「俺たちのインディ、有終の美(フォラーについて加筆)」インディ・ジョーンズと運命のダイヤル REXさんの映画レビュー(感想・評価)
俺たちのインディ、有終の美(フォラーについて加筆)
STAR WARS創造主ジョージ・ルーカスが久々に映画に関わっているとあっては、ラストインディを見に行かないわけはない!
あーそして、俺たちのインディは、俺たちのインディでした(感涙)。
さすがによぼついてるハリソンばかりだと無理もあるので、若かりし頃のインディを冒頭でたっぷり堪能させてくれた。
それと対比して時代の流れに取り残された老教授という現代(69年)のインディの姿はかなり切ない。
頭もぼさぼさだし、タンクトップ姿はみすぼらしいし、大学でも生徒はまともに授業を聞かない。若い世代の新たな冒険が、地球から「宇宙」に舞台を移したことが顕著な場面設定で、パレードの中をインディが馬で駆け抜ける姿は、本当に象徴的な演出だと思う。
キー・ホイ・クアン演じたショーンとインディのタッグが、かつての教授仲間の娘ヘレナとスラム育ちの男の子テディに代わりはしたものの、アリストテレスの秘宝をかつてのナチから守ろうとする気骨のある姿は、やはりインディそのものだった。
ただ欲を言えば、マッツ・ミケルセンのフォラーをもう少し深堀りして欲しかった。ただインディの後を追っかけるだけのステレオタイプの悪党になってしまった。
彼の秘宝探しの動機も曖昧。ヒトラーは失敗した指導者だったからナチとして許せないのか、それともヒトラーが悪逆の限りを尽くしたから歴史を正したいのか…セリフからはイマイチ汲み取れず。しかし後者だと、インディが直接手を下して止める強力な理由がなくなる。だから、事故死にしたということだろうか。
ちなみにフォラーはアポロ計画でロケット開発を担当した科学者で元ナチス親衛隊隊員のフォン・ブラウンがモデルだと思う。第2次世界大戦中、連合国側にも多大なる犠牲をもたらしたV2ロケットの生みの親でもあるが、大戦後、元部下を引き連れてアメリカのアラバマに移住した。
フォラーの頼みとあっては…という弱みでCIAが言うことを聞かざるをえない状況だったという脚本までは良かったと思う。
しかしその後は持て余してしまったのか、彼の動機が大義なのか私欲のためかが曖昧に。
アントニオ・バンテランスの扱いも雑だったなぁ。
それはさておき、古代ローマ、アリストテレスの時代に残りたいという「ロマン」に未練たらたらのインディでしたが、現代に強く彼を引き留める隠し玉がラストに登場!インディのみならず、往年のファンの目頭も熱くなったのでした。
老人同士のキスシーンは、引きで正解。
余談ですがラスト、まあるく画面が閉じていく演出は、マンダロリアンシーズン3の最終話と同じだった。
個人的には、世界の秘密が次元や宇宙に広がるより、古代の地球にあるという考古学ロマンが感じられる映画はもう出てこないんだろうなぁと思ってしまったことが、寂しさを加速させました。
(パンフ未読)