「神田よ、ありがとう」神田川のふたり つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
神田よ、ありがとう
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誰かが亡くなると、何かしら考えるものだ。
故人のことを考えたり、死そのものについて考えたり、死と対になる生について考えたり。
もちろん何度も誰かの死を経験していくと故人を偲ぶくらいしかなくなっていくものであるが。
本作の主演である二人は、亡くなった神田のことを考えた。と同時に、青春らしい自分の恋愛について考えていた。
一見、全く関わりのないふたつの事柄に思えるが、神田の恋心について考えることで見事な融合を見せる。
神田の想いを伝えたいという行為は、自分の想いを伝えたいことと同じだ。
当人二人も自分で気付いていないのだろうが、神田に起因するのか自分から出るものなのか分からないけれど「想いを伝えたい」という部分で一致する。
そして、黒子であった神田の後押しにより二人の想いが成就するエンディングは良かった。
神田の存在は後ろ姿しかないけれど、二人が神田を追悼したように神田もまた二人を思いやっていたことは微笑ましい。
とても葬儀のあとの物語とは思えないほど甘酸っぺぇ作品だった。
作品冒頭、かなり長い長回しで、ちょこちょこ失敗している感じも見受けられる。
予算が潤沢なメジャー作品ではないので色々と拙いのだ。
しかしその拙さが青春という拙さとリンクしているようで、逆に微笑ましい。
どうでもいいことに見える全ての展開、映像が、二人のエンディングに収束していくエモーショナルさが良かった。
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