夜明けまでバス停でのレビュー・感想・評価
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明日こそ目が覚めないように
そう祈るホームレスをみる三知子の目が、彼の気持ちをよく理解していた。
コロナ禍をきっかけに職も家もない状況に巻き込まれ、実質的にも精神的にも行き場を失う現実が我が身に起きていた彼女。
頼れる関係性がまわりにあったとしても頼らない。
他人の心配はしても自分のことを心配されるのは苦手なのかひとりで頑張る。
親の介護を巡る実兄との電話のシーンなどや同僚を助けるシーンで三知子の性格と心情が板谷さんの様子から細やかに伝わる。
なんだかわかる…
そして
案外たくさんいるんだろうな。
社会への痛烈な批判は政治だけでなく初めから最後まで存分に盛り込まれているため、気がつけばメッセージはずしりと重ため。
あの頃から比べて落ち着いた現在にも変わらず尾を引く不安も転がっているのはわかるし、依然続く問題の方が多いなと華やかなクリスマスのにぎわいを感じながらふと考えた。
そうなのだ。
〝ふと。〟
ふとでも考えるきっかけはたくさんあったほうがいいのだと思う。
自分とは距離があったり、喉元すぎてしまえば忘れてしまえる私たちには。
明日目が覚めないことを祈るだ世の中はやっぱりさみしすぎる。
修正済み
わかってたけど暗くなる
いゃ〜
なんか明日は我が身
みたいな気分になる
安定したお仕事にたまたま就けて
転職してよかったぁ
与えられたお仕事頑張ろーって思った
仕事なくなって
実家無くなったらどこに帰れば良いんだろ…
的なよくわからない不安感
『嫌われマツコの一生』
観た時の感想に近い
サスペンス風に始まるから
ちょっとドキドキ
コロナ禍過ぎてしまって
コロナにかかっても
あぁまた…みたいな反応しかならなくなって
あの時生活壊れた人たくさんいただろう
すぐに そんな時もあったね… と
作品に出てくるホームレスの皆さん
きれいエキストラさんにも少し…何か工夫
最近は貧困は見た目じゃわからないって言うけど
休日の冴えないお父さん感
主人公周りに友達やら知り合いいるのに
手を借り作品ネットで売るとか
公に助けを求めるとか
10年働いたら失業手当とか貰えるんじゃ
素敵なホームレス仲間は魅力だけど
新しい仲間増やすより
助けを求める勇気もあって良いかと
現実的な解決を模索中
続けて『渇水』も観たもので
お金は大事
教育 躾 愛情 …も大事
とりあえず
これ以上荷物増やさないようにしよう
引越しが大変
断捨離
友達大事にしとこ
人々の本音
少し前に実際に起きた事件をモチーフにしている。
幡ヶ谷2丁目のバス停 以前とは違った風景になっているが、そこが犯行現場。
昔ダンサーだった女性 スーパーなどの試食販売の仕事 やがて仕事がなくなりホームレスになる。
いつも同じバス停 その近所に住む引きこもりの男が彼女を殺害した。
動機は、目障りだったから。
この事件は後に多くの反響を呼んだ。
この作品はその事件とコロナという社会現象を掛け合わせてある。
しかし、この作品のテーマは全く違う。
実際にテーマ性は薄いものの、「心身の調和とチームワークと友情」を背景として設定している。
それは最後に救いとなるが、「しーちゃん、あなた爆弾に興味ない?」という最後のセリフにこそこの社会に対して何かしてやりたいという思いが込められている。
どっちかと言えば社会に対する皮肉の方がより濃く色づけされている。
ホームレス 路上生活者
「社会の底が抜けたのに、それを自己責任で何とかしろ」という無責任極まりない政府
昨今の実際の政治家たちの言葉をそのまま作品の中で流している。
無能 そして「いまだけ 金だけ 自分だけ」で突き進んだ東京五輪
あの東京五輪の時、本当に日本は死んだと思った。
そして大阪万博 大いなる闇 日本の息の根が止まるかもしれない。
さて、
コロナの陰で行き場を失った大勢の人々
北林ミチコもその一人
かつての仲間からの連絡にも返事をすることはなく、その日その日だけを生きている。
この部分の設定も実際の事件と類似しているが、なぜ彼女は人を頼ろうとしないのだろうか?
