「笑ってはいけない孤島レストラン24時」ザ・メニュー Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
笑ってはいけない孤島レストラン24時
★ 長文レビュー失礼 ★
ツッコミ所が多すぎて、シュール系コメディみたい。ただコメディとするにはシリアスに寄り過ぎているし、かと言って真面目な?ホラーやミステリーと言うには、演出、伏線、人物描写などなど、色々と足りないものが多く、どっちつかずで中途半端。
気難しそうなシェフやスタッフの様子が段々とおかしくなって行くシチュエーションは今後の不穏な展開を期待させるが、様子がおかしくなるのが早過ぎて、起こっている事の虚実を疑う暇が無い。もっと料理に各人の罪を思い出させるような意匠が込められていて、それに気づくのは罪を知る本人だけ、と言ったじわじわとした恐怖演出とかを期待していたのに残念。
また、何であのシェフに他の従業員が狂信者のように従っているのかとか、招待客たちの選別基準は何か等、招待客とシェフたちの関係性や背景事情がほとんど語られないので、こんな事をする動機がはっきりしない。グルメ気取りの評論家とか不正会計?してる出資者を恨むのは百歩譲って分かるとしても殺すほどの事か?映画の俳優に至っては完全にいちゃもんレベルで、監督を恨まずに俳優を恨むのも「顔がムカツクから」くらいの理由(笑)。シェフの母親も意味ありげな割りには何のためにいるのか不明。
しかしそんな客の中でも最も存在理由が分からなかったのが、主人公的な立ち位置だったはずのタイラー。このシェフに心酔している事が窺えるが、客の指が切り落とされたり、人が拳銃自殺するような異常事態なのに、とにかく料理を食う事が最優先になっている様は狂気的でなかなか良いキャラだったのに、シェフに何か囁かれて素直に自殺して退場(笑)。何だったんだ。
そもそもあんな理不尽な目に遭わなければならないような客は一人もいないはずなのに、客たちがほとんど何の抵抗もせずに言いなりになってるのも意味不明(笑)。人数的にはやや不利でも、包丁など武器になるモノがたくさんあるのに、最後の最後まで無抵抗なのは何なの?人質を取られているから逆らえない、みたいな状況でもないし。最終的に全員を巻き込んで集団自殺するような理由が何も分からないので料理がテーマなのに消化不良感が凄い。
主人公の女も最後は「食べきれないからチーズバーガーを持ち帰らせろ」と言う、一休さん並みのトンチで脱出成功(笑)。いや、そんな事で逃がして良いのかよ。まさかと思ったけど、本当にそのまま無事逃げおおせて終了。ラストの爆発オチまで「笑ってはいけない」感があって最後に笑ってしまった。タイキック~。