1640日の家族のレビュー・感想・評価
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どちらも本当の家族
6歳のシモンが、実の父親の希望により、4年半育ててもらった里親の家を離れる話。
物語の大きな流れはそれだけだが、アンナとシモンを中心とした里親家族それぞれの細やかな心情描写に静かに引き込まれる。
フランスでは里親は国家資格で、給与も年次有給休暇もあるれっきとした職業だそうだ。とはいっても里親アンナの一家、その役割が仕事かどうかなど超越していい家族すぎる。愛情たっぷりのお母さん、子供と遊ぶのが上手なお父さん、シモンと同年代の明るい兄弟。季節ごとのイベントや誕生日会も手を尽くして盛り上げる。言いたいことを言える間柄だから喧嘩もあるけど引きずらない。そりゃシモンじゃなくても、ずっとあの家族の中で暮らしたいと思うだろう。
血の繋がりのない子供にあんなに愛情を注げるのは里親としてとてもよいことのように思えるのに、シモンが実の父親のもとに戻る時が近づくにつれ、深い愛情が仇となる場面が増えてゆく。それがとても苦しく、切なかった。
シモンの実の父親であるエディも、決して悪い人間ではない。
アンナ一家と比べると、子供を引き取る親としては不完全かもしれない。でもシモンが生まれてすぐ妻を亡くし、悲しみを抱えて必死に生きながら、何とか息子との生活を取り戻そうとしている彼に、最初から完璧を求めるのは酷なことに思えた。
シモンに実の母の写真を飾らせようとしたり、アンナのことを母と呼ばせないよう要望を出す気持ちも分かる。親権はあくまでエディにあるし、何よりシモンの中にある愛する妻の母としての姿が色褪せていく不安に耐えられなかったのではないだろうか。
援助局のスタッフも、シモンが父親との暮らしに戻るという目標を念頭に動いているだけだ。最初はシモンの気持ちをないがしろにしているようにも見えたが、この目標のためにはいずれ彼は里親のもとを離れなければならない。どこかの段階で、援助局は憎まれ役にならざるを得ない。里親の家でのイベントより父との面会が優先なのも、子供自身に実の父親のプライオリティを理解させるためという意味もあるかもしれない。
登場人物に悪い人間は誰もいない。だからこそやるせない気持ちになる。
シモン役のガブリエル・パヴィはとにかく愛らしいが、それだけではない。悪夢を見て真夜中にアンナにすがる場面は、彼のアドリブも入っているそうだ。里親と実の父親の間で気持ちが揺れ動く様を自然に表現するのは、なかなか難しいはずだ。すごいの一言。
アンナ役のメラニー・ティエリーは、「海の上のピアニスト」で主人公1900のミューズを演じ、短時間の出演ながらその美しさが印象的だった。あの表情の魅力はそのままに、歳を重ねた深みが出ているのが、何だか嬉しかった。
物語は現実的なエンディングを迎えるが、父親との生活がしっかり定着してシモンが成長した頃に、アンナ一家と再会してほしいなとも思う。
本作の原題は「La vraie famille(本当の家族)」だが、実の父もアンナ一家もシモンの本当の家族だ。両方の繋がりがシモンの人生を豊かにすることを願ってやまない。
思えばファーストシーンからこの家族に惚れ込んでいた
監督の実体験が元になっているそうだ
なるほど、それも納得
この映画は全編を通して、まるで
自分もこの家族の一員かと錯覚するような
撮影手法をしている
それが心地よく届く
映画では珍しく完璧な家族。
だって子供がハロウィンの仮装に対して
「資本主義の奴隷」とか言うんだもの。
おそらくはあの母親の思想で。
自由に生きる子供達が愛らしかったですよ、
とくにジュールちゃん。
あんな映画映えするナチュラルな姿、
他にありますかね
自由で生き生きとしていて純朴で。
彼女の話も観たいくらいでしたな、
作りに愛を感じた。
「都合良すぎるだろ」と簡単には言えない
実父の事情を介して、家族はさらに一団となる
別れが近づけば近づくほど強くなる愛に
胸が締め付けられた
もしかすると、この世で最も強靭な愛とは
母の息子の愛なのかもしれない
ずるいくらいに泣かせる映画でした
監督の思い出
ラストシーンが切なくて
皆いつも通りの
日常を取り戻そうとして
楽しそうにしてるけど
何かが足りなくて
でもいつしかそれが当たり前になって
子供たちはだんだん忘れていくのかな
ってほんの少し思ってしまったけど
監督の子供時代に家族で里子と生活してたことがあって
その話がベースになっていると知ったから
離れてしまって大人になっても忘れたりはしないのだなぁと
じんわりと心に沁みました
お別れしても「家族」の思い出なんだよね
アンナ役の女優さんが素晴らしい
憤りや深い悲しみなどを飲み込んで涙を流さず
でも感情がこちらの心に深く流れ込んでくる
子供たちも素晴らしかった
ラストが衝撃と共に現実が襲いかかる
里親ファミリーの目線でずっと進んでいくからそちら側に肩入れした感じで迎えるからこそのラストの衝撃!
