劇場公開日 2022年12月9日

  • 予告編を見る

「なかなか難解」MEN 同じ顔の男たち R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0なかなか難解

2025年5月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

この作品の解説にはサスペンススリラーとあったが、ホラーに近いような気もする。
最後にジェームズが登場したので、ハーパーが体験したのは彼女自身が作り出した幻想、またはジェームズによる心霊現象だと思われるが、「すべてあなたが選択したこと」というセリフが登場するので、この物語は正気ではないハーパーが見た幻想の方がより強いように思った。
しかし、この作品に対する評価は難しい。
単にホラーとして見ていいかもしれないが、象徴や含みがとても多く、冒頭と最後の歌にも「愛」「真実」「自由」という言葉でこの作品のテーマを歌っている。
二人の不仲の理由ははっきり語られないが、結果として死んでしまったジェームズがいる。
原因は「私にはない」と突っぱねているハーパー
しかし心の奥底には苦悩と後悔と嘆きがある。
男女間の喧嘩はよくあるが、どちらかが一方的に悪いというのは少ないのだろう。
概ね女性は男性より強い権利を持っていて、被害者意識があり、特に欧米ではそれが顕著で、だからこのような作品で「そうではないよ」ということを男側が主張したかったんだと思った。
最後に二人は会話する。
ハーパーの手に握られた斧 権利などの象徴
「私に何を求めているの?」
「愛だよ」
「そっか…」
二人の間の出来事が詳細化されないのは当然で、必ず論争になってしまうから。
そして女性側の傾向としては「決着」しようとする。
完全に線を引く。
「もうこれ以上たくさん」
謝罪など聞く耳を持たないし、聴くことそのものが「負け」のように感じるのだろうか?
ジェームズの落下
それを自殺だったのか事故だったのか判断できないハーパーだったが、あの顔は事故だったように感じた。
起きた「結果」
ハーパーの傷心旅行 イギリスの片田舎にあったカントリーハウス
そして奇怪なことの数々
さて、
男たちの妊娠と出産、そしてケガまでもが複製されるように次々に現れる。
最後に現れたジェームズに「やっぱり」と思ったが、あの男たちが示しているのが「異口同音」であり、多くの男たちが女性に対して良いたいことだったように思った。
また、タイトルの「同じ顔の男たち」だが、実際にはその「顔」というのは「言いたいこと」であり、「同じ気持ちを持つ男たち」なのではないだろうか?
日本ではあまりないが、イタリアなどでは男が失恋に嘆く歌がポピュラーだ。
その要因は女性の浮気による男のポイ捨てが圧倒的に多い。
しかし女性はいつも権利を盾に被害者ぶっている。
すべての原因を男に押し付ける。
この作品はそれを言いたいのだろう。
その事をほんの少しでも感じているハーパー
その嘆きにジェームズの霊が介入したのがこのホラーかもしれない。
朝になり、友人がようやく到着した。
壊れたハーパーの車と血痕
そして階段に佇むハーパー
思わせぶりなのが、友人が妊娠していることだ。
男たちの妊娠と出産と複製された怪我は、ずっと同じことが何世代も繰り返されてきたことを象徴している。
こんな風にならずに、幸せでありたいと願う男たちの気持ちが、妊婦の彼女に託されていた。
それを歌の歌詞によって明言している。
男女の喧嘩
女性の一方的なシャットアウトに対する男性陣の言いたいことがこの作品なのだろう。
おどろおどろしさや気持ち悪さ、そして生々しさはすべて「リアルな心の傷」を表現している。
つまりそれだけ男たちは傷ついているのだろう。
男性社会が根強い日本ではあまり見かけないが、女性が圧倒的強さを持った欧米の現状がこれなのだろう。
こんな作品を作り出してしまうほど、彼らは窮地に立っているのかもしれない。
おそろしい…

R41
PR U-NEXTで本編を観る