「家族とは?親とは? 答えは出ないけど名作です。」1640日の家族 ごーるどとまとさんの映画レビュー(感想・評価)
家族とは?親とは? 答えは出ないけど名作です。
たまたまこの作品を観る前日に近所のショッピングモールで里親制度周知のためのパネル展示がされていて、ちょっと足を止めて見ていたんですよね。
養子縁組や特別養子縁組の『制度』については(あくまで法的な意味では)理解していますが、里親制度についてはほとんど知らなかったので。実の親の元で養育されることが難しい子どもを最近は施設で育てるよりも家庭的な環境で養育しようという方向である、ということ位しか存じていませんでした。
で、パネル展では独身でも里親になれること(当然条件あり)や『週末里親』というものもあることなどを知りました。
養子と里子を混同している方が多いですが、全く別物ですよね。
この作品の舞台であるフランスでは里親は国家資格であり給与も支払われていうそう。とはいえ、そう簡単にお仕事と割り切れる訳もなく、一緒に過ごしていれば情がわくのは当然のこと。
いつかは親元に返すとわかっていても1歳半から4年半も共に暮らしていれば手放したくない気持ちになってしまうのもわかります。
この映画は実の父親がいきなり息子を引き取りたいと言い出したところからお話は始まるのですがー。
登場人物みーんな、誰も悪くないのよ。
実の父親のエディは、最初は問題のある人なのかと疑いながら見てしまっていたけど、彼は彼で苦しみを抱えながらも一生懸命だし不器用だけど早く息子シモンと暮らしたいという思いはしっかりあって。
福祉局の人たちも子どもが実の父親の元で生活できるようにすることがゴールなのできちんとお仕事を全うしているだけ。
シモンを実の息子たちと分け隔てなく育ててきたアンナはやや暴走してしまうけど、それも深い愛情をもって接してきたからこそ。
本当に誰も悪くない。だからこそ辛いのよねぇ。
シモンを演じたガブリエルくんがとにかく愛くるしく、演技が初めてとは思えないほどナチュラル。
次男役の子はすっかり女の子だと思っていましたので後から男の子だと知ってびっくりでした。
時にはぶつかることもあるけど“弟”であるシモンくんへ兄として家族として愛情を注いていたお兄ちゃんたち二人も素敵だったし、妻のアンナより冷静だけどしっかり家族を支えていたお父さんも立派な人。
ラストシーンは今思い出してもたまりません!
決して悲劇的な終わり方ではなく希望にあふれていましたが、涙がとまりませんでした。