「二つの国の交流の始まりを描いたファンタジック大河ラブロマンス叙事詩です。優しさに溢れた世界が続きますように。」金の国 水の国 もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
二つの国の交流の始まりを描いたファンタジック大河ラブロマンス叙事詩です。優しさに溢れた世界が続きますように。
遠い昔より争いの絶えなかった二つの国。
交易で栄える「金の国」 アルハミト。
自然の豊かな「水の国」 バイカリ。
二つの国を神が仲裁し、証に相手に花嫁・花婿を贈ることに。
金の国から水の国には美しい花嫁を。
水の国から金の国には賢い花婿を。
花嫁を迎えることになったのは水の国の建築士 ナランバヤル。
花婿を迎えることになったのは金の国の第93王女 サーラ。
二人とも、それぞれの都から遠く離れた
国境の近くで暮らしている。
この二人が物語の主人公。 …なのだが
花婿花嫁を迎えたはずの二人の元にやってきたのは
なんと犬と猫。
犬の花婿が来てしまったサーラ。
姉(王女)たちから婿に会わせろと言われ …困る。 それはそうだ。
その犬が国境の壁をくぐり、逃げ出してしまう。
逃げた先は、水の国。
山芋を掘った穴に犬が落ちて困っていたところ
助けてくれたのがナランバヤル。
”この人は、聞いていたような人とは違う”
水の国のオトコは、乱暴で粗野な人達 -そんな風に聞いていた。
けれど この人は、違っているみたい。 ならば…
彼に頼み、水の国からきた花婿を演じてもらうことに。
猫の花嫁が来てしまったナランバヤル。
来てしまったネコに 「オドンチメグ(星の輝き)」と名付け
家族同様に可愛がってきた。
国境の近くで困っている娘を助けたところ
お婿さんのフリをして欲しいと頼まれる。
”困っているみたいだし”
このナランバヤル、水の国では建築士。
仕事が無いが、実は頭も良い。 …らしい。
サーラと共に金の国の都にやってくる。
技術の進んだ「金の国」。 だが
ナランバヤルは気付いてしまう。
都の繁栄を支えているのは、水の力。
その水が無くなりつつあり、今の繁栄は遠くない未来に
終焉を迎えてしまうことに。
水の国には「水」がある。
金の国には「様々なモノ」がある。
技術者として、花婿役を引き受けたものとして、
水の国と金の国に水路を作り、その水路で交易も行えば
両国の未来は明るいものになる。
そう考えたナランバヤル
花婿役を終えた後も金の国に残り
壮大な計画の実現に取り組み始めるのだが…。
と、まあ
芯のしっかりとしたストーリーで、見応えあります。
それに加え
たまたま出会った王女と建築士の
それぞれが相手に寄せる好意が少しずつ
積み重なっていく様子が微笑ましくて
応援せずにはいられなくなりました。
月の夜、橋の上での抱擁など
映像的に綺麗な場面も印象的で、観ていて癒されました。 ほっ
そして大団円のエンディング。
エンドテロップで描かれたのは、きっと10年くらい先の姿。
うん 良い感じ。
ストーリー全体を通して、優しさに溢れた良作です。
観て良かった。満足。
◇印象に残ったシーン
主人公の二人、図らずも互いの家で
「婿」そして「嫁」を演じることになるのですが
サーラとナランバヤルには実は違いがありました。
小さいようで、実は大きな違い。
ナランバヤルは、サーラに婿がいないと知っています。
サーラは、ナランバヤルに妻がいると思い込んでしまいます。
彼へのほのかな想いが膨らむに連れ
”ちくり” と心にトゲが刺さる場面が増えていく…
ナランバヤルの嫁が 「ネコ(オドンチメグ」 と知った時の
サーラの顔の輝きといったら もう。
観ているこっちも嬉しくなりました。 良かったね。
◇ 印象に残ったセリフ
「迷った時は難しい道を選んで」
一度、仕事を優先し夜の道をサーラ一人で
帰らせてしまったナランバヤル。
ためらうナランバヤルに、サーラはそう言った。
二つの国を流れる水路を造ること。
そして国の間で交流が再開すること。
それが「難しい道」と思ったから
ナランバヤルはそう決めて、サーラの手を離した。
しかし…
最後の場面、姉の元へ二人で向かう途中。
カラクリ仕掛けの木の通路の上で
王様も乗ってしまい、今にも崩れそうに。
「一人で行って」
今度もそう言うサーラなのだが…
「君の手は もう離さない」
「落ちる時には 一緒に」
欲しいものは欲しい。
欲張りで何が悪い。
--何も失いたくない
それが一番難しい道。
そう決めたナランバヤルに拍手。
◇余談(だそく)
そう遠くない未来に水が無くなり、国が滅びてしまう
そうなる前に資源の豊富な他の土地を侵略し、移住する。
…って
デスラー総統ですか (宇宙戦艦ヤマト)
なんてコトを 少しだけ思ったり。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。