MEN 同じ顔の男たちのレビュー・感想・評価
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女の絶望、男の絶望
口先だけで「愛してる」と言いながら実際は服従を求める男の実相をこれでもかと描く。田舎に行ったあと現れる同じ顔の男の「これでもか」感。チクチクと言葉で刺したり、罵ったり、素っ裸がうろついたり、タンポポの綿毛(精子の暗喩)を吹き付けたり。女は拒絶し闘う姿勢を鮮明にしていくが最後は「はいはい、もうえーわ」という感じになる。女の視点からは「結局男はみな同じ(性的欲望の捌け口)」の一言に尽きる。中身おんなじなんやから顔もおんなじでえーやろ的な。美しいはずの田舎の緑も林檎が示すように再生産される絶望のメタファだ。その女の絶望を男の監督が描いたところに男の絶望がある。グロテスクに矮小化、限定化された男像は両性の未来に希望を抱かせない。エクスマキナでもそうだったがロマンはないのだ。最後に友人?の女性が迎えに行く。しかし実はこの女性も実際はどんな人間かわからない。ピラニアのような内面を持っているかもしれない。そういう暗示があり、迎えに行く車も女が乗るにしては黒色なのだ。
【なんてこったいw】プレミアムダイニングシネマで食事しながら見た…
最初は色彩豊かでお食事もすすむ素敵な映画でした。
食べ終わってからだんだん雲行きが怪しくなり
むっちゃ楽しんだ後、だんだんと冷めて
最終的に眠くなってしまいました…苦笑
考察はしません。動画が配信されたらもう一度見てみようかな…
掘り下げると面白い考察書けそうだけど、そこまでするモチベーションがわかない。
もうちょっと面白く作れるような気がしたけどな。
でも、もう一回見たい作品。
結局、やおい
何かありそうで、何もない。
同じ顔の男が迫るという内容だが、そこにほとんど触れないので内容に広がりがなくただ襲ってくるだけ。
深層心理に迫るといった観点でも、共感できるところはないのでピンとこない。
ビジュアル的なことだけやりたいんじゃないか?と思うんだけど。
想像の100倍ホラーだった
ホラーは苦手だけどグロは大丈夫、予告編的にもせいぜいミッドサマーくらいやろうしいけるやろ!と挑戦したけど私にとってはかなりホラー。
終盤は怖すぎてずっと手が堅めのグーになっていた。
美しい田舎風景とのギャップがまた恐ろしい。普通の映像だったら綺麗な描写が狂気的に見えた。千と千尋の最初のトンネルが頭によぎった。
内容はというと、暗示的な表現がもりもりだったので半分も理解できていない気がする。
4人の男は心に潜む、否定したい(殺したい)けど消せない、普段は蓋をして心の奥底に沈めている感情なんだろうなと思った。
罪悪感や絶望のドス黒い感情に覆い尽くされた後、最後に現れるのが妊婦という対比も鮮やか。何を言いたいのかはわからんがなんかすごい演出しとるぞ、ということはわかった。
2023年の1本目、こんなんで大丈夫かいな。
何が起きたんだ?
タイトルにある「同じ顔の男達」を見て、Aの人、Bの人が居るけど、実はときどき入れ替わって居て、Aしか知り得ない事をBが知っていて、小さな不信感に。
そんな小さな不信感がどんどん貯まってクライマックスには大きなトラブルに…
って感じの妄想していたけど、同じ顔の男って居たかな?
単に、自分は字幕を追うのが忙しくて、顔まではしっかり見ていないだけかもしれないけど、もしかしたら、欧米人にアジアの人の顔の見分けがつきにくい様に、自分には欧米人の顔の見分けがつかなかっただけ?
教会に有った石像?台座?が、ときどき出てくる。ならば、何か意味があるはずだけど、どういう意味?
最初は全裸の男に対して、すぐに通報しているのに、二度目は通報よりもナイフで立ち向かうのは?
古い殻を脱ぎ捨てる様に脱皮?出産?を繰り返す所は予想外で気持ち悪いけど、以前の身体に有ったダメージを引き継いでるのなら、脱皮の意味がないのでは?
そのダメージ、自殺した旦那の損傷に酷似しているのは?
自分の弱い頭では
「主人公がアルコール中毒」か「何かヤバめなお薬をキメてる」その結果、幻影を見ている
程度の理由しか出てこない。
理由を求めてはいけない映画?
