「ぶっ飛びイーサン!」ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ぶっ飛びイーサン!
映画館が満席になっている光景に、かなり久々に出くわしました。すごいです、トム様。
今作は、AI兵器エンティティに見張られながら、沈没したステルス潜水艦の中のエンティティソースコードを解錠できる2枚1組の物理キーをただただ取り合う単純ストーリー。
ただし、その鍵は、手に入れればAI兵器=世界掌握に直結するため、多くの組織が欲しがる欲しがる。
そんな世界掌握思考に興味がなく、人を守れればそれで良いイーサンは、鍵よりも、CIAに入る前に恋人マリアを殺した宿敵ガブリエルに意識がいっている。ガブリエルことAIの悪魔大天使とも言えるおっさんは、AIエンティティにみそめられた、今作の物理的な敵。
とはいえ、世界掌握に興味がないため命令に背いたイーサンを追うCIAメンバーと、鍵の片方を盗んだイルサを追ってイルサに賞金をかけている政府、賞金狙いでイルサを追う賞金稼ぎ達など、イーサンを狙う人は沢山。
そして、ヒロインはこれまた瞳孔が開ききった女性、グレース。MI2ジンバブエヒロインを思い出す感じの、しばらく続いたフランス系からは離れた雰囲気。
雇い主ホワイトウィドウに後々化けなければならない前提で選んだのかなと思うほどの、瞳孔。スリの天才。
だけどこの瞳孔が見せる、前半のカーレースでの命からがらスリル満点の驚愕の表情がなんとも漫画チックで面白い。
イルサが潜むアブダビで、イルサ狙いの賞金稼ぎ達を退治。イルサを死んだと見せかけて逃した後のアブダビ空港で、既に、ガブリエルVSイーサングレース、イーサンVSグレース、エンティティの手下が仕掛けた謎爆弾VSベンジーの戦闘済。
イルサから渡された片方の鍵をグレースにすられて、ローマに飛ばれたため、空港の屋根を走って、
おそらくローマ行き飛行機に文字通り飛び乗ったイーサン。普通、チケットもなく飛行機にしがみついて乗り込むなんて想像の範囲に及ばないはずなのだが、過去作を見てきているから、多分イーサンはそうしたし可能だよねと思えてしまう。画面に描いていないのに、画が浮かぶすごさ。これが長年トムが築き上げた、インポッシブルはタイトルのみの、結末ポッシブルワールド。
ローマでグレースの弁護士に化けて、グレースから鍵を取り戻すはずが、殺し屋とCIAとガブリエルに追われてカーレース。
BMWの間は扉が取れようとなんだろうと必ず安泰。今回はローマを舞台に、黄色のミニカーフィアットも登場。イタリアの狭い路地には国産が似合う。車とバイクのちょうど中間サイズはトム系映画でも珍しいし、イーサンとグレースの手は手錠で繋がっている不自由が。
もうね、スリのあなたでもそれは驚くよね、突然こんなカーアクションに巻き込まれて。と思いながらも、
シリーズを重ねるうちに、全作品子供の頃から家族ぐるみで見てきて3世代目に突入してしまっているこちらとしては、カーアクション程度では慣れてしまっていて笑いながら見ている自分に引く。
なんとか追っ手はまいたが、グレースには逃げられてしまい、フィアットのハンドルを手首にぶら下げなんとか電車には轢かれず済んだイーサンは、イルサとベンジーとルーサーに回収される。
ずいぶん貫禄の増したルーサーと、ずっとお人よしなベンジーが画面に出てくるとものすごく安心する。
イーサンの心の拠り所であり、ファンにとっても、イーサン含むこのトリオが主役という意識あると思う。
この友情を突いてくるAIエンティティとガブリエル、憎い。
グレースが片方の鍵をご主人様に渡しに行くであろうヴェニスのパーティーへ。エンティティに仕切られた空間という設定の中で、ホワイトウィドウとガブリエルとCIAとトムとイルサと賞金稼ぎのパリスとグレースが一同に集結し腹の探り合い。治安悪。
ホワイトウィドウの話し方がなんとも不自然で、こんな変な人だっけ?と思ったが、子供と一緒に吹替で見ていたため、広瀬アリスだったのねと後から納得。ご本人は好きなので、吹替より演技の方が向いているのかな。
イーサンは、関わる女がみんな死んでも自分を優先させる人と悪評をたてられた挙句、結局殺し合いに突入。
ベンジーの指示で鍵を持つグレースの居場所を必死に追いかけるが、指示はエンティティに回線を乗っ取られて錯乱され、賞金稼ぎの女とホワイトウィドウの護身に挟まれ2人を倒してから、やっとガブリエルの場所にたどり着く。遅いよ!というか賞金稼ぎの女が執念深くて強くてしつこい。だけど、トドメを刺さないのがイーサン。というかトム。
悪評とは違って、トムが関わる作品は全て、最大限女の子には優しいんです!
