「インディ・ジョーンズと失われぬ冒険心」インディ・ジョーンズと運命のダイヤル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
インディ・ジョーンズと失われぬ冒険心
『インディ・ジョーンズ』ほど長いスパンを置いて製作されるシリーズもない。今回は15年ぶり、前作『~クリスタル・スカルの王国』に至っては19年ぶり!
世界中のファンが待ち望んでる超人気シリーズだし、大作だし、何よりルーカス、スピルバーグ、ハリソンのBIG3のスケジュールを合わせないといけない。
さらに今回はいつもの脚本練り直しもさることながら、コロナやハリソンの撮影中の怪我もあって、幾度となく製作が中断~再開の繰り返し。遂にはスケジュールの都合でスピルバーグが監督降板。
当初の公開予定は2019年。4年の歳月を経て、やっと完成。公開の時を迎えた。
また『インディ』の最新作が観れる!
嬉しさの反面、寂しさも。すでに言われている通り、本作を以てインディの冒険は最後。
第1作から42年…。インディが我々をワクワク誘う最後の冒険と秘宝は…
古代ギリシャの天才数学者アルキメデスが作ったとされる機械“アンティキティラのダイヤル”。それは人智を超えた力があり、時空をも超越する事が出来るという…。
インディも長年探し求め、その片割れを第二次大戦中にナチスと争った。
かつて共に探した亡き旧友の娘から話を持ち掛けられる。
が、狙うのは彼らだけじゃなかった…。
シリーズ定番ネタは勿論踏襲。
キリスト絡みではないが、秘宝は幻とされるもの。
敵はナチス。…え? ナチス? 1969年だよ?
元ナチスの科学者。因縁は第二次大戦中に遡る。
昨今のシリーズは新たな要素や展開を広げるのが主流だが、『インディ』は水戸黄門的な定番こそ。
懐古主義と言うなら言えばいい。変わりゆく中で変わらぬものがあってもいい。
それにそもそも『インディ』自体、往年の冒険活劇へのオマージュなのだから。
アクションの見せ場もふんだんに。
まずは冒頭。第二次大戦中、世界中のお宝を略奪した因縁のナチスとの争奪戦。走る列車の上でのスリリングな闘いで掴みはばっちり。
尚この冒頭シークエンス、CG技術でインディが若き日の姿で登場。現役バリバリだった前3作の全盛期、80年代へタイムスリップしたかのよう。
舞台の1969年。NYの街中で敵と攻防。インディは馬で駆ける…!?
冒険はモロッコやシチリアへ。
モロッコでは町中でお馴染みのチェイス。
海の中では凶暴うなぎが襲い来る…!
シチリアでは遺跡の地下深くへ…。
そしてクライマックスはまさかの“場所”へ…!
今回最大の話題。
前作公開時66歳だったハリソンも、今現在80歳!(間もなく81歳だとか)
つまり、撮影中は78歳~79歳だったという事。改めてシリーズの長さを感じる。
普通だったらそんな老境なら、こんな危険な冒険には出掛けない。無謀過ぎる。
しかしインディは冒険へ。歳は取っても冒険心までは老いたりしない。
それはハリソンとて同じ。歳は取っても出来るアクションは身体を張って。
何やら批評家どもや一部の連中は、アクションにかつてのようなキレが無いとか、老いた姿にいちゃもんを付けているとか。
そりゃあ仕方ないだろう。もう若くはないのだから。怪我だってするだろう。
じゃあ、そういう輩は80歳でこんなアクションを出来るのか? やってみろ!
それらを乗り越えて見事撮影をこなし、今この年齢でしか出せないいぶし銀の魅力、カッコ良さ。
インディは幾つになっても冒険ヒーロー、ハリソンは永遠にインディだ。
今回の冒険のお供は…
いや、今回の冒険の発案人は彼女。旧友の娘、ヘレナ。実はインディが名付け親。
行動派のヒロイン像は1作目のマリオンを彷彿。でも決定的に違うのは、お金で動く。時にはインディを出し抜いたり、裏切ったり…。
フィービー・ウォーラー・ブリッジが男勝りの魅力。
彼女の相棒はモロッコのストリートチルドレン、テディ。
言うまでもなく、インディ、ヒロイン、少年は『~魔宮の伝説』と同じ。
またインディを老人位置とするならば、『~最後の聖戦』のような老若タッグにも通じる。
サラー役、ジョン・リス・デイヴィスの登場も嬉しい限り!
