「進化する「トム・クルーズ映画」というジャンル」ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
進化する「トム・クルーズ映画」というジャンル
テクノロジーでどんな映像でも生み出せる時代にあって、ますます唯一無二になってゆくトム・クルーズの映画。私の中で特に近年のアクションジャンルは「トムの映画」と「アクション映画」に分かれている。ご存知のように、体の張り方が段違いだからだ。
Entity→「それ」(by戸田奈津子)。今季の阪神のスローガンかな(それは「アレ」)。直訳すれば「実在」とか「実体」「実在する概念」といった意味らしい。
それはこの物語のラスボスとも言えるが人間ではない。世界を悪い方に一変させる存在ではあるが、鍵を使うことでどうなるのかなど、核心の部分は謎のまま話が進んでゆく。
だが、美しいロケ地を背景にした密度の濃いアクションと、複雑で緊張感ある対立関係の中でEntityの鍵を奪い合うスピード感に満ちた展開が頭からしっぽまで詰まっていて、かつラストはそれなりにひと区切りつくので、物語の半分だけだからなんだか物足りない、ということには全くならない。
とにかく、こちらがトムの映画に期待し、見たいと思っているものは全て、期待以上の形で見せてくれる。この精神は、彼の出演する映画の真骨頂だ。
予告映像にもあった崖からのダイブ、黄色いチンクがルパン三世っぽくもあるカーチェイス、息を呑む列車でのアクション。街中カーチェイスと走る列車での格闘はつい最近インディジョーンズでも見たが、作品の個性の違いが出ていてどちらもいい。鉄板のシチュエーションということなのだろう。そして滅法強くて美しい女性たち、世界各国のロケ地の壮大な景観。可能な限り大きなスクリーンで見てほしい。
ベンジー、ルーサーとの友情。相変わらずかわいいベンジー。爆発物の時限装置を解除するくだりは、彼がやるとクイズミリオネアのテレフォンのようなノリが出てちょっと面白かったし、一番大切なものは友達という言葉が嬉しかった。
パート2で味方になってくれないかな?という空気を醸し出すCIAコンビもいい味を出している。
ご都合的展開、ベタ、という表現は悪い意味で使われることが多いが、昇華されたご都合展開と洗練されたベタはエンタメとしての密度の高さと高揚感を生む。
コロナの影響で撮影が延期になって公開時期が遅れていた本作、いざ公開という時に全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストの影響を受け、トムが来日出来なくなってしまった。上映前にトムと監督のグリーティング映像が流れたのは、そのことへの配慮だろうか。
ストにおける組合の主な要求のひとつが、AI規制。俳優の顔をスキャンし、生成AIで動きをつけるような使い方が広まれば、主役以外の俳優をAIがこなすようになってしまうのではと危惧しているのだ。
トムの映画とはまるで反対の製作方法だ。俳優の仕事を侵食するかもしれないAIの問題は、世界を悪しきものに変えるAI由来の存在Entityとどこか重なって見える。
俳優たちの生活を守ることは大事だ。それに、いくらCGが発達しても、実写にしか出せない迫力や説得力があるのではないだろうか。トムの映画ももちろんCGは使っているが、要所で体を張っているから、それが損なわれない。
演技で表されるイーサン・ハントの感情だけでなく、実際にアクションをするトム自身の覚悟や緊張感がスクリーンに滲むから、見ている私たちも手に汗握るのだ。
とはいえ、あまり長引くと業界自体の首を締めてしまわないかという心配もある。トムもそのことを考えて、スト中も宣伝活動を認めるようSAGに要求したそうだが、認められず来日出来なかった。
1日も早く争議がまとまって、滞りなくパート2を拝めることを心から祈っている。
追記
その後もう一度鑑賞した。1回目がドルビーシネマ、2回目はIMAXだったのだけど、IMAXフォーマットでの撮影シーンはなかったのですね。バイクジャンプのところとかはIMAXフォーマットならきっとすごかったのにと思うとこの点だけはちょっと残念。
ゴースト・プロトコルのブルジュハリファだったかな?IMAXフォーマットで撮ったことも過去にあったと記憶している。やれば出来る、パート2に期待。
ニコさん(^^)/
返信コメントを
ありがとうございました。
AI規制のストライキで
トムの来日キャンセルが残念でしたね。
>CGが発達しても、
実写にしか出せない迫力や説得力がある
その通りですよね。
(^^)/
共感ありがとうございます。
仰る様に、本作で登場するアクションシーンは、カーチェイス、列車など定番です。昔からある鉄板です。しかし、スリリングで面白いです。
定番ですが、進化しています。究めようしています。アイデアと頭を駆使して。本作が安心して鑑賞できるのは、定番に対する、そういうアプローチに溢れているからです。温故知新と言ったら良いのでしょうか。
では、また共感作で。
ー以上ー
ニコさん
共感をありがとうございました。
最新作、
楽しみにしていたので
本日、鑑賞できて嬉しかったです。
素晴らしいレビューを
ありがとうございます。
トム・クルーズさんの
身体を張ったアクションシーン
毎回 驚かされています。
今回も、崖からのハイジャンプで
スカイダイビングの訓練も
凄い回数だったそうで
映画にかける情熱が
素晴らしくて
女性陣の活躍も多かったですね。
チームを思うイーサンの決断
Part2へ続くラストも良かったです。