「アキラ君のお陰で行き詰まった男女のうんたらかんたらから救われたが、『そこのみにて光輝く』には遠く及ばず。」夜、鳥たちが啼く もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
アキラ君のお陰で行き詰まった男女のうんたらかんたらから救われたが、『そこのみにて光輝く』には遠く及ばず。
①アキラ君と慎一とが公園で“だるまさんがこーろんだ”をしていると他の子供達も加わって来たところで客席から初めて笑いが起こり、その後は映画館内の空気が和んだように感じた。多分皆さん、其まではこの映画にどう反応したら良いのか迷っていたんだと思う。私もそうだったけど。
②猫じゃあるまいし、鳥も発情するの?と思ったらちゃんと発情するとの事。勉強不足でした。ただ、フクロウとか夜行性の鳥ならともかく、鳥目というくらいだから普通の鳥は夜は眠って啼かないんじゃないの?とは思いますが、夜眠れないくらい発情するのかしら?それとも夜独り寝が出来なくなったヒロインや、夜に悶々と小説書いてる(打っている)主人公の姿をシンボライズしているのか。
鳥が発情する時に声を上げて啼くということ、“窓が開いていたので、声が外に聞こえなかったかしら?”とのヒロインの台詞かシンクロしているし。
③どうでも良いっちゃどうでも良い話なんだけど、そこを見ごたえのある、或いは魅せられる、そこまでいかなくても何かを感じさせたり考えさせる映画にするのが監督であり演者の腕の見せ所。そういう意味では主演の二人には荷が重かったかも知れない。
④演出も乱調とまでは行かなくても焦点がぼやけ気味だが、主役二人の演技もアキラ君を挟んで疑似家族(設定からしてそうなるだろうとは予想できたが)みたいになる終盤は悪くないが、其れまでが喰い足りない。
⑤もう少し演出が巧みで演技巧者であれば、人生の先に希望が見えなくて悶々としている主役たちの行き場のない思い、やるせなさ、虚しさ、鬱屈、刹那のセックスに救いを求める切なさ等をもっと情感豊かに描けたと思う。二人のその先に仄かに見えてきた希望の様なものは何とか描けかけていると思うが、その前の描写がギクシャクしているので落差が大きい。
⑥こう書いてくると、先が目えない現実に絶望し鬱々した日常を送りつつも前途に仄かに希望が見える『そこのみにて光輝く』と通底するテーマを感じる。佐藤泰志の小説世界に共通するテーマなのかもしれない(本を買うのは惜しまないのでアマゾンで佐藤泰志を四冊衝動買いしました、また悪い癖)。そういう意味でも、映画として『そこにて光輝く』に及ばなかったのが残念。
⑦この監督、ピンク映画からの叩き上げなんですってね。道理でセックスシーンがエロチック。(私は、発情するよりアキラ君が覗いていないか、こちらの方に勝手にドキドキしていましたが)。