店長にお金を貸してもらうのと、居酒屋のごみ箱の中の残飯をあさるのとどちらがいいのだろう?
結局最後に退職金をもらえるが、この物語の中でミチコは、「でも自分がこうなったのは自分の所為」といっていた。
それは確かのその通りだ。
しかし彼女は爆弾の作り方を教わりながら作り、都庁に仕掛けた。
実際それはただの目覚まし時計だったわけだが、この快感は彼女の心をスーッとさせたのは間違いないだろう。
彼女が決心したように「1度くらい端然と逆らってみたい」
この思いはすべてのテロなどと共通するのではないだろうか?
確かに危険思想ではある。
そしてミチコは、店長が「私も仕事辞めてきた」という言葉に感化された。
店長がマネージャーに逆らったのを想像したのだろう。
それができれば、もっと面白いことができる。
子供のいたずらにそっくりなこのこと
誰かを傷つけるつもりなど微塵もないが、コロナ渦でも平然と暮らせる底辺ではない人々に対するドッキリ
そんなくだらないことでもしなければやってられないという思い。
底辺の人々の強い思い
その思いをこの作品で表現したのだろう。
背景はあくまで「心身の調和とチームワークと友情」
しかし本音は「1度くらい端然と逆らってみたい」
これがこの作品の本質だろう。
面白さには欠けるものの、人々の心をよく描いていると思う。
不条理な世の中に鉄槌を下すかのように出現したコロナ禍で、結局弱者が不幸に見舞われるという不条理…
WOWOWの放送にて。
2020年に起きたホームレス女性殺害事件に着想を得たというオリジナルストーリー。
実際の事件の被害者は高齢女性で、新型コロナウイルス感染症が蔓延する以前から路上生活をしていたらしい。これをコロナの影響で職と住居を失った中年女性に置き換え、世の中の理不尽と不条理に見舞われた彼女が自己責任と葛藤しながら、やがて怒りを覚えていくさまを描写している。
コロナ禍は社会常識を大きく変えただけでなく、多くの人の運命を変えてしまった。
この映画のように職を失った人も少なくなかっただろう。
私も会社員生活で極めて重要な3年間をコロナで棒に振ったと、今でも恨み節が頭に渦巻く。
現代人にとっては未経験かつ未曾有のパンデミックだった。中にはやむを得ず人情を捨てなければならなかった人もいただろう。
その象徴的なキャラクターが居酒屋の店長(大西礼芳)で、彼女は正にやむを得ずパート従業員を整理しなければならない苦渋に見舞われる。
一方、彼女の上司であり、男女の関係でもあるらしいマネージャー(三浦貴大)は、セクハラ・パワハラ・着服常習の不正男で、そのポジションにいられるのは経営者の息子だからのようだ。彼にはやむを得ない事情などなく、世の中がどうあろうと私利私欲が行動原理だ。
主人公のミチコ(板谷由夏)は別れた夫にカードを使われて背負った負債の返済に追われ、従業員寮がある居酒屋にパートで勤務していた。
実家とも何やら確執がありそうだ。
自分では真面目に生きてきたと自負している。
彼女はコロナ禍で営業できなくなった居酒屋をリストラされると、住み込み介護の仕事を見つけるのだが、そこもコロナの影響で土壇場で採用取り消しとなってしまう。
住むところもなくしたミチコはキャリーケースを引きずって都内を放浪することになるのだ。
結局事件は起きないので事件を描いた映画ではないのだが、被害者は人に頼れない性格だったために路上生活を余儀なくされたのではないか、という実際の事件で推測されたことがミチコのキャラクター作りに反映しているようだ。
