「前の家であった事」エスター ファースト・キル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
前の家であった事
聡明な9歳の少女、エスター。
しかし、その衝撃の正体は…。
前作のラスト、ヴェラ・ファーミガの見事な蹴りで遂にこの“悪魔の少女”も息の根を止められた。
なので続編は作られない。前日譚。
エスターがコールマン家に引き取られる前の惨劇を描く。
とは言え、前作の衝撃を越えられるか…?
前作とは違った意味で、こちらはこちらでまた衝撃の前日譚になっていた。
冒頭は前作でも触れられていたエストニア時代の精神病院。
エスターこと本名リーナは、一番の危険な患者。
職員は常々行動に目を光らせていたが…、新しい担当が着任した初日もトラブルを起こす。続けて職員の一人をたぶらかして殺し鍵を奪い、発狂患者を利用して脱走。
絶対に解き放ってはいけないこのサイコパスが解き放たれてしまった…。
ネットで行方不明の少女たちを検索。その中から自分に似ている少女を見つけ、成り済ます。
その少女の名は、エスター。
4年前に行方不明になった少女エスター。
家族は帰りを願っていた。ある時警察から驚きの報せが。
エスターがロシアで見つかった。保護され、アメリカへ。
4年ぶりの再会。ちょっと印象変わったが、それも成長期だから。家族は喜ぶ。
こうしてリーナ改めエスターは、まんまとある家族の元に潜り込む。
この家族に危険が…に非ず!
まず驚きなのは、“14年ぶり”の“前日譚”なのに、イザベル・ファーマンが続投している事。
幾ら何でも25歳になったファーマンがエスターを再演するには無理がある…?
驚いた。メイクや技術の力もあるだろうが、25歳のファーマンが前作より若いエスターを演じ切っている。まあ多少老け顔なのも“正体”を知れば。
これもファーマンの演技力。当初はカメオ出演だったらしいが、続投。それに彼女以外にエスターは考えられないし。
迎え入れられ、幸せな生活の始まり。…初めだけ。
次第に不可解な言動。
それに気付く妻。怪訝する息子。何も気付かぬ夫。
夫婦の情事を盗み見るお約束。
絵画が共通の趣味でもあり、夫に近付くエスター。
前作のパターンを踏襲。
エスターの魔の手が徐々に家族に及ぶ…だけだったら前作の二番煎じ。
エスターの正体ももう知っているし、どう展開を持っていく…?
今回衝撃の本性を現したのは、家族の方だった…!
妻トリシア、夫アレン、息子ガナー。
行方不明の悲しみから帰ってきた娘(本当の娘ではないけど)に喜ぶ一見平凡な家族だが…
エスター(本物)の捜索に尽力してくれた刑事。エスター(偽者)の指紋を取るなどして調べようとする。刑事の勘か…?
刑事の家に押し入り、口封じで消そうとするエスター。
が!刑事を殺したのは突然家に現れたトリシアだった…!
どーゆー事!?
実はエスター(本物)は行方不明ではなかった。
殺されたのだ。殺したのは、ガナー。
家族の平穏な生活を守る為、トリシアは行方不明として隠蔽。
つまりトリシアもガナーも会った時からこのエスターが本物でない事は知っていたのだ。
それを知った上で、“帰ってきた娘”として迎え、家族の平穏な生活を守り続ける。何も知らぬは夫だけ…。
トリシアやガナーの苦悩…否!
トリシアもガナーも本性を現す。このまま家に居たければ私たちの言いなりに。
さすがのエスターも歯向かう事出来ず。
エスターもサイコパスだが、まさかまさか潜り込んだ家族の母親と息子も、とんだサイコ親子だった…!
ジュリア・スタイルズもイザベル・ファーマンに負けず劣らずの怪演。
前作の家族に危険が及ぶ恐怖ではなく、本作は中盤からエスターと母子の駆け引き。
勿論ただ言いなりになる訳ないエスター。隙あらば逃げるか殺そうとする。
トリシアもガナーも容赦ない。夫の前では仲良し親子のフリをするが、夫が出張の時…。
駆け引き決裂。自殺を装って、エスターを殺そうとする。
サイコパス少女vsサイコ母子のデス・バトル勃発…!
まあエスターが死なない事は分かっているが、こんな修羅場を切り抜けて来たんだもの、次の家族(前作)は楽勝だったのかも…?
ガナーを殺し、家は火事。屋根からぶら下がったエスターとトリシア。落ちたのはトリシア。エスターはアレンに助けられるも、正体を知り拒絶。エスターはアレンも突き落とす。
燃え盛る家の中でエスターは…。
警察に保護される。
行方不明になり、ロシアに連れて行かれ、家族と再会出来たのも束の間、火事で家族は死亡。
一人生き残り、引き取る親戚も居ない。このまま孤児院へ。
何て可哀想な少女…。
こんな少女を世の中は放っておかない。きっとすぐ、引き取る家族が現れる。
警察や孤児院は同情してそう思う。火の中に消えた真相など知らずに…。
次引き取った家族を襲う惨劇とエスターの衝撃の正体も知らずに…。