「料理人の脆さ、繊細さをエンターテイメント化したサスペンス。同業者は観たほうがいい。」ザ・メニュー たくろ~。さんの映画レビュー(感想・評価)
料理人の脆さ、繊細さをエンターテイメント化したサスペンス。同業者は観たほうがいい。
とても面白かったです!
自分も小さな個人店のオーナーシェフをしているのですが非常に共感というのか、楽しめました。
料理人の脆さ危うさ、繊細さみたいなものにスポットを当ててエンターテイメントに落とし込む作品て他になかった気がします。
「え?なんで死ななきゃいけなかったの?」って思ったレヴューも多いようですが、私にはナマナマしくもリアルな結末を突きつけられたようで、涙ぐんでしまいました。
料理って誰もがやる、生活に隣り合わせの行為ですよね。「たかだか料理でしょう?」とおもう方が殆どだと思いますが、料理人、それも星を取るようなトップシェフになると、その生活は大変過酷なものです。スーシェフが、料理学校をキラキラした気持ちで卒業しスローヴィクの下にやってきたというエピソードで示唆していますが、最初は皆夢と希望に溢れて料理の世界に入るんですよね。でも、過酷な仕事環境、常に研鑽を積まなければならない、かつ常にアウトプットを求められ続ける。自分の限界、才能の有無を問われ続ける。その生活は徐々に人格も変えていき、精神を壊したり、酒に溺れたり、人に暴力をふるったり…。スローヴィクがせっかくとれた休日に観た映画がつまらなかったらという理由で役者を恨んでいるエピソードとかも、迂闊にも私は共感してしまった。
冒頭で共同宿舎を見学したゲストたちが「燃え尽きないか?」って言っていたのが結末の伏線になってたのかなぁと思いました。最後死なばもろともで燃えてたしね。
スローヴィクとマーゴの演技も良かったです。スローヴィクの眼力!怒りとか哀れみとか悲しみを表してて流石でした。無表情であまり感情を表に出さない「シェフ」という役だからこそあの眼力が活きる。常に周りを監視して睨んでるよね、シェフって。
マーゴの個性的な美しさもとても魅力的で綺麗でした。どこか斜に構えて、他のゲストとも一線を引くような構え方。チーズバーガー食べてメニューで口を拭って「んんー!」って言うとことか最高。
あとはカメラワークがすごく上手いと思いました。マーゴが呼ばれてないゲストだと知らされたスローヴィクがマーゴを睨むあたりの目線とカメラの切り替えが上手かった。
わりと序盤から細かい伏線が張られていたと思うんですが。考察とか盛り上がりそうな映画でした。「食べないでください」「味わって下さい」なんかもスローヴィクの本当の目的を示唆していますよね?罪を死を味わえよ、と。
あの「男の過ち」でしたっけ?追いかけっこするシークエンス。あそこは最初よくわかんなかったのですが、女性ゲスト同士で会話してもらうのが目的だったんでしょうか?シェフがターゲットにしていたのって主に男性ゲストでその連れは完全にとばっちりメンバーだから、男の過ちで死にますよみたいなメッセージなのかなと。でも料理評論家は女性だったか。