「何かを手放すって、すごく贅沢なこと」窓辺にて サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
何かを手放すって、すごく贅沢なこと
今泉力哉監督最新作。「愛なのに」「猫は逃げた」に次いで今年三本目。パッケージからもキャストからも、名作感漂っています。これまた結構期待値高かったんだけど、かなり喰らいました。めちゃくちゃいい映画やないか...。
「街の上で」と雰囲気はとても良く似ているのだけど、コメディ要素強めだったあの作品に対し、本作はシリアスでリアリティのある、ビターテイスト。大人の恋愛を描いているという点では、どことなく「アイネクライネ・ナハトムジーク」とも類似しているし、「ドライブ・マイ・カー」ぽさもある。143分という、恐らく監督で最も長尺となった本作。この尺を丁寧にゆっくりと贅沢に使っているのには、すごく居心地の良さを感じ、今泉節が最大限発揮されている、ファンにはたまらない映画でした。
主演の稲垣吾郎をはじめ、玉城ティナや志田未来、そして今泉組常連の若葉竜也などのキャストが、全員作品に欠かせない存在と思えるような、絶妙な演技をしていたし、役者を上手く美しく引き出す監督の力に改めて驚かされました。特に稲垣吾郎は、監督の当て書きということもあって、これ以上ない最高の表現力。玉城ティナも、目の演技力が実に素晴らしかったです。
〈言葉〉で笑わせるというよりも、〈状況〉で笑わせるのもこの監督の特徴であり、私が彼を好きでい続ける理由。「街の上で」が好きな人は絶対にハマるであろう、独特な笑い。何この状況みたいな時の役者の表情にも注目です笑 個人的には稲垣吾郎と玉城ティナが最後に合って、とあることをしながら会話を弾ませるシーンがお気に入り。なんか、めちゃくちゃシュールだなとクスクス笑えました笑
まるで小説を読んでいるかのような気分になれる文学的な作品。喫茶店や自宅、飲み屋にホテルなどの映像美、そして胸に響く数多くの名ゼリフ。この人の映画は相変わらず、日本語が美的。冒頭からグイグイと引き込まれるし、合間合間で満足感や幸福が得られる。たくさんの秀逸で書き留めたいセリフがあったのだけど、中でも響いたのがタイトルにもある言葉。持っていなかったら手放すことは出来ない。持っておいてもいいのに、手放すという選択をする。それってすごく贅沢だ。この言葉からパチンコが出てくるとは笑 色んな名言を心に留めるためにも、また見たいなと思えました。
ストーリーとしてはとてもシンプルで、普遍的なテーマ。だけど、そのありがちな内容を一変させ、上品で見応えのあるものと仕上げてくれるのが今泉監督作品。浮気をした奥さんに対して怒りを覚えない自分に対してガッカリする茂巳(稲垣吾郎)の気持ちが、徐々に納得出来てしまう。悲しめる、って実はすごいこと。愛するとはなんなのだろうかと、「愛がなんだ」「愛なのに」「猫は逃げた」などの作品で描き続けた今泉監督だけど、この映画に答えが詰まっている気がしました。個人的には、本作が監督一好きな作品です!
いつまでも語りたくなる、とてもいい映画でした。
長さを感じさせない訳では無いため、ちょっと最後まで見るのは大変だけど、是非とも劇場でご覧頂きたい。私はこういう静かな映画は結構苦手なんだけど、本作だけは違った。やっぱり、今泉力哉監督が大好きだ。そして、映画が大好きだ。超オススメです。
> 「街の上で」と雰囲気が似ている
このくだり、全く同感です!
俺も大好きです。今泉監督。いつも温かい気持ちにさせてもらってます!
今回は、純文学だったので、自分には若干、敷居が高かったのですが、それでも楽しかった!!
今晩は。
コメント有難うございます。
今泉力哉監督作品は、欠かさず観ています。
今作は、特に本を介した登場人物の会話劇に魅入られましたね。
私は、オリジナル脚本で勝負する監督が好きですが(洋画はほぼオリジナル脚本ですね。分業制ではありますが・・。”ブラックリスト制度”があり、選択権の争奪さと言ったら・・。)
今作は、今泉監督の読書愛を感じる作品でもあり、且つ品性高き映画だと思いましたね。では。