里親制度は家族という体制特有の愛の中で育まれる子供たちの感性を尊重するという意義があると思ってて、その愛を無限に注いでくれたママに制度だけを押し付けるのではなく行政もパパも愛を感謝を尊敬をしっかり伝えてほしい!
見てすぐの感想は説明責任が果たせてないからこうなるんだと思った、けどそれぞれの立場思いも理解できるから切ないです。
里親って絶対仕事じゃないよね
素敵な家族です。羨ましい。
子供がマオリ族(先住民)のダンスをまねるシーンがあったので、ニュージーランドにもフランス語圏の居住区があるのかな?お父さんはアラブ系だけど。なんて思ってました。庭が広い、道路が広い。近所の子供たちも一緒に遊び、近所付き合いも楽しそう。ミュージカル仕立てのダンスシーンもあり、兄弟仲が良くて、素敵なお家で、スキンシップもとても多くて、観ていてとても幸せでした。
実父がシモンを引き取りたいと申請し、ウィークエンドでの馴らしが始まると、スレ違いが生じてしまいます。
シモンのことを考えるとそんなに出かけたり、イベントしないで、おとなしくしててよと思ってしまいます。
そのほうがお金もかからないし。
LEDのライトセーバーは直ってよかったです。とてもいいシーンでした。
役所の児童課のおばさん二人がカチカチ頭。
だからお役人は嫌い。
里親、とくに母親の方は仕事じゃできないでしょうよ!
アンナがおばさんからの電話を無視したのは、どうせ反対されるにきまっていて、ハナシにならないから。
アンナは正直すぎ。 嘘も方便っていうじゃない。ばかなんだから。そんなアンナがかわいそう。
男女の平等とかジェンダーの問題が前進すると、母性自体は軽ろんじられるような気がした。
結局、養子縁組を含めて、最後まで残ってしまう問題はこの問題。
捨て子や貰い子も目の前のオモチャにつられたり、養親に気を遣ったり、差別や偏見に敏感になったりで、小さい時から苦労が絶えない。
クリスマスイブの夜中に車を走らせて、事故るんじゃないかととても心配しました。
シモンも捨て子じゃなかったし、実の母親は病死だし、アンナには二人の実子がいるからそんなにこじれなくてよかった。
妹役のバシル・バイオレットちゃんがシモンを実の弟のようにいつも気にかけるシーンにキュンキュンしっぱなしでした。
里親も実親も、子を愛する気持ちに違いはなく。
里親制度が仕事として確立されてるフランス。実親に返すのが前提で、養育費も支給…とはいえ1歳から4年半育てた「わが子」との別離を簡単に受け入れられるはずもなく。
里親が聖人すぎず感情的にルール違反をしてしまったり、実父も決して悪い人ではない。それがとてもリアルだった。誰も悪い人はいない。子の幸せを思う気持ちに、実親も里親も関係ないのだから。だからこそ、すごく考えさせられた。これが監督の意図なのかもしれない。
慣れ親しんだ里親家族と暮らすのがよいのか、今はしっくりこなくてもやはり実親と暮らすのがよいのか(虐待や貧困が理由ではなく、妻を亡くしたショックや憔悴から養育が困難になった、という点も実父が悪いわけではないので見る側に更に迷いを生む)。
よく「子どもの気持ちが第一」「子どもの決断を尊重すべき」などとも言われそうだけど、果たしてそれも正しいか?(6歳の子にそこまで全体や未来を見越した判断が可能か?とりあえず今の里親がいいと言うに違いないだろう)
でもやっぱり、振り回される子ども自身はかわいそうだなあと思ってしまったな。
そしてとても美しいラストが心に残る。
里子のシモン役の子は公園でスカウトしたと知ってびっくり。兄弟の二人の子も演技は初心者らしく、みんな上手すぎてびっくり。
2つの家族にサチアレ!!