ところがやっと着くと、グレースはガブリエルと戦闘の末、気は失ったが無事だった。イルサはナイフで胸をひと突きされ息絶える。
過去作でイルサを仕留めず生かしたことで随分厄介な展開になったこともあったし、イルサが関わると危険な目に遭うのだが、イーサンと持ちつ持たれつしてきたイルサも、その日の朝にはイーサンにヴェニスは初めてだわと甘えて、乙女な一面を見せていた。
バイクも銃もアクションもこなし時勢を読んで味方を変える、風来坊で強いイルサだが、人間的にイーサンのことは信頼していたんじゃないかな。
そのイルサを亡くして落ち込むイーサンと、初めてそんな場に出くわしショックが大きいグレース。
グレースからすると、スリの案件のはずがとんでもない兵器に関わってしまい、裏社会で生きるしか方法がないくらい追い込まれた状態。
イーサンの仲間になりCIAに入るしか生き延びる術がないので、誘うイーサンルーサーベンジー。
3人の人生を振り返ると危険だらけなわけで、映画館も、うわー、、これしか生き方ないのかとグレースと同じ感情を抱きつつも、他にないので仕方ないわな。
グレースはホワイトウィドウが乗るオリエント急行へ。もう片方の鍵と、これらの鍵がなんの鍵なのかを突き止めるミッションを抱えて、ホワイトウィドウの変装。
ホワイトウィドウの護衛に化けてイーサンも行くはずがマスク製造機が壊れてしまい、急遽グレースは1人で潜入。電車発車後に、外からイーサンは潜入することに。
切り立つ山々の間を抜けて走るオリエント急行に、バイクからパラシュートで飛び降りる作戦。無謀。だが、イーサンがやらないわけないでしょと観る者は信じられる。にしても。
えーーー、ここ?!?!って尖った岩の崖からバイクごと飛び出し、パラシュート。
は?!でもイーサンには仲間と女性達を背負っている動機がある。自分だけ逃げ出すわけにはいかない。
覚悟を決めて、ぶっ飛び!!
はからずもグレースの絶体絶命ピンチのタイミングで、外からパラシュートで飛び込み、敵を突き飛ばすイーサン。その後は、グレースは電車を止めるミッション。
イーサンは電車の上でガブリエルから鍵を奪うミッション。
ルーサーの言葉が効いてくる。
裏をかいてもそこまで全て、エンティティの読み通りかもしれないこと。
感情を一切排除して、エンティティの望まない結末=エンティティが破壊される結末に持っていかないとエンティティの思う壺にハマるということ。
そのためには、
・ガブリエルは殺さない=エンティティを止める術を知っているのでエンティティを脅かす可能性がある存在として生き続けて貰う
・絶対に生きて戻る=イーサンが死ねばエンティティ野放しとなるから
・ガブリエルが死のうとイーサンが死のうとエンティティからすれば鍵を手にする邪魔者が減るだけなので、鍵は絶対に渡さない
ルーサーの言葉だからこそ心に刻んだイーサンは、
ガブリエルを殺せるところまで追い詰めたが逃した。
死闘の末、グレースをも凌ぐイーサンのスリ術。
その道30年なんですから。。
というか、ガブリエルは短ナイフを一体何本持ってるの?イルサとデリンジャーとパリスに刺して、イーサンに襲いかかるのに2本使って、その2本で電車側面にぶっ刺してぶら下がったり、やりたい放題。むき出しで何本も隠し持つとか普通に危ないし、気色悪い。
さらにガブリエルは、オリエント急行の進路にある橋に時限爆弾を仕掛け済。
どうにかグレースと先頭車両を切り離し、助走が止まれば列車は止まる状況を作るも、橋にどんどん芋づる式に落ちて行く列車を上に上に登るグレースとイーサン。
もう本当に落ちるかもという場面で、
ガブリエルの手下の殺し屋、パリスがガブリエルにナイフでひと突きされた身体ながら、イーサンとグレースを助ける。昨日生かしておいて良かったねと。
しかも、ガブリエルが聞き出した、潜水艦セヴァストポリの名前まで教えてくれる。
ようやく、取り戻して奪って2本組になった鍵を持って電車からイーサンはウィングXを着て飛び立ち、ベンジーと合流。ベンジーにはあっさり鍵を渡して見せてあげるあたり、信用しているんだなぁと長年の友情を感じつつ、無防備すぎない?