「こういう原因が有ったから、この結果に至る」という映画では無い?
色んな意味で気持ち悪さが残る
夫婦喧嘩の後に夫が亡くなってしまい、“あの時、私が…”という思いが頭の片隅にずっと引っかかっている…
そんなモヤモヤした気持ちを晴らすために、田舎の家を2週間ほど借りて滞在することにしたのだが…
序盤は音や(歌)声が印象的で、怖さよりも不思議な雰囲気。あと、田舎の土地で遭遇する男性陣に妙に不快感と違和感を覚える。
主人公は立ち直ろうとしているけど、思いのほか心にダメージがあって妄想で恐怖体験をしている?…と、途中で思ったのですが、妄想ではない模様。
終盤にむかうにつれて、男性陣の気持ち悪さが増し、目を覆いたくなるようなグロテスクなシーンも…。
徐々に追い詰められていく主人公と、フラッシュバックする亡くなった夫の姿…。ここまでくると、“まだ描かれていないだけで、主人公が何か恨まれることがあったのか?(因果応報的な)”とも思ったのですが、そうでもなさそう…。
“俺は君のことを愛しているのに、君はなぜ俺から離れようとするの?”…姿形をかえて、死んだはずの夫が主人公にまとわりつく…
という、どうやら“離婚したくなかった夫の執念”が起こしたことだったようなのですが、個人的には結末がしっくりきませんでした^^;
“妄想”でもなく、“幽霊”でもない。
どちらかというと“クリーチャー”扱い?
車に追われたのも事実、玄関に血痕があって這ったような跡があったのも事実。
…じゃあ、街の男達が体内から他の男性を産み、急激な輪廻転生で最終的に亡くなった夫(生き返った)になったのは……?
オチが“夢だった”とか“幽霊の仕業だった”というのは好きではなくて、そういう内容だと思っていなかったので残念な気持ちがある一方で、“幽霊の執着が見せた妄想だった”と言われた方が納得できるな…と、思いました。
宗教的寓話に浸る
「エクス・マキナ」が大好きな自分には堪らない逸品。「ザ・ビーチ」の原作者でもあると知って「ナルホド!」がなるほどでした(なんのこっちゃ)。
やー、好きだなぁ、全てを置き去りにしてズンズン進んで行っちゃう感じ。明確な意志はあるんだろうし、考察好きさん達がアレコレ垂れ流すのに最適な映画とも言えるけれども、ただただ幻惑の淀みに身体を任せて漂うのも楽しいと思われます。
終始半笑いでございました笑
愛してれば何でも受け入れて貰えると思うな
かなり情緒不安定だった夫が目の前で自殺したことで、心を落ち着かせるために田舎の豪邸を1人で2週間借りたところ、そこで同じ顔の男たちが何人も現れキモイ目に合う話。
この同じ顔の男たちは、愛してるなら女は男のすること何でも受け入れてくれよ欺瞞、の化身だと思った。教会のシンボルが表面は男の顔、裏は自分のアソコを自ら開いた女というのが、「私はあなたのためなら喜んで"穴"を開きます」宗教に見えた。
だから、「穴」「入口」みたいなモチーフがちらほらあったのかなと。主人公は何度も扉を閉じるけど何度も入ろうとしてくる同じ顔の男たち。そもそも緑のフルチン男が現れたのは、主人公がトンネルという穴を通ったからだった。その穴を気に入った主人公に執拗に家に入ろうとする男の姿って、ちょっと優しくすると全てを受け入れてくれると勘違いする厄介男そのものだなと思った。
あと"穴"でいうと、主人公がたんぽぽのワタみたいなのを緑フルチン男に吹きかけられ、そのひとつを吸い込む描写があって、それもうレイプですやんと思った(笑)私がそっち方向に考えすぎ?w
