「苦しくて重い現実」遠いところ ヨークさんの映画レビュー(感想・評価)
苦しくて重い現実
日本で最も貧困で、若者の出産率は高く、それでいて仕事は無い沖縄。
オーシャンブルーの海や賑やかな国際通りに行く観光客は悲惨な沖縄の実状なんて見たくもない。
そんな見たくもない現実を描いているのがこの映画。
若いうちに子供産んで離婚して、それで生活が苦しいのは当たり前だろう自業自得だろうと自己責任論で終わらせるのは容易いけれど、そんな世界にしたのはみんなの無関心ではないか。そんなことを考えさせられる。
誰も頼りにできないで、17歳で子供を育てながら働く少女の人生。
周りにいる近しい人たちも同様に行き詰まっている者ばかり。
次第に身を崩していく姿はある意味で典型的とも言えるかもしれない。でも、こういう人がたくさんいるのが沖縄。ドラマティックな奇跡も起きないし、映画全体を覆う陰鬱さは気持ちを重くさせる。徹底してリアルな実情を描いているのだと思う。
それはロケーションでも同じで、コザや松山など、劇中の人たちが実際にいそうな場所ばかりで生々しさが伝わる。
何より驚いたのが、主演の花瀬琴音が沖縄出身でないということ…!
観ながら「ああ、沖縄出身の若手俳優さんなんだろうな」と思うほど方言や動作が現地の人みたいだった。
内地に住んでいて、観光に行くだけの人たちにとって、この現実はやっぱり"遠いところ"なのかもしれない。
でも劇中の彼女たちはそこからなんとか這いあがろうともがいていた。
ニライカナイと呼ばれる海を見ながら、ぼんやりと呟いたセリフが忘れられない。
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