「ドバイとモンゴル?地盤沈下は大丈夫?」金の国 水の国 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ドバイとモンゴル?地盤沈下は大丈夫?
たまたま観た作品がすごくほっこりして良かった。
子供と一緒に見て、シリアス過ぎずに外交の視点を考えてみるのにとても良い作品。
ジブリより、ファンタジー過ぎず、中東地域の街並みや模様の絵もとても好きだった。
観ながら、心がざわついたりせず、優しさをベースに、安心して見られる。
知識があり頭の回転が早くて優しくて背が高くて男気がある男性と、男性が生物学的に安心する女性の象徴のような、色白で優しく言い返さないほんわか笑顔の、包容力の塊を具現化したようなぽっちゃり女性。
ただ、いくつか引っかかる点もある。
隣り合っているのに、かたや水がわんさか湧いていて、かたや水不足に陥る地形ってどんな?
砂漠に水を引いたら粘土質になり、地盤沈下でえらいことになるのは目に見えている。土でできた煉瓦だけで水の浸透を防げるの?
国境の壁部分は治水でどうなるの?
ダム化して沈む家が出るのでは?
砂漠側の金の国には、陸続きの国がないのか?
1番美しい娘と1番賢い青年をそれぞれ相手国に贈るはずが、豊かな国側が1番賢い青年を貰っただけになっている。金の国側は治水もされるが、水の国は相手国女性に絆された青年により水を持ってかれ、インフラや経済援助が相当ないと、ただ裏切られただけとなってしまうのでは?
優しさを理解し思いやりが通じる価値観どうしだから成立する関係性で、ナランバヤルとサーラはある意味奇跡的な出会い。
全く異なる経済観念で育ち、仕事や食べ物にも困る生活をしてきて頭が良くても、小賢しく自国優先に考えないナランバヤル。
豊かに第93王女としてそこそこ自由もあって育ち、不自由してきていないが、自分の頭と手足と心を使う習慣があるサーラ。
2人の相性がたまたまとても良かったから、良かったねと。
でも、ピリパッパ以外全員が、戦争など全く望んでいないが、資源のためにせざるを得ないから仕掛けてする。そういう縮図が子供でもわかるように描かれている。
ただ、戦争で失うものは、美しい街並みではなく、「命」「家族」「大切な人や物」全てである。
王族の派閥も治められない王様が決めかかった戦争に国民が巻き込まれるなど、なんて国だ。
ドバイのような国にモンゴルのような国から人が来たら、どう思うのかな?
同い年同士でも、相当違いを感じるはずで、それでも心は通い合い、友人や恋人にはなれるだろうが、それを国交にまでいかすのはとても難しいだろう。
ましてや敵対国では。宗教から違うと仕草から何から、お互いが不快にならないラインをクリアするのは超難関なはず。
サーラが王族と一般人の間の立ち位置だから成立するお話。サーラが美人で自信持って育ちプライドが高ければ、敵国との酒の酌み交わしなどしないだろう。
もっと言うと、ばあやがナランバヤルを王族にお目見えできる身なりに整え、胃袋を掴んでくれたから成立する話。
ナランバヤルとムーンライト大臣が小賢しくないから成立した話。
ナランバヤルの国の族長がイケメン好きで、美女でなくてもまぁいいか、約束を破られてもまぁ良いかとなったから成立した話。
ドバイとモンゴルのような設定だが、日本的道徳観念がベースにある国同士だから成り立つ、フィクションに過ぎない。と綺麗事に思えてしまった己の汚れた感性がショックだった。私の感性を汚したのは、間違いなく同じ人類がした戦争経験ゆえ。
善意ベースで進む国交を、ありえないと思わせる現実の世界情勢が、いかに平和から程遠いか。
実際、終戦が50年前では、相手国に親兄弟友人を殺されたと恨みを持つ者がまだまだ存命でそうやすやすと国交回復できないのでは?
敵国と隣り合わせの場合、国交の緊張感たるやすごいこと、38度線を挟んだ韓国と北朝鮮で知っている人も多いだろう。同じ民族同士でもそうである。
サーラのような立場が散歩感覚でパスポートもなしに穴に潜るような場所ではない。
あんな簡単に国境を越えられたら、亡命して金の国に入り込んで仕事を見つけている移民者、実は沢山いるのでは?
とても好きな作品となったが、あくまで綺麗によく作られたお話、ということも同時に突きつけられた作品。