「制作側の観客目線の無さを感じてしまった」劇場版モノノ怪 唐傘 KTさんの映画レビュー(感想・評価)
制作側の観客目線の無さを感じてしまった
旧モノノ怪が大好きで何回も見ました。
今回もすごく楽しみにしていましたが、個人的にはものすごくがっかりな作品になっていました。
高く評価している人が多いのが不思議です。
観終わってすぐの感想が「制作側の自己満足雰囲気映像集」でした。
こういうシーンやりたい!の詰め合わせです。
元祖モノノ怪は独特な演出にも関わらず話はわかりやすく、登場人物の感情も理解しやすく、ミステリーものとしても毎回きちんと解決していて楽しめました。
今回の唐傘は、無駄に登場人物を出す割に各役割があいまい、メインキャラクター2人含む登場人物全ての感情と存在感が薄っぺらく電波感があって誰一人として感情移入できるキャラクターがいませんでした。
登場人物がしょっちゅう「ああ、そうだったのね、そういうことだったのね」みたいな反応連発しますが、詳細は描かれないのでえ?何が?状態です。
ストーリーも全編ほぼ意味不明。
ふんわりわからなくはないんだけど、納得いかずもやもやする感じです。
全部をオブラートに包んでわざと意味不明にして高尚アーティスト気分に浸ってるような印象です。
お客さんに考えさせる考察系みたいなこと言いながら、無駄で不必要な要素をふんだんに盛り込んで観る人にストーリーを伝えることを放棄して混乱させているだけに感じました。
過去作ならすっきりと「形」「真」「理」が最後にはわかるようになっていましたが、今回はほとんど納得できませんでした。
怪異が起きた理由も弱すぎる上に急に現れた新キャラが原因とか推理ものとしてもどうかと思いました。
とにかく全てが「雰囲気」だけで進んで行きます。
最後に薬売りさんが解決後に「しかし形がわからぬ」みたいなことを言ってた気がするのですが(話を理解しようと必死だったのでうろ覚えで違ってたらすみません)、形がわからないのになぜ退魔の剣が抜けたのかも意味不明でした。
映像はきれいだけど、それだけという印象です。
なんだったら引き算がなさすぎてやりすぎ感がすごい...
登場人物の演技もポップな今時チープアニメ風になりすぎて、モノノ怪の独特な良い雰囲気は消し飛んでました。
外国人や今時のタイパを気にする人が観ることを意識してなのか知りませんが、日本文化らしい間が無くなり、台詞の早口具合はYouTubeでどうでもいい動画を倍速で流し見している時の感覚に近く感じました。
期待していたアクションシーンも過去作の方が良かったように思います。
というより、目新しいことなく同じようなアクションシーンのリメイクといった感じを受けました。
過去作が好きすぎてつい辛口になってしまいましたが「何回も観てやっと理解できる、何回も観ないと理解できない」を狙って作られた映画は私は駄作だと思っています。
伝える能力がないとしか。
考察系というジャンルは嫌いじゃないですが、これは全部が全部を意味不明にしすぎです。
次回作もこんな感じなら観ないかな...