「作り手の「知恵」が詰まってる」エスター ファースト・キル キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
作り手の「知恵」が詰まってる
個人的には、ホラー映画は苦手。
でも、前作が面白かったのと、評判が良いので久しぶりにホラー映画を劇場で観る決心をした。
結果、大正解。
(ここからネタバレします)
療養所の一室、暗がりで瞬く蛍光灯の光で現れるあのコ。
他の人間を思いのままに洗脳・コントロールするあのコ。
そして、引き取られた先で髪を結び、リボンを着け、帽子を被って現れたあのコは…そう「あの」エスター!
ここまでで、前作ファンは激アゲすることだろう。
もちろん主役の女性は前作から現実に大きく成長していることを観客の大半は知っていて、それをどうカムフラージュするかを温かく見守っている。
「いやいや。後ろ姿だけ子役じゃん」
「身長もごまかしてるじゃん」
そんな野暮な事を言うヤツはいない。
そう。
この映画は、見守ってくれる人に向けて作られていて、変なケチを付ける輩には楽しめない作品になっている。
そして、ついに本作の物語の「肝」、エスターが単独の悪役ではないことが明らかになる。
ここから観客は、前作の「サイコパスなエスター」に恐怖する映画から、「奇妙な偽家族」を楽しむ映画にシフトしていく。
コミカルなシーンも多くて、ホラー味は薄め。
エスターが唯一の悪ではなくなったことで、むしろ最後はエスターの応援をしている自分がいる。
あえて音楽も「ハズシ」てくる辺りも気持ちがいい。
後半、かなり雑にクライマックスに向けて話が進むけど、ここまで楽しんだ方は、おそらく今さらケチを付けることはないだろう。
もうボクたちは、火事で家が焼け、家族を失い、養子縁組のために施設にひきとられて、前作「エスター」に繋がる物語を待ち受けるのみ。
もちろん、ラストは火の海の中を優雅に歩くエスター。
リアリティなんて糞食らえ。
ああ、エスター。
また会おう。