劇場公開日 2022年11月18日

「食通ブームを冷めた目で見ている人にオススメ」ザ・メニュー 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5食通ブームを冷めた目で見ている人にオススメ

2022年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

怖い

グルメ映画には全ての人の舌を刺激し、料理にまつわる人間観察が面白い作品が多い。そこに登場した本作は、孤島のレストランに閉じ込められた食通たちが、何やら腹にイチモツありそうなカリスマシェフが料理に込めた復讐の餌食になるという、食通ブームを冷めた目で見ている人にはオススメの1作だ。

何しろ標的になるのが、その一言で料理人とレストランの運命を左右することもある料理評論家、金にモノを言わせて高級料理を貪るIT長者、料理番組のリポーターとして再起をかける落ち目の俳優、そして、料理の本質が分かっていない(恐らく)自称・食通たち。主人公のシェフが彼らに対して何を感じているかは想像に難くないし、復讐したくなる気持ちは理解できるのだ。

ブームの洗礼を受けてからやや時間が経過している我々日本人から見ると、若干既視感がある風景だが、それを吹き飛ばしてくれるのが、アニャ・テイラー=ジョイ演じる唯一何の柵もない招かれざる客のマーゴが放つ痛快な一言だ。それは、監督が実地で体験したという、大皿に泡が乗っかっているようなニュー・ノルディック・キュイジーヌに向けて放たれる。この場面で『そうそう、そうなんだよ』と心の中で叫んだのは筆者だけではないだろう。今まさにサバイバルの時代に空腹を満たしてくれるのは、気取った極小料理ではなく、腹にドカンと来るWチーズバーガー!!じゃないだろうか?

清藤秀人