「食べちゃいたい位可愛い❤️」シモン君に
心・持って行かれた102分でありました!
…絵に描いたように幸せそうにプールではしゃぐ家族…人種も宗教も違う夫婦と3人の男の子達(次男君ははじめ女の子だと思ってしまった位
これ又キュート!)
末っ子のシモンが里子だとは誰にも思えない程
本当の家族にしか見えない…
里親制度の在り方、職業である事…フランスの制度は興味深かったし、もっと知りたくなった
シモンを愛し過ぎ母性愛の暴走に歯止めが効かなくなってしまった里母のアンナ
それが原因となりシモンは生活が安定した実父と週末を過ごして他日は施設で過ごせねばならなくなる…
そして別れの日…シモンも葛藤を隠せずアンナをママ!ママ!と叫び追いかける
が、お涙頂戴ストーリーとしての結末では無く
2つの家族の新しきスタートを実に誠実に前向きに仕上げた物語に紡がれている
今朝も自分の子供を死なせてしまった
哀しく心が痛む報道がテレビから流れていた…
子供を放棄してしまう愚親が増え続ける日本の現状…この制度をもっと機能させる流れがこの国でも作られれば…と、考えてしまうのだが
#60 日本ではあり得ない家族の形
日本では里親になるのは子供がいない夫婦と相場が決まっているが、こちらは2人の実子がすでにいる家庭に引き取られた男の子シモンの話。
日本なら実子が血のつながっていない子を虐めるというのが定番だが、ここの兄弟はめっちゃ弟を大事にする。
さらにママもパパも全く隔たりなく愛情を注いでいる。
それなのに一旦育児放棄した父親が、精神的に立ち直ったからとシモンを引き取ろうとするところから、里親家族とシモンの精神的葛藤が始まる。
頭ではわかっていても、シモンもママも自分の感情が先に立ってしまう。
日本なら母親がいる温かい家庭で育ったほうが良いという判断が下されそうなものなのに、フランスはあくまで実の親子関係の再生に全力を尽くそうとする。
もう常識が違いすぎて腹が立ってくるが、それとは関係なくシモンとママの絆部分は涙なしに見れない。
ママと呼ぶことを禁止されて「頭の中でなら呼んでいい」というところとか、最後の別れ部分はもう号泣。
今年1番泣ける作品と言っても過言じゃない。
ラスト部分が結局このフランスの制度が正しいと語りかけているのかもしれない。
泣きたい方必見のお勧め映画。
フランスの福祉の現実、大人のエゴ
愛情たっぷりに里子を育てる家族。
出だしは、よかった。
だんだん雲行きが怪しくなるのは、母親の客観力のなさが浮き彫りになりだしてから。
こどもは母親の愛玩物ではない。
赤ちゃんの時から、育ててきたら可愛い盛りに手放すのは辛いだろうけど、そもそも里親だよね?いつかは親元に返すか、あるいはその先のことも予測してなかったのかな。
父親を見下すような態度も、自分のこどもたちに対する態度も、何だか自分のために、人からの称賛を受けたいためにやってるような。
結局、こどもたち全員を傷つけたことになる。突然の別れにショックを受けているのは自分だけと思ってたのかな。
ルールを守っていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
ちゃんとお別れできたかもしれない。
シモンは見捨てられた体験を、再度しなくてもよかったかもしれない。
預かった里子を、自分の愛着対象にするような里親は、里親になるべきじゃない。
救われるのは、夫が真っ当!
いたって真っ当。
そして、妻のことをよく理解している。
それが救い。
こどもたちが、ホントに弟として接していたところも救われる。
母だけが、身勝手に見えるのは私だけ?
すごかった
実子が二人いる家庭が、里子を赤ん坊の時から引き取る。小1くらいになったところで、実父が引き取ることになり、まず週末から慣らしで泊まりに行く。児相さんと実父さんと関係がうまくいかず、引きはがされるような感じになる。それはないよ~と思うことの連続で見ていて苦しい。
僕が里親活動を始めてずっと抱いていた、一緒に暮らしている子どもが実親に戻される恐怖を見せつけられる。ただ、このご家庭は実子が二人いるのでまだましで、もし子どもが里子だけだったとしたらもう生きていけない。想像するだけで地獄。
児相と実父ともうちょっといい関係を築いて、贈り物をするなどして、親戚くらいのレベルで付き合いを継続できればいいと思う。
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