劇場公開日 2022年9月30日

「谷口恒平さんの脚本と白石晃士監督のモキュメンタリー技が光る!SM青春にまさかの泣き!」愛してる! たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5谷口恒平さんの脚本と白石晃士監督のモキュメンタリー技が光る!SM青春にまさかの泣き!

2022年9月27日
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鑑賞方法:試写会

笑える

興奮

萌える

R-18+にα付けてもいいくらいエロい。のに何故か笑って泣ける…。期待値以上のSM×青春モキュメンタリーに仕上がっていて、心がイキそうです…。笑

白石晃士監督といえば、やはりドキュメンタリータッチのPOVな作風。今作も元プロレスラーの彼女を追うところから始まる。SMのイロハを取材カメラを通じて一緒に勉強しつつ、打ち出している青春にぶつかっていく。アイドルとの二足のわらじ、衝撃的すぎるギミックに驚きながらも観ていく。たまたま劇場でかかるだけでピンクそのものな気がするが、それを上回るドラマを乗せてくるのがロマンポルノ、ということだろう。その世界観に縛られ、驚き、泣いてしまった…。なんだかもう、美しく見えて仕方がない。抑圧からの開放を劇的に描く様は圧巻。最後の最後までドキドキが止まらず、今も胸キュン映画を観たような高鳴りを感じている。

といってもSMはSM。容赦なし。色んなタイプのいじめられ方があるのだと感じつつ、奴隷として支配される快感が伝わってくる。それを決して尖りなく、そういうモノだと割り切って優しく届けてくれる。実際、私の大好きな脚本家、谷口恒平さんが描いているのも実は楽しみにしていたことの1つ。ドラマ「初情事まであと1時間」では、エロスが立ちすぎないさじ加減と恋のくすぐったさを表現。そんな彼が描く関係性の変化は、優しくて凄く心地良い。それを白石晃士監督によって上手くモキュメンタリーに落とし込まれ、衝撃的な展開に誘いつつ、しっかりと落としていくから凄い。

主演は川瀬知佐子さん。レスラーに見えるドシッとした体と柔い雰囲気、感じている姿に漂う色気が素晴らしい。体力のいる現場だと思わせるシーンの数々はしびれる。女王様のカノン様は鳥之海凪紗さん。この作品よりかなり前にTwitterをフォローしてもらっており、その存在を知っていたので驚き。可憐で何処か冷徹な姿と容赦ない姿に慄きつつも息を呑む。凄く不思議なオーラがいいベクトルで振り切られている。ホントに凄いシーンばかりで心が揺れる。

今の時代、オープンにすることも何処か内に秘められている様な時代。かつての勢いまでとは行かないが、作り手がポルノの枠組みの中で表現に熱狂していた時代の凄さを思い知る。そう、単純な濡れ場ばかりでなく、全体で語れるモノが届くと知っているから。このスコアもきっと、観れば分かる人もいるはずだ。こんな青春でもいい、愛してる!

たいよーさん。