一緒にリストラされた同僚には頼れなかったかもしれないが、相談くらいはしてもよかったのに。店長やアクセサリー作りの師匠(?)(筒井真理子)を頼ってもよかったのに…
それができなかった真面目で勤勉だったミチコが段々と路上生活へ崩れ落ちていく。この様子が静かにリアルに展開していく。
コインランドリーで他人の洗濯物を物色したり、飲食店のゴミを漁ったりする板谷由夏の姿は衝撃的だ。
新宿クリスマスツリー爆弾事件の犯人や、宇野総理(当時)の「指3本」スキャンダルの芸妓が今はホームレスになっているという設定で、柄本明と根岸希衣が怪演している。
もっとも、この二人はお互いを反体制の伝説の人だと呼びあって楽しんでいるだけように思えなくもない。
この二人と関わって、ミチコの心にフツフツと世の中に対する恨みが湧き上がってくる。一度くらい反抗してみようと思い始めるのだ。
一方、居酒屋の店長はマネージャーの不正に気づき、正義の鉄槌を下す。
彼女は勇気を振り絞り、自分のキャリアを捨てても信念を貫くことを決断したのだ。
ミチコと店長の二人の女性は、どちらも自分自身に生きるうえでの後ろめたさみたいなものを抱えていて、それを自覚している。清廉潔白な人間であろうとまでは思わずとも、自身のズルイところは把握しているような人種だ。
店長はマネージャーの不正を糾弾して自分を縛りつけていた世の中の理不尽に反抗してみせたが、ミチコはそれができず流されていった。
本当は世の中のせいで自分が不幸な目にあっているのだと思っていながら、自分にも責任があると考えてしまうミチコは、自分で自分を分別のある大人な人間だと思いたかったのかもしれない。
私自身、自分勝手なグチばかり言っている人に、自分を省みろと軽蔑の眼差しを送っておきながら、自分の心のなかにはグチが渦巻いている。ミチコの心理と私のこれは近い気がしてきた。
エンディングの爆破シーンを、本当ととるか夢ととるかは観客しだい。
胸のすくラストシーンだと感じた人は、ミチコの見栄ともプライドともとれる心理にリアリティを感じなかった人かもしれない。
ミチコに多少なりとも共感を覚えた私などは、あれはできもしない夢まぼろしなのだと思ってしまうのだ。
プライドの高さゆえ・・・‼️
コロナ禍のために本業のアクセサリー販売がダメになり、バイトである居酒屋店員もクビ、居酒屋の寮(?)であるアパートも追い出されてしまう三知子。貯金も底をつき、ホームレス同然の生活を送るようになり、夜はバス停で朝まで・・・。コロナ禍の過酷な現実を突きつけられ、三知子に共感‼️いや、出来ません‼️元夫の借金を肩代わり、元金がまったく減らない、過払金請求を司法書士か弁護士に頼めばイイんじゃない⁉️いくら疎遠になってるとはいえ、母の施設への入所費用の件で電話でやりとりするんだから、兄さん宅で寝泊まりぐらいさせてくれるんじゃ⁉️仕事も選ばなかったら何かしらあるんじゃないでしょうか⁉️すべては三知子のこだわり、プライドが高いために自分を追い込んでしまっているように見えてしまう‼️それよりも三浦貴大の居酒屋のマネージャーが意外にハマり役‼️社長の息子なのをいいことにパワハラ、セクハラ、不当解雇、退職金横領とやりたい放題、クズっぷり全開‼️三知子の身を案ずる店長が、マネージャーを追い込むシーンは黄門様でしたね‼️スカッとしました‼️
コロナの影響でホームレスになった女性。 当時は結構多かったかもしれ...
