「「自分でしたことを必死でごまかそうとする大人たちへ」」泥棒日記 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
「自分でしたことを必死でごまかそうとする大人たちへ」
実際にあった出来事をモチーフにした作品。
物語で描かれているのは家族間の不信。
父の不倫現場を目撃した娘サクラは、普通に動揺した。
この動揺と父と話せなくなったことから、何とかしてその修復をするために日記を書くことで頭の中をブレインストーミングしようとしていた。
サクラは豪邸に住み成績優秀で容姿端麗。誰が見ても悩みなどないところに、誰もが同じ立場になれば同じように悩むという仕掛けをしている。
このサクラの悩みと対照的なのが父の悩みだ。
父は大手出版社の社長 ゴシップは命取りになる。
彼にとって娘に見られたことは、誰かに伝わってしまうことを意味する。
そして不倫をやめようとしない。
妻も馬鹿ではない。早々にそれに気づき、それとなく父に質問することで夫婦関係もこじれる。
娘に小遣いを与え口止め効果を狙うも、娘はそれを受取らない。
父は娘の言動を注視しだすと、娘は日記のようなものを書き始めていることの気づく。
娘が日記を書き始めたのは、自身の不倫を記録しているものだと思い込む。
日記を探してみたものの、どこにもないのは、きっと娘が持ち歩いているからだろう。
この悩みを不倫相手に話す。それがどんな風に伝わったのかは、作中に事件として登場することになる。
事件そのものは父が依頼したことではなかった。しかし父は家族旅行と称し家を空けることで、社員である編集者に日記を盗み出すよう指示し、同時に不倫相手にも日記を探すよう依頼したのだ。
編集者は初回作のヒットだけで萎んでしまっている小説家の人物描写を描く腕を上げさせるために、社長宅侵入の同行をさせた。
そこに替え玉バイトのミズホがいたのは想定外だったが、それこそがこの作品の原動力となっている。
不倫相手の女は、何でもする。
女がサクラを殺したあと、サクラのスマホでミズホに「日記を探して」とラインしたのだ。
小説家は思いもよらなかったことをそのまま小説にしたのだろう。
それがこの作品のタイトルとなっている。
ただ、
編集者と小説家が窓から侵入するのと、どう見ても泥棒の二人に対しミズホの言動が落ち着き過ぎていることは残念な点だった。
金持ちだろうが貧乏だろうが、家族の中に発生する不信という問題は、潔癖であればなおさら汚点に見えるのだろう。
してしまったことは変更できない。それに真摯に向き合うという感覚を持てないのは多くの人も同じだろう。何とかしてごまかしたいのだ。
そこに第三者を使ってしまうことで、問題が事件を引き起こしてしまうのだろう。
50分と短い作品ながら、見ごたえがあり面白かった。