最終的に俺の全部を見てくれ!とばかりに主人公の目の前で何度も生まれるマトリョーシカな男たちに対して、途中から呆れ、もはや見てもない主人公が良い。アンタが見てないのになんで私達が見なきゃいけないの勘弁してくれと思ったけど、その造形がキモければキモいほど、「ハイハイわかったから落ち着いて」ってあしらいたくなるね。
この映画で、キモ of the キモシーンは、牧師がリップ塗って口ねちゃーして、ベンチの隙間に指をさわさわするところだったね。
至高のコメディ
この映画に何を求めていたかによって評価、感想はバラつきそうですね。
「笑いと恐怖は紙一重」とはよく言ったもので、後半になればなるほどに笑いに耐えられなくなりました。
同行者には申し訳ないけど、何度も吹き出し、肩を震わせてしまいました。ごめんなさい。
かつての年末恒例のあの特番のような展開、おどろき。いわゆる「ネタ」。
画面の隅にワイプがあると想像するとなおさら笑いがこみあげ、脳内でツッコミを入れながらフィニッシュを迎えました。
さて、作品自体はとても好みです。
冒頭の数分間は映像美が良く、質感や空気感はまるで芸術写真集のよう。
同監督作品のエクスマキナの雰囲気が好きな人なら否定はできないでしょう。
とにかく、ホラーと捉えるかサスペンスと捉えるか、はたまたコメディと捉えるかで印象は大きく変わるため、過度な期待と想像はしないほうが得策。
極端に解釈するならば男女差別、いや、女性蔑視とも男性蔑視ともとれる考察もありえる。
「女ってこうだよな。男っていつもこうだよな」といった、そういうアイロニーを含んだ感も否めない。
誰が犯人なのか、あの正体はなんだったのか、あの現象は?あれは?これは?
そんな原因や結果を求める人にはこれは向かないかもしれない。
感じるものが全てというべきか、
いやはや今年一番の問題作を年末に投げ込んでくれました。
ありがとう。
タイトルでネタバレ許すまじ
久々にすさまじくすばらしい胸クソの映画を観れた。傑作。ただ、これは絶対にカップルで観に行ってはいけない映画だろう。
これをどう鑑賞するのかはけっこう解釈の余地があると思うのだけど、僕は、「女性の男性に対する生理的な嫌悪」の物語だと感じた。
男性に対するキモイキモイキモイキモイキモイキモイ…の叫びが聞こえてくるよう。
これを男性の監督が作った(作れた)ということが信じられないくらい。
大家、少年、牧師、警官は、各年代、各立場での「キモい男性」の振る舞いを体現したかのような人物像。
女性に対するデリカシーの無さ、傲慢さ、無礼さ、配慮の無さ、礼儀の無さ…。
特に牧師は、紳士的で諭すような態度の反面、身体に触れてきたり、無自覚に男性擁護的な価値観をもっていたり、陰湿な「キモさ」が際立っている。
そして、この映画のキーは全裸の浮浪者だと思うのだが、彼は女性がもつ男性への「性的嫌悪」の象徴であり、半分神話的な存在であるように思う。
不潔で臭くてうす汚れていて、湿っていて得体が知れなくて、何か危害を加えてきそうな怖さがあって、急に家の中に侵入してきたりする唐突さがあって…。
この映画にはたくさんの謎があって、それらの解釈は観る人にゆだねられている。人によって全然違う解釈になりそうなところが面白い。
舞台となる田舎町で出会う男たちはなぜ全員同じ顔だったのか? これは、この物語が主人公(ハーパー)の夢、もしくは白昼夢のようなものだと示唆するためではないか。
というのは、この男の顔が、僕には「夢男(THIS MAN)」としか思えなかったからだ。それに、ハーパーが男たちが同じ顔であることを疑問に思うような描写がない。
これは、ハーパーにとってはすべての男が潜在的に嫌悪の対象になっている、ということも示唆していると思う。
教会で見た、「真実の口」のような彫刻は何なのか? あの彫刻は、片面に男性、反対側に女性が彫られているように見えた。