コロナ禍の話
本業だけでは生活できずに居酒屋のバイトをする三知子。コロナで解雇になり、アパートも追い出される。行き場のない三知子は夜のバス停でウトウトし、昼は公園で過ごすホームレス状態。コロナ禍でこういう状況になった人もいるだろう現実。実際の話では殺されてしまったらしいが、映画では居酒屋の店長が、退職金を持って現れる、先が少し見える終わり方で救われる。
しかし、この居酒屋の店長はいいのだが、マネージャーがクソすぎる。店を再開したなら、まず解雇した人達に声をかけてあげればいいのに、退職金まで搾取して、セクハラ目的で若い子を新しく雇う。生ゴミぶちまけられて当然だな。
三知子がホームレス仲間のおじさんに「こうなったのは自分のせい」と言っていた。コロナだけのせいにしていない。確かに別れた旦那の借金を払わなくても済むような努力をしたり、家族との関係をもう少し良くしておけば、助けてもらう事も出来ただろうし。
ちょっと最近の話だし、リアルな話で、色々考えさせられる映画。
いったん始まった「逆回転」の速さ
一見すると順風満帆の生活を送っているようには見えても、いったん何かに躓(つまづ)いて、人生の歯車が逆転を始めたとしたら、その逆転の速さ(凋落の激しさ)は、筆舌に尽くしがたいものがあるようです。
猛威を振るったCOVIT-19(新型コロナウイルス)が、季節性インフルエンザ並の扱いに変更されたのは、ようやく去年(令和5年・2023年)のこと。
それまでは、得体の知れないウィルスへの恐怖が、飲食や宿泊から(過剰に?)人を遠ざけてしまっていたように思われてならないのですけれども。
(今朝までピンピンしていた人が、昼過ぎにはICUに収容されて人工呼吸器が必要になるとか、いったん重篤化すると、そのスピードは早かったことは、現場の医療関係者を驚かせたとは聞き及びますけれども。
しかし、当時はテレビなどが盛んに喧伝したようにCOVIT-19の致死率が季節性インフルエンザの数倍とか言われても、そもそも季節性インフルエンザの致死率はコンマ数パーセントとかいう話ですから、その「数倍」では、本当は高が知れていたはず。)
そしてコロナ禍が去ったこれからは、じゃふじゃぶと注ぎ込まれたコロナ関連融資によって押し潰されてしまう企業が必ずや出てくることでしょう。
飲食関係を始めとして、それで人生の歯車を狂わされてしまった方々も、少なくないことで、本当に、胸が痛みます。
そのことに、思いが至ると。
本作は、『TATTOO<刺青>あり』が、秀作だった高橋伴明監督の手になる一本ということで、TSUTAYAの宅配レンタルで、媒体(DVD)が送られて来るのを楽しみに、待ちに待って鑑賞した一本になります。
その期待にも違(たが)わない、佳作であったと思います。評論子は。
(追記)
監督さんとしては、決して多作とは言えない方と思いますけれども。本作の高橋監督は。評論子は。
しかし、前作にしろ今作にしろ、チカラのある方だと評論子は思うので、是非とも次回作にも期待したいところです。
本作は、その次回作がいよいよ楽しみになった一本だったと、申し添えておきたいと思います。
(追記)
本作の後半の「爆弾騒ぎ」は、いささか過剰ではないかとの意見もあるようですけれども。
他の方のレビューも読ませてもらうと。
しかし、COVIT-19に対する不安や、生活上の不安から、元学生運動の闘士と称するホームレスに唆(そそのか)されて、三知子がその方向に走ってしまったのも、本作の要素の一つを成すのではないかと、評論子は、思います。
それは、別作品『福田村事件』などでも描かれているような、不安な社会情勢の下での…否、不安な社会情勢の下だからこそ起き得べき「思わぬ出来事」というものが、コロナ禍の社会で、実際に起こっても不思議でなかったことを暗示しているように思われるからです。評論子には。
案外、最後に彼女を襲撃しようとした犯人も、そういう不安な社会の中で、マスコミの喧伝に乗ぜられてしまっていたのかも知れない。
その警鐘であったとすれば、その重みは、決して軽くないように、評論子は思います。
コロナ禍を描いた代表作のひとつ
昨年から観たかった映画、ようやく鑑賞🎥
コロナ禍をこれだけ顕著にあらわした映画は、尾野真千子主演の『茜色~』に続く代表的な作品ではなかろうか。
