「見かけで判断せず、本質を見なければ」金の国 水の国 ゆり。さんの映画レビュー(感想・評価)
見かけで判断せず、本質を見なければ
昔むかし、諍いばかり起こしている二つの国があったとさ。
設定が予想と少しだけ違いましたが、おとぎ話のようでとても癒されました。小さい子よりは中学生から大人向けかと思います。
アニメの完成度にこだわる方にはお勧めしませんが、絵は素朴であったかい感じです。人物は所々思いっきり手抜き感があって笑えますが、原作マンガもそうなのかもしれません。背景は「かがみの孤城」より質感もスケール感もあります。猫が「すずめの戸締り」より可愛いです。
内容には少し物足りない所もありますが、意外と色んなテーマが入っていて良いのではないでしょうか。
声優はとても良かったです。痩せている浜辺美波さんが太った女性の役!?と思いましたが、おっとりした優しいサーラになりきっていました。
賀来賢人さんは知的で温かくて腕っぷしが弱そうな感じが良く出ていました。賀来さんの甘すぎない、軽やかな「お嬢さん」の言い方が好き。少女マンガ的には、クライマックスで熱く「サーラ!」と叫んで欲しかったですが、結婚しても歳を重ねても愛称としてあんな風に「お嬢さん」と呼ばれたらそれはそれで嬉しいかもしれない(妄想❤)
猫と犬の鳴き声は、一人の声優さんが担当したそうです。さすがプロ。
トルコとシリアの地震のニュースが連日放送されています。トルコの映像で、母親が娘の遺体にすがって、「なぜ目を開けてくれないの、サーラ!」と悲しみに暮れていました。金の国は、トルコをイメージしたんです。私はずるい人間なので、本作を観ていた時は、サーラの「いつでも難しい方の道を選んで下さい」のセリフに、いつでもはちょっと厳しい、などと思いました。せめて、「たとえ難しいとしても良いと思う方を選んでね」にしてくれないかな、などと。
でも今はサーラのセリフが沁みます。地震で一瞬で崩れた多くのビルの隣に、損傷を受けていないビル。耐震基準をきちんと守って建てていれば失われなかった命。手抜き工事と、それを見逃した政治の代償を罪のない人々が払うなんて悲しすぎます。日本も手っ取り早く武器を買うより国際貢献にもっと力を注いで信頼を得て欲しいです。