これは「男性への嫌悪」というものが、深い部分では「男性からの性欲」を向けられることへの嫌悪、そのような性的な存在である自分自身への嫌悪、そして、「生命を産む女性性」そのものへの嫌悪に根源的につながっていることを示唆しているのではないか? これはラストにつながってくる。
「リンゴ」は何を意味しているのか? 聖書では、イブがまず禁断の果実を食べ、次にイブがアダムにも食べるように勧めたことになっている。これが人類が初めて犯した罪(原罪)であり、これ以後、すべての人類は生まれながらに罪を背負う宿命となってしまった。要するにキリスト教では、リンゴは原罪の象徴であり、原罪を背負うことになったきっかけは女性であるので、女性の方が罪深い存在である、ということになる。
この映画でも、リンゴを食べたハーパーに対して、大家は「それは泥棒ですよ」とドキっとする言葉をかけている。リンゴは、ハーパーの罪悪感の象徴として出てきているのだろう。ただし、ハーパー個人の罪というよりは、女性であることそのものへの罪(を押し付ける宗教的価値観の象徴)として…。
「切り裂かれた腕」は何を意味しているのか? 郵便受けから出された腕は男根を思わせる。要するに男性性そのものの象徴だということになる。それをハーパーは切り裂いた。これは、ハーパーが(夫の)男性のプライドを切り裂いてしまったことを意味するのだろう。
「タンポポの綿毛」は何を意味しているのか? 言うまでもなく、これは男性の精子を意味しているのだろう。綿毛の1つを口から吸いこんだハーパーがこのあと見るビジョンからも、そうだといえる。
「男性が生まれ続けるビジョン」は何だったのか? これは、「生命を産む女性性」そのものへの嫌悪と、グロテスクさを表現したものだと思う。「生命の誕生」というと神聖な讃えるべきものだという感じがするけど、反面、非常に恐ろしい、グロテスクなものでもある。
最後の謎、ハーパーの死んだ夫の言葉、「僕を愛してほしい」という言葉と、それに対するハーパーの反応は何だったのか?
結局、男性の女性に対する望みというのは「愛してほしい」というただそれだけのシンプルなものだということか? しかしそれに対してハーパーは、冷たい表情をする。「愛している」ではなく、「愛してほしい」というのは、子供が親に要求するようなことであって、結局男性が女性に望むのは、そのような幼稚な関係性なのかもしれない。
それを見抜いたハーパーは、恐怖するでもなく、憐れむでもなく、諦めとも軽蔑ともとれる反応をした。「それがあなたの本心だとしたら、そんなあなたを愛せるわけないじゃん」って。
そういえば、「エクス・マキナ」では、男性が女性を勝手に理想的な存在に見てしまうことがテーマだった気がする。この映画のテーマはそのちょうど対の関係になるんじゃないか。
ちょっと惜しいな、と思ったのが、本来ならクライマックスで一番感情のピークが来るように鑑賞できたら良かったのだけど、クライマックスの展開が僕にはファンタジーすぎて、逆に冷めてしまって、ひいて見てしまっていた。
全裸の浮浪者が窓ガラスだらけの家の周囲を歩き回ってるあたりが、リアリティがあって一番怖かった。
あと、邦画タイトル「MEN 同じ顔の男たち」、これマジ最悪。「同じ顔の男たち」ってネタばれしてるじゃん!
「あれ? もしかしてこの町の人たちって全員同じ顔じゃね?」と自分で気づきたかった。その瞬間、絶対「ぞくっ」ってなったはずなのに…。
終盤でドン引き。
このことをこうは撮らないのが映画だろ。
昭和映倫の野暮の復権を唱えたくもなる。
掴み、苦悩、不穏、演技、舞台は良いが終盤ドン引きして幕。
映画の上の句と下の句が乖離してね?