日常生活を描いた冒頭から始まり、横浜港のクルーズ船の話、新型コロナによる緊急事態宣言の発出、アルバイトたちは解雇、ホームレスになる者も……といったまだ3年ほど前の事であるが、「あんな頃もあったなぁ…」と思ってしまう。
あれからたいして時間も経っていないが、現在は「コロナ感染者数の報道」すら無くなって、コロナ共存社会?になったということか…。
あの頃を振り返って、インパクト強烈だったのは、緊急事態宣言により映画館が軒並み閉館となったことだった。
さて本作、夜は呑み屋でアルバイトをして昼は自作アクセサリー売る女性(板谷由夏)だったが、コロナ禍が始まってバイトはクビになり住み込みアパートも追い出される。自作アクセサリーも売れるわけなく、無職となる。
住む場所も無くなった無職の女はホームレスとなったわけだが、爆弾男(柄本明)などと知り合いになる。そして……というドラマ。
本作は、高橋伴明監督作であるが、片岡礼子、筒井真理子など個人的に贔屓の俳優が脇を固めてなかなか良いドラマになったと思う🤗
爆弾エピソードは何?……と思ったが、エンドロールを見て納得🙂
インパクトあるエンドロールであった⚡
さすが2022年キネ旬ベストテン第3位となった日本映画であった。
<映倫No.123335>
評価なんて、恐れ多くて
実在の政治家の名前を出し、ストレートな批判を加える。高橋伴明監督でなければ、作れない作品なのでしょう。学生運動への参加により早稲田を除名、という筋金のなせる業。
『腹腹時計』小学生の頃の記憶にあります。ただ、なんだろう、ひと世代後の私には、否定は絶対できないのだけれど、肯定もできない。この作品も、彼の時代も。まぶしくもあり、同時にむなしくもある。
だから、評価はなし。
ここからは、本筋とは全く関係のない、どうでもいい話です。
北林三知子のスマホに兄から、電話が入るシーン。テーブルに置いた時にビールが、妙にゆれるんです。東日本大震災がからむ映画か?初期微動の後、主要動のでっかいやつが来るのか?と思うほどでした。
ゆれの正体は、三知子が飲むビールの底の角がへこんでいた、それだけの事でした。派手に落としたのかな、でも、泡が噴き出すこともなかったし、冷やす前に凹ましたのかな。1本しか準備せずに撮影にのぞむとしたらちょっと驚きだし、予備のビールがあるとしたらへこんだのを使う雑さもちょっと驚き。謎です。
2001年の映画『アメリ』の冒頭のシーン。そこに描かれたアメリのマニアックな映画の楽しみ方と、同じ趣味がある私です。そんなんだから、今みたいな日本になっちまうんだよ、と高橋監督に叱られますかね?
理不尽な世の中だけどさ
前半いい感じで進んでいたのに
終盤はジジイ世代の過去の栄光ばなし。
決して政治だけが悪くなく現況の要因なんか
腐るほどあるのに
一部の人たちを喜ばす描写を入れても意味がないんですが。
大西礼芳ちゃんいい感じ。
60点
4
京都シネマ 20221026
平板さが主張の強度を高めた稀有な成功作。
美人が故より"悲しく"映る
2022年劇場鑑賞79点 優秀作 72点
小規模ながら、実際の事件を元にコロナ禍を交えながら短い時間で表現した作品
主演や三浦貴大、松浦祐也片岡礼子に柄本親子など邦画好きにはたまらないキャスティングにまず興奮するのと、テーマが誰しもが起こりうる悲劇を板谷由夏が美人ゆえより一層悲しく映るのが何より皮肉で、正直社員の大西礼芳とそれ以外のパートさんの構図だけでもせちがないなあと思いながら見ていました
個人的には途中までは素晴らしかったですが、爆発テロを試みるに至るシナリオがどうもそれじゃない気がしてならないです
こんな不条理な世界に嫌気が差しての行動だとは思いますが、なんかとってつけとような起伏の付け方で、ここが今作の品格や作品を語る上でにターニングポイントになったと思います
社員の大西礼芳がセクハラや会社や社会にストレスを感じ最後意気投合するのは下手ですが、良い状況と悪い状況の二人が交わる良い結末だと思います
それでもとりわけ好きな方の作品です、是非
ああ、生き難い人生
2022年キネマ旬報ベストテン第3位、高橋伴明監督作品。
見逃していた作品で、第七藝術劇場の下の階にあるシアターセブンというミニシアター(初めて行った)で丁度再上映されていたので、観に行ってきました。
いやぁ~、見逃さなくて良かったぁ。今の社会問題がてんこ盛りの内容でしたが、今のというよりもっと普遍的な問題でもある様な気がしました。
