「向き合い、行動するということ」劇場版 荒野に希望の灯をともす penさんの映画レビュー(感想・評価)
向き合い、行動するということ
以前某新聞のコラムである外国のコメンテーターが、アメリカのアフガン侵攻について「アメリカは、民主主義を守るために、巨額の費用と多くの犠牲者を出して、ほとんど何も成果が得られなかったが、中村哲医師は個人として行動し、アフガニスタンの多くの人々の命を救った。アメリカ本国で戦略立案にあたっていたひとたちは、アフガニスタン現地で、いったい何がおこっていたのかについて、結局何も知らなかったのだ。」といった趣旨の印象的なコメントを寄せていた記憶があります。
この作品を見て、そのコメントの意味するところがよく理解できました。
それは、自らはクリスチャンでありながら現地の人の信仰を尊重する「多様性の尊重」だったり「すべての人に健康と福祉を」をはじめとするSDGsの17の開発目標の過半であったり、理念ではなく、現地・現場の変化に機敏に反応してひとつひとつ課題を解決するデザイン思考の「アジャイル」であったり、現在の世界の潮流を多く先取りしていることがわかりましたが、一番重要なのはそれを「身をもって自ら行動し、大きな成果に結実させた」という点にあるような気がします。
私は、現実論者なので憲法9条改憲には必ずしも反対ではありませんでしたが、この作品を見てその考えが少し揺らぎました。もし中村医師が今もご存命なら、自ら兇弾に倒れたことや今の世界や日本の状況をどのように思われるのだろうか伺ってみたい気がしますが、多分信念は揺るがないのだろう。巨大な砂漠が、美しい緑野に変わった映像を見てそう思いました。
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