「自戒する美食家」ザ・メニュー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
自戒する美食家
作りはしっかりしてるけど意図がわからん。
何だこれは?
富裕層への当てつけなのか?
贅の限りを尽くし「食」を貪る傲慢な人々への中傷なのだろうか?食糧難に苦しむ国は多いが、その一方では食事を芸術と宣う人々もいる。
その彼らが満足する1食を提供する為には、莫大なコストと無駄が発生する。利己的な行為の最たるものでもあるというのだろうか?よく分からない。
どうやら招待客は事前に死を通達されてはいるみたいで、それを承知の上で参加もしているみたいだ。なのだが男性は逃げ出して女性は食卓を囲む。最後の晩餐に疑問はないようにも思う。
男性達は結局は捕まるのだけれど。
コレを企てた料理長も最後には自殺する。客達はそれに巻き込まれて死ぬ。なぜ抵抗しないのか?同調圧力でも洗脳でもないように思う。客達が何故にシェフと共に死を選択したのかが良く分からない。
逃げ出す事も闘う事もしない。
諦めているわけでもない。
抵抗感を隠そうともせず泣き喚いて死んでいく。
無力だ。ただただ無力だから死ぬ。
…この描写が語るものが核心なのだろうか?
それとも、その芸術を作り上げる為に殺され、搾取される命への懺悔なのか。
地球上に君臨し、限りある資源を無尽蔵に食らい尽くす人類への戒めなのだろうか?
チーズバーガーを食べたヒロインは助かる。
ああだこうだとウンチクを語りながら、食事本来の目的である栄養摂取以外を求める輩は、軒並み死ぬ。美食家達に天才と持て囃され、積極的に他の命を殺害していたシェフの自殺に巻き込まれる。
やっぱこっちが主題なんだろうか?
コースの途中で評論家ではないにしろ、やたら料理に詳しい素人が料理を作らされる。衆人環視の元で料理するんだけれど、アレは料理人達が置かれている状況の比喩にもみえる。
勿論、美味いわけがない。口は立つけど腕は立たないから当たり前だ。で、彼は自殺する。
シェフから何を耳打ちされたかはわからないけれど、たかだか料理の出来で命を断つ。
…等価交換だとでもいいたいのかしら?それとも本来の目的を逸脱してるものにも関わらず死に追い込まれる事の愚かさなのだろうか?
食事は美味いに越した事はないが、美味すぎるものは要らないと思ってる。
なぜなら、どんな高価なものを食べてもまた腹が減るからだ。1000円の定食を食べようが、5万円のコースを食べようが6時間も経てば腹が減る。
空腹を満たして命を維持する。その為のコストは大枚をはたかなくても可能ではある。
そんな事を考えてるから、この作品の意図を理解出来ずにいるのだろうか?
まぁ、そんな事言ったら映画なぞ無くても生きてはいけるだろうって話にもなるんだけどさ。
冒頭から流れる不穏な空気感は良かったなぁ。