勿論、コロナ禍の社会をいち早く取り上げ、今の問題点を浮き彫りにした映画を観たのは私は初めてですが、それよりも私が身につまされたのは主人公のキャラというか性格や性質の問題の方にありました。
いつもの私の感想なら、この作品から今の社会問題を色々と解析して行くといった感じの事を書き綴って行くと思いますが、今回はこの主人公の性格について色々考えて行きたいと思っています。
何故ならこの人に私は、男女の違いはあれど色々な共通点を感じてしまったからです。いや、違う部分の方が多いのですが生き方が不器用な点で凄く似ている気がしました。
自分で言うのもなんですが、そんなに馬鹿でもなく、仕事も適度に出来る、非常識なこともしないし真面目な方でもある。人付き合いが上手いか下手かは別にして、人に対して横柄でもなく、優しい方でもある。
正直言って、社会生活においてこれだけの性質が揃っていれば、普通の生活が出来る資格はあると、建前的には必要最低限の条件はクリアしていると思っています。
しかしながら、こういう人間でもこの作品の様に社会の最下層にまで落ちてしまう事実というのが、そもそも一番大きな間違いなのだという問題提起の様に思えたのです。
作中のホームレス仲間も根本的に決して馬鹿ではなく、それなりの教養もある設定だったし、逆に悪役の従業員の退職金をネコババする上司や、ホームレスなどペット以下などと公言するインフルエンサーのダイゴならぬケンゴや、インフルエンサーに洗脳されるネット民など、人間的には下種やクズであっても社会では適度に豊かに生活できてしまうという、こうした社会システムに本当に問題はないのか?という疑問を私は若い時から持っていました。
で、私はなんとかこの歳までホームレスにはならずに生きてこられた理由や、彼女と私の微妙な違いを考えると(最低限の)世渡りのヒントが見えてくるのかも知れません。
例えば私、ロールプレイングゲームなどをする時に、最初は攻撃力より防御力の方ばかりを強力に上げてしまう癖がありました。その癖は実生活においても同じで、ホームレスにならない(なる覚悟がないため)を人生の優先順位の最上位に置きそれを目標に生活をしていたので、なんとかそれだけは免れたという事だけなんです。
なので、彼女の様に人の名義のカードで買いまくる別れた旦那の借金返済をしたり、生活が出来なくなっても頼まれるとお金を出してしまうというほど人が良くもなかったし、社会も人間も根本的には信用してはいけないという姿勢は崩せませんでした。彼女に私くらいの危機察知(回避)能力があれば良かった(?)のにと少し歯痒かったです。
なので私の今までの人生は決して豊かでもなく、人間としての真の喜びも分からないままであったかも知れませんが、でも本作の様な善良な人間のどん底人生や、クズ人間の自己満足人生よりはましな生き方だと自分に思い込ませています。
正しく怒る
映画を見終わって、高橋伴明監督の弁を読んだ。監督は怒りを原動力に映画を撮り続けてきたが、ある時期から怒ることをやめてしまった。でも世の中はどんどんおかしくなるばかり、ここらでちゃんと怒ろうと思ったという。そうなのだ、この映画は、「正しく怒ることは何なのか?」を考えさせられる映画だった。その昔、フレッド・ジンネマンの「ジュリア」(1977年)のラスト、ジェーン・フォンダ演ずるリリアン・ヘルマンが、ナチス政権下のベルリンで、レジスタンス活動をするジュリアと涙の再会をする。片足を失ったジュリアの姿に怒りの感情をおさえきれないリリアンに「今でも昔のようにそうやって怒ってるの?」と聞くと、「そうなの抑えようと思うんだけど」と言うと、ジュリアは「I like your anger.」と応える。
人間は喜怒哀楽を失ったらおしまいだ。人間は、本当につらい思いをすると少しずつ感情を出せなくなる。本当につらいのだ。
怒るのと、キレるのは違う。人を責めるのと怒るのも違う。今のワイドショーでコメンテーターは、正しく怒っているのか?色々と考えさせられる映画だ。
土地勘があった場所で起きた事件を題材にした映画だったので、見る前は暗い印象が拭えなかったが、実際見たら予想外に救われる映画だった。そう言えば「火口のふたり」もそうでした。
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