「個人的には良かった」劇場版モノノ怪 唐傘 ささやまさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的には良かった
公開初日から観てきました。
モノノ怪は一番最初の化猫からテレビシリーズまで全て見てきた思い入れのある作品です。
だから今回の映画化は素直に嬉しく思いましたし、これを機にまた新たなモノノ怪が見れるようになっていったら良いなと思っています。
さて、実際のレビューに関してですが他の方のも読ませていただき評価が真っ二つに分かれているのを感じました。
その中でも私は良作だと感じた側です。
確かに今作は観客の解釈に任せすぎている節はあります。
恐らく、考察しつつ観ることに慣れていない人達が見ると………で、結局なんだったの?となってしまうかもしれませんね。
昔のモノノ怪も考察しないと分からない回はあったので、この辺りは個人的には気にならなかったですね。
もっと大奥特有のドロドロが欲しいって意見もありましたけど、OVAではなく大衆向けに描いた作品なので私は今回くらいの描写が丁度良いと思いましたよ。色んな年代の方が見に来るわけですしね。多分この辺りの意見は過去作品の化猫とかその辺りと比較してどうしてもそういう意見になってしまうのかなという印象。
ストーリーについては他の方が書いているので割愛しますが、
カメにイラつくという意見がちらほら見ましたね。
私もイラつきました笑
でも彼女は大奥の女性、そしてアサとの比較のためにあえて最後まで彼女は彼女のままで描写されたのだと思います。
カメは物語序盤から潔く大切なものを捨てるんですよね。
でも観賞後感じたのは、誰よりも何も捨てていないのはカメだったんだろうな。と。
男であれ女であれ社会に生きていくためには純粋さ子供らしさを捨てて、社会の中で必死に生きていかなくてはならない。
子供のままではいられないわけですね。
でもカメは頑なに捨てなかった。
だからこそ大奥という社会から最後は出ていくことになった。
(ここら辺もったいないというか、もっとこの子を生かしたストーリー作りでも良かったんじゃないかと思うわけですが)
多分アサを主軸に描きたかったのか、カメはイラつくキャラクターという印象で終わってしまいましたね。
彼女は今でいう発達障害とか、そういう子なのかもしれない。顔は良いけど仕事はできない。仕事ができないから罵倒される。自分にだって何かできるって証明したいのに……こんな葛藤がカメにもあったのかもしれないと思うと少しだけ切ない気持ちになりました。
反対にアサは聡明で仕事が出来て頭が良い。すぐに仕事も任されて位が上に上がっていく。それを見た周囲の嫉妬、妬み、恨み……この辺りを丁寧にもっと描くとドロドロをわざわざ描かなくてももうちょい胸に響くものが出来たかもしれないですね。
映像や絵に関しては個人的には良かったです。
薬売りさんは相変わらず美しくて、後半で動き回る姿は目を離せなくなりました。
気になったのはカットというか、切り替えが早すぎて
ん、今の何?みたいなシーンが多かったことですね。良く見ていても切り替えが早すぎて分かりづらかったのでもう少しおさえめにしてくれたら嬉しかったです。
お水様って何?あと金髪の人と双子の子達の謎が一切明かされなかったのがもやついたのですが、ラストで次回に続くとなったので良かったです。
また薬売りさんが見たいので無理やり詰め込むのではなく、分けてくれた方が私は良いと感じました。
最後に、
今回の映画は小説版を読むことでより理解が深まる作品であるようです。
観たあとに小説を買って読みましたが、こちらの方がより丁寧にキャラクター達の心情が描かれています。
映画観てより深く知りたい方は小説を読むと良いかもしれないです。
文章も読みやすくておすすめです。
あと、なぜ唐傘だったのかという意見がありましたが。
あくまで個人的解釈になってしまいますが、
唐傘自体が妖怪としての伝承があまり残っておらず、絵として描写はされているけどどんな妖怪だったのかは実態があまり良く分かっていないようです。
なので題材的に選びやすかったのかなというメタ的な意味と、
あとは、傘を差すというのは愛情を示す行為として示されることがあったようですが、
大切なものを手放してしまった者達へ、唐傘は現れて彼女達の悲しみのという情念の雨に傘を差してあげたかったのかなと思いました。
人間に対して哀れみという愛情を感じてくれたのかもしれないと。
モノノ怪は恐ろしいものもいますが、それだけじゃないのが魅力的なところで、私はテレビシリーズののっぺらぼうという話が大好きです。
あの話のラストで、薬売りさんがのっぺらぼうがお蝶さん(この話のメインキャラ)に恋していたんでしょうって言葉をかけていたのが印象に残っています。
今回の話も大奥の女性達の情念に唐傘が慰めの傘を差してくれたのかなと思いました(あくまで妄想です)
以上長々すみませんでした。
次回作も楽しみに待っています。
追記
同時購入したパンフレットを読んだのですが、
今回のモノノ怪は監督さん的に表現したかったことがあったようです。
それを表現するためにあえてキャラクターをいっそ不要なくらいたくさん出していたのかなという印象を受けました(興味がわいたらパンフレット買ってみてください。神谷さんのアテレコ中の苦労話とか、悠木さんと黒沢さんのインタビューとか個人的に面白かったです)
ただ難しいのが監督のやりたかったことと、視聴者側(特に歴代のファンの皆さん)の観たいモノノの怪に齟齬があったことでしょうかね。
ファンからしたら昔のモノノ怪がやっぱり観たいし、監督の表現したいことなんて正直どうでも良いというかモノノ怪でやらないでくれというのが本音になってしまう気がします。
ただ、他作品で原作無視して監督がやりたい放題した映画もありますしそれと比べればまだ今回のモノノ怪はマシという感じです。
タイトル通り私個人は今回のモノノ怪は良かったと思いましたし、また機会があれば観てみたいですしね。
最後に、
パンフレットに書いてあったのですが今回の薬売りさんはちょっとだけ人間よりというか、優しい薬売りさんだそうです笑
以前の薬売りさんはどちらかというと周囲の状況を把握しきってから行動するタイプの薬売りさんでしたが、今回の薬売りさんはモノノ怪に人が襲われそうになっていると危険な状況でも助けにいくタイプの薬売りさんだそうです。
確かに今回の薬売りさんは優しいという言葉が不思議と違和感なく入ってきました。声優の神谷さんにもそういう風に演技するように指示があったようなので、なんとなく映画版薬売りさんは以前みたいに人を茶化すシーンもあるけど内面は真面目というか優しい印象を受けますね。
映画観たあとに、久々にテレビシリーズのモノノ怪が見たくなって視聴しましたが、こっちの薬売りさんの毒舌具合を再認識しました笑
テレビシリーズの薬売りさんは薬売りさんで、人間が愚かでどうしようもない生き物だって理解していて、若干お説教も兼ねて厳しくしているけど不意に優しさを滲ませる時もあるというイメージですかね(超個人的な解釈です)
もしモノノ怪ファンの方で、薬売りさんの声優変更とかで視聴迷っている方、もし良ければ参考にしてください。
性格も上記したように別の薬売りさんなので若干違う印象を受けますが、違和感があるというほどでもないのでそこまで気にしなくても大丈夫かなと思います。