感動で、最高の余韻に浸ることが出来ました。
[余談3]
コトー先生が倒れたのに誰も手を貸さないことに違和感を抱きましたが、「コトー先生に甘え過ぎていた」と云う現実と危惧が実際の形となって眼前に突きつけられたことで、希望が絶たれたかもしれない絶望感に呆然自失し、思考が停止してしまって体が動かなくなった、と解釈することにしました。
[以降の鑑賞記録]
2023/07/22:FODプレミアム(レンタル)
2024/01/03:新春映画まつり!(地上波初放送)
※修正(2024/01/03)