「変わる日本の姿」世界は僕らに気づかない 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
変わる日本の姿
芸能事務所レプロエンタテインメントが主体となって、こういう社会派的的とも言える映画を製作していることに驚いた。群馬県を舞台にフィリピン人の母親とそのゲイの息子の葛藤を描く本作は、日本の今を活写している点で非常に貴重な作品だ。舞台となる群馬県太田市が外国人労働者が多いことで知られる。工場労働者の多くが外国人で、この映画の主人公の母親のようにスナックで働くフィリピン人女性も多数いる町らしい。主人公は日本で生まれ育ち、父親は日本人らしいが会ったことがない。フィリピン人のカルチャーと日本人のカルチャーの狭間で自分は何者かと悩む主人公のリアルな実像を見事に捉えている。
ジェンダーとカルチャー、経済など様々なマイノリティの問題が交錯する本作だが、すでに日本でも多くの人がそういう現実を生きている。本作はそれらを特別視することなく、当然のようにそこにあるものとして見せることに徹している。この作品は、日本社会の一側面を確かに捉えている作品だ。役所広司主演の『ファミリア』と合わせて観るといいかもしれない。
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