電車に残されたグレースは、CIAに加入依頼。
途中から、トムとグレースは必死なのだが、アメリカ内の内輪でただただ鍵を取り合いっこしていることに気が付く構成。
①エンティティ
AI。学習し意思を持ちあらゆる機密に入り込み痕跡なく悪さする。
②エンティティ強奪と世界掌握を狙う、情報長官デリンジャー→狙いとエンティティのありかをバラして、ガブリエルに殺される。冒頭のステルス潜水艦にエンティティを感染させて自爆させたのもデリンジャーのせい。
③武器商人ホワイトウィドウと護衛→鍵の片方は入手済。もう片方と合わせて、依頼主に売ってお金が入れば鍵は不要。
④グレース→スリが上手いのでホワイトウィドウに雇われて鍵を盗むことにしたが個人の泥棒。ホワイトウィドウに化けてみて、依頼主はキトリッジだと知るが、キトリッジがイーサンの上司だとはつゆ知らず。あとからキトリッジに頼み、計画通りCIA仲間入り。
⑤依頼主CIA長官キトリッジ→ホワイトウィドウから鍵を仕入れてアメリカがエンティティを握れるようにする役目。CIA内IMFの元長官で1ではイーサンを疑うバカ上司だった。賞金稼ぎに鍵の片方を持つイルサを追わせていた。
⑥CIAの2人→CIAの鍵掌握の命令に背いて鍵破壊を目指すイーサンを追い、鍵を狙う。キトリッジが鍵の取引相手とは知らずにオリエント急行内で目撃。
⑦ガブリエル・殺し屋パリス→エンティティの手下。ただ殺しを楽しむガブリエルと、ガブリエルに裏切られ殺されるパリス。
⑧後から電車に来たイーサン→ホワイトウィドウの取引相手を確かめてなんの鍵なのか聞く時間もなく、グレースから聞いた情報をもとに鍵を持つガブリエルを追うことに必死。そのあとは電車を止めることに必死。
電車にこれだけ居合わせてみんなが鍵を狙い、汽笛は死人が鳴らす、あたおか列車。
ただその中でも、権力欲求のある者と、調和を望む者に別れてくる。
現場志向のイーサンや殺し屋パリスやCIAの若者やホワイトウィドウは、鍵に欲はない。
私も鍵を欲しがる光景をアホだなーと見てしまう1人。
控えていたベンジーは主に位置情報サポートとイーサンの送り迎え。
ルーサーはエンティティの及ばない単波無線だけ持って、エンティティの痕跡が残るカメラ映像の分析のため隠匿。
オリエント急行に乗らず、鍵はルーサーに預ければ良かったのに。
次作、過去のUSBを水中であれこれする時ぶりに、また潜るのかなぁトム。ヒロインも30代40代。
すっかりおじおば向けシリーズに変化。
トム自体が60代なのに、歳はどんどん取る一方で、観客を喜ばせようとアクションを難化させていく姿勢は素晴らしいし、AIに脚本や俳優を乗っ取られるものかと生きて作品で示し続けようとする意気込みも感じられる。
だけど無理はしなくて良いし、次作でMIシリーズは終わらせて、作る側に専念していくシニアハリウッドスターも全然ありだと思う。