「現代版「注文の多い料理店」かな」ザ・メニュー 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
現代版「注文の多い料理店」かな
数週間前に観た「アムステルダム」では、主人公ではないものの、最も印象に残る俳優だったアニャ・テイラー=ジョイに早くも再会。「アムステルダム」では相当イッちゃってる役柄だったので、本作でも同様の役回りかと思いきや、逆に唯一マトモな登場人物を演じており、その8頭身から9頭身はあろうかというスタイルの良さは勿論、毅然とした態度は非常にカッコよかったです。
物語としては、孤島に建てられた超高級レストランで繰り広げられる悲喜劇というかスプラッター映画というか、分類が難しい作品でしたが、まず頭に思い浮かんだのは宮沢賢治の小説「注文の多い料理店」でした。鼻持ちならない青年2人が山に狩猟に出かけたものの迷ってしまい、やがて山奥で西洋料理店を見つけて安堵して入店するものの、服を脱げとか金属製のものは外せなど、自分が食べられるための注文が次々に出て来て、気付いた時には店から出られなくなってしまうというのが「注文の多い料理店」でした。本作は、筋立てに多少異なる部分はあるものの、孤島と山奥という逃げ場のないロケーションや、スノビッシュな客がレストランに閉じ込められるという設定、そしてその客が殺される(食べられる)運命に晒されることなど、共通点が結構あり、制作者は宮沢賢治を読んでるに違いないと勝手に断定するに至りました(本当のところは知らんけど)。
R15指定ということもあり、直接的な暴力シーンが数々あったほか、レイフ・ファインズ演ずるシェフ・スローヴィクの理不尽な要求や、アニャ・テイラー=ジョイ演ずるマーゴを誘ってレストランに来たニコラス・ホルト演じるタイラーの不作法ぶり、無神経ぶりなど、観ていてムカつくことも多々ある上、シェフの動機も「えっ、そんなことなの?」と驚かされる部分もありましたが、逆にそれが物語全体を喜劇化しているように思え、ムカつく部分も不思議と許せてしまう、なんとも不思議な映画でした。
また冒頭にも触れたように、アニャ・テイラー=ジョイのカッコよさが際立っており、その点も合わせて評価は★4としました。