で、このオチは余韻でなく逃げだな。
尤もらしいがこれは駄目だ。
三池の牛頭の成功を想う。
きちんとネタバレしてください‼️
結局警察や村人全員がグルのお化けの街だったのか良くあるオチでは彼女が幻覚を見てただけなのか?ラストのシーンのみR指定なのか?男が男産むってどこの穴から出てきたんだ 意味不明のまま終了‼️
身勝手な男
全体を通す静謐さが時おり不安な音楽を伴って不吉な雰囲気に落ち込み、悪夢的な状況が滑り込む。イギリスの田舎の美しさ、森の美しさ、調和のとれた静謐さの中にある自然美に入り込む不協和音。この監督は音楽の使い方が絶妙だ。エンディングに向かって寓話的なストーリーがグロテスクな演出と共に主人公に無理矢理の意味を押し付ける。イカれた男の情念が怨念に変わり、彼女の悪夢につけ込む。最悪の男がこの作品で見事に生み出されている。女は諦め半分で全ての醜悪を受け止めさせられる。納得はいかないが狂った男の怨念は計り知れない。よくぞここまでの醜悪な男を描いたものだ。その点だけでも、興味深く新しさを感じる。女に全面的に甘える嫌な男の怨念ほど、厄介なものはない。
評価分かれる
おそらく男女でかなり感じとるものが違い
評価の分かれる作品なのではないかと思う。
わかる人には現実にある恐怖を同時に感じ
わからない人にはただただ猟奇的な訳のわからないホラー
ホラーな演出に気を引かれがちだが
描きたかった本質は長い間培われ育ってきた
社旗に根付くジェンダー問題かもな〜と感じた。
知らず知らずのうちに性別を理由に
相手側に失礼な態度をとってしまっていることってあると思う
そして、気づいていないからこそ長年受け継がれ再生産されるという現実
特に女性にとっては
最初から最後まであ〜あるある。となるような描写が多かったのではないかなと思う。
あまりにも、斜に構えて見るのも良くはないと思うが
なんというか……ホラー映画というよりウィットに富んだ風刺画をみたような気分になった。
個人的にはとても評価したい作品だが
派手な演出によって、本質が伝わりにくくなっていそうなのでやや低めの評価に。
鑑賞動機:アレックス・ガーランド5割、あらすじ5割。
うへえ。思っていた以上に見た目も、そして精神的にも気持ち悪い。死んだもの勝ちみたいな行動気持ち悪い。理解者の顔して息の根止めにくるの気持ち悪い。未熟を言い訳にして嫌がらせするの気持ち悪い。リンゴ気持ち悪い。終盤は何から何まで気持ち悪い。なんたる不条理。
ギャラがもったいないとかじゃないよね。一人一人別々の人間であるはずなのに、まるで同じような悪意やプレッシャーを受けるように感じる…とか?
目を、逸らさずにはいられない
冒頭、繊細な自然描写で目を引き付けながら、後半にかけては、元夫への罪悪感や子供を産めなかったことへの後悔を執拗に描く。
ただ、絶対に、二度と見たくない。
男なんて皆同じよ! と言う怒り
前半からずっとヨーロッパの童話や寓話を読んでいるような気がしていました。男は傲慢で身勝手である。暮らしの中では女を必要としているし、生理的に女を求めるが、深く尊敬はしていない……
◉美しい風景の中に現れる同じ顔
暗いトンネルの向こう側にもこちら側にも、褐色と緑色を基調にした景色が広がっていた。迷路のような道が抜けて行く森や、柔らかい風と光が溢れる草原がとても美しかった。ただ、長閑な牧歌的景観とは違う。人からは遠い所にある田園であり、館だと感じました。その中で男と女の対決が繰り広げられる。しかし、どちらも決して悪くない。
傷心を癒しに館に訪れた妻ハーパー(ジェシー・バックリー)の心にサワサワと忍び込む男たち。妻は改めて男への不信感に晒される。妻にはタンポポの綿毛が吹きかけられ、裸体の不審者は顔や身体から綿毛を生やす。綿毛はつまり、どこへでも飛んで行く「精子」ですね。
◉男を生むのは男
妻は夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)と諍いの挙句、離婚話になってしまうのだが、まさか夫が飛び降りるとは予想外の展開。更に冷静さを失わない男の代表みたいな顔をしたジェームズが、妻をグーで殴ったのには驚いた。ここから、妻の不思議の旅が始まった。と言うか、夢の旅。あるいは神に憑かれた旅。
無表情もしくは薄ら笑いを浮かべた、同じような顔の男たちに弄ばれた妻は逃げ回るが、その果てに一つの無理矢理な答えに辿り着く。男を生むのは女じゃない。ぶちのめしたい男を生み出すのは、ぶちのめされて当然の男たちだ‼︎ 執拗に出産シーンが繰り返される。
分かった、もう分かったと観る者が辟易した頃に、夫が産み落とされる。このオチは読めましたが、ジェームズの何ともしみじみした顔。だから男は何にも理解していないのよ……と言うパーパーの心の叫びが響きました。この後、妻は夫の正体を葬ることになる。
ただし、「男」へのあからさまな嫌悪を感じ取ることはできたのですが、前段階と言うべき夫婦の亀裂、男女の断絶をもう少し観る者に突きつけて欲しかったと感じました。ハーパーの女の炎がメラメラ燃えてから童話が始まれば、そこにはきっと女性の「独善」もほの見えたのではないかと思うのです。
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