『~クリスタル・スカルの王国』は…? 妻マリオンと息子マットについての“その後”にも触れられている。
しっかりこれまでのシリーズの流れを汲んでいる。
敵は元ナチスの科学者、フォラー。目的の為なら手段は選ばない冷血さとクールな佇まい、存在感は、さすが悪役はお手の物のマッツ・ミケルセン。これで007にSWにマーベルにハリポタにインディに、人気シリーズを網羅!
部下も人の命を厭わない奴ら。
全く、ナチスどもは…。
フォラーが秘宝を執拗に狙う理由は、ある野望。
総統の為…ではない。彼らも非常に危険思想。
今回スピルバーグに代わってメガホンを撮ったのは、アクション、サスペンス、ドラマ、ロマコメ、西部劇など多彩なジャンルを手掛けるジェームズ・マンゴールド。
決め手はおそらく『フォードvsフェラーリ』の手腕だろう。
迫力のアクション演出やスピーディーな展開は本作にも活かされている。
スピルバーグの監督降板は残念だが、エンドクレジットで製作総指揮にルーカスとスピルバーグの名が並び、思わず“おお~っ!”。
本作で映画音楽の引退を公言しているジョン・ウィリアムズ。(その後撤回したという話も…?)
このマエストロの音楽無くしてインディの冒険は始まらない。いつもながら作品を盛り上げるこれぞのエンタメ音楽。
でもちょっと残念だったのは、勿論あのテーマ曲は流れるが、それで締め括って欲しかった。新曲の静かな音楽で終わり、インディ最後の冒険や自身の最後のキャリアを締め括るにはちと物足りなかった。
安心安定無難の面白さ。楽しめたのは楽しめた。
でもそれらは“想定内”。もっと期待以上の、かつての旧3作のような躍動感や高揚感にはちと欠けた。
そしてまた今回もクライマックスには賛否出るかもしれない。前作までとは行かなくとも、それでもなかなかに突飛。だって…。
前作の宇宙人絡みは完全SFだが、今回はあくまで人間の発明したもので、それが人智を超越。
人の魂を奪う聖櫃、邪悪な儀式、永遠の命の聖杯とその番人…これまでもSFとギリギリラインの超常現象だったが、今回はギリ許容範囲? それともまた…?
歴史絡みという点では考古学者ならでは。
ネタバレチェックを付けるのでズバリ言ってしまうと、アンティキティラのダイヤルの力によって、インディたちはアルキメデスの太古の時代へ。
研究し続けてきた歴史や偉人が目の前に…!
インディはこの場に残りたいと言う。考古学者として…? いや、本音は違うだろう。
1969年に、インディの居場所は無かった。すっかり時代に取り残され、かつては女学生を虜にした教鞭も今では睡魔を誘う…。大学教授も引退。
世間は月面着陸に盛り上がり、誰も歴史に興味ない。
何よりインディの心を孤独にさせているのは、妻と息子。
何と、息子マットは戦死し、それが原因でマリオンとは別居。離婚協議中…。
そんな悲しく虚しいだけの今に帰ったって…。
このまま歴史の中に留まり、生涯を終えたっていい。
が、インディは帰ってきた。ヘレナの強引さもあってだけど。
ヘレナは言う。今の時代に彼は必要で、今の時代に彼の人生がある。
帰ってきたインディの前に現れたのは…、本作最大のサプライズ。
幾多の冒険をし、数々の秘宝を手にしてきたインディ。
そんな彼が最後の最後に手にした“宝”は…、言うまでもない。
稀代の冒険家への、心暖まる穏やかな終着点。
インディも遂に隠居へ…?
が、ラストシーン。帽子に手を取ったのは…?
本作がシリーズ最後なのには偽りは無いだろう。
あれはインディが我々へ向けて。
誰にも冒険心はある。それは失われたりも老いたりもしない。
人は魔境や伝説や謎を追い求め続ける。
その興奮と秘宝は、永遠に作品の中に。
いつでも我々は冒険へ旅立てる。
インディ・ジョーンズと共に。
共感&コメントをありがとうございました。
ハリソン氏 マーベル参加なんですね。お元気だわ
知らなかったので
教えてくださりありがとうございました。
故 ウイリアム・ハートさん 懐かしいです。
近代さん
シリーズ完結しましたね。
冒頭からドキドキ・ハラハラの展開
運命のダイヤルを巡り争奪戦
過去作のオマージュ的なシーンも多く
本当に楽しめました。
素晴らしいレビューをお届け
ありがとうございます。
ハリソン氏 80歳なんですね。
びっくりです(^^)/
これからも 冒険家